伏見康治の発言 (予算委員会公聴会)
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○伏見公述人 ヨーロッパのいろいろな国々が、やはり歴史的にいろいろな違った状態にございまして、ただいまお尋ねの御観点から申し上げましてもいろいろさまざまでございます。
たとえばベルギーという国を見ますというと、この国は御承知のようにアフリカの植民地コンゴー地方に大へん大きなウラニウム鉱山を持っておりますので、そういう意味で、特に原子力ということでいつも思い浮べられる国でございますが、この国は戦争中ドイツに占領されておりましたような、そうして政府が国外に逃げ出しておるような状況におきまして、このベルギー領コンゴーのウラニウムをアメリカ、イギリスに売るという何か秘密条約をつくっておるわけでございます。で、そういうベルギーという国家といたしましては非常に不利な状況においてつくられましたその条約といったようなものが、その後改訂はされておりますでしょうけれども、その悪い条件というものがいまだに根を引いておりまして、今日でもイギリス、アメリカにベルギー領のコンゴーのウラニウムが非常にたくさん行っておりまして、現にアメリカの使っておりますウラニウムのほとんど七〇%というものがベルギー領コンゴーから補給されて行っているというお話でございます。しかもそのベルギーの国民というものが、ベルギーが幾らでアメリカにウラニウムを売っているのか、どういう値段で売っているのかということを知らされていないというような、非常に秘密の雲に閉ざされた協定のもとに仕事をさせられているわけであります。あのベルギーの国内にもたくさんの原子力物理学者、原子核物理学者がおるにもかかわらず、ごく最近まで原子核研究、あるいは原子力研究というものが行われなかったわけですが、ことし中に大きな原子炉をつくるということになって、今盛んに研究されている最中でございます。せっかく自国の植民地にその莫大なウラニウム資源を持っておられながら、しかもその国の科学者が原子力という問題に今まで十分手をつけることができなかったというようなことも、その占領中の不利な状況における外国のいろいろな制約といったようなものが物を言っているのではなかろうかと私には考えられます。
ところが一方、全く別な立場で、御自分の国の研究を全く自主的にやっておられる国もございます。たとえばスエーデンといったような国は、御自分の国の中にはさしたるウラニウムの豊富な鉱石を持っておられないのでありますが、しかしオイル・シエールというような油を含みました岩石の中に、ごくわずかずつ含まれているウラニウムを処理して、それを何とか自国内で非常に苦労をしながら、ウラニウム資源を開発しようと努力をされている国がございます。そしてその方の原子炉は昨年の夏動き出しているわけでございます。
こういうふうに、ウラニウム資源を持っておりましても、あるいはむしろ持たない方が適当な国でありましても、その国の置かれました国際的な環境の違いによりまして、その国の原子力研究というものの性格がまるで変ってきているわけでございます。日本も資源的には、原子力研究に関してはいろいろな弱点を持っておると思いますが、しかし私たち国民が自主的にこれをやっていくつもりであるかそうでないかというその心がけ——心がけでどうなるものとも考えませんけれども、少くとも心がけにおいて自主的なものでなければ、このベルギー的な思わしくない状況にいく。もし心がけがよければスエーデン的な望ましい方向にいくのではないかと考えております。
ところで現在言われております濃縮ウラニウムの受け入れの際に要求されているいろいろな条項というものについてのいろいろな御質問でございましたが、そういういろいろな条項というものが実際に一体どういう具体的な形をとるかということは、これは実際に当ってみなければ今日においてはあらかじめどうということを申し上げられない性格のものでございます。実際非常に工合の悪い場合には、私たち学術会議の三原則と実際ととても相いれることのできないような線が出てくるかもしれません。それからまた、場合によりましてはそういう三原則の精神とさして矛盾をしないような線で協定が結ばれるかもしれません。どっちになるかということは、結局私たちか自主的にこういうところまでは譲れる、こういうところは譲れないというはっきりした私たちの考え自身を打ち出していくところにあるのだろうと思います。その外交的なときの私たちの物の考え方の強さ、それがしっかりしているかいないか、そこに問題があるのであって、そのときに、いただくのでありますからどういう条件でものみますといったようなこじき根情を出しましたならば、私たちはひどい目にあうということだけを申し上げておきたいと思います。