吉川久衛の発言 (農林水産委員会)

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○政府委員(吉川久衛君) ただいま提案になりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明申し上げます。
 昭和二十八年四月に農林漁業金融公庫が設立されて以来二年、また農林漁業資金融通特別会計の貸付開始以来すでに四年を経過いたしておりますが、この間におきまして、農林漁業の生産力の維持増進をはかるため、農林漁業者及びその組織する団体に対し、八百七十七億円余に上る長期かつ低利の施設資金が融通されておりますことは各位の御承知の通りであります。今年度におききしては、食糧増産等重要農林漁業施策の遂行のため、従来通り土地改良等に要する施設資金の融通を行うほか、さらに従来からの要望にもかんがみまして、新に個人の用に供する農業施設資金の融通の道を開くとともに、自作農維持創設資金の貸付をも行うこととし、これらに要する資金全体として二百五十五億円の貸付を計画いたしております。なお、昭和三十年度の貸付計画二百五十五億円の資金源の内訳は、政府からの出資金九十五億円のほか、資金運用部からの借入金百五億円及び回収金五十五億円となっております。従いまして、政府の一般会計から九十五億円の出資をするため、及び農業者の個人の用に供する施設について公庫の業務の範囲を拡大する等のため、この法律案を提出いたした次第であります。なお、自作農維持創設資金につきましては、別に提出いたしております自作農維持創設資金融通法案に基き、公庫が貸付を行うことといたしております。
 次に、本法律案の内容の概略を御説明申し上げます。まず、農林漁業金融公庫の資本金を政府から九十五億円出資することにより、現在四百五十六億七百万円となっておりますのを五百五十一億七百万円に増額するため公庫法第四条の資本金に関する規定を改正いたすものであります。
 次に、農林漁業者の共同利用に供する施設以外の個人の用に供する施設に対しましても、公庫の貸付業務の対象に加え、資金の貸付を行い得るようにするため公庫法第十八条第一項第八号の規定を改正し、公庫の業務の範囲を拡大するとともに、これに呼応して別表の貸付条件等の規定にも改正を加えようとするものであります。なお別表の貸付条件の改正がありましても、災害のつど、必要に応じ主務大臣が指定しておりましたいわゆる主務大臣指定災害復旧資金につきましては、今後とも従来と同様の指定手続により、同様の条件で貸付を行う考えであります。
 第三点は、残存する日本開発銀行の農林漁業金融公庫に対する貸付金を返済し、これに相当する金額を産業投資特別会計から同公庫に対し出資があったこととするため、すなわち借入金を出資金に振りかえるため第三十二条に必要な規定を加えるものであります。なお、この返済されることとなる金額は約二十一億円でありまして、この金額は日本開発銀行が後輿金融金庫から承継した農林漁業者に対する貸付にかかわる債権及び同銀行がみずから行なった農林漁業者に対する貸付にかかわる債権で、すでに同銀行から公庫に承継されているものに見合うものであります。
 以上がこの法律案の提案理由並びにその内容の概略であります。何とぞ慎重御事議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 次に、自作農維持創設資金融通法案の提案理由を御説明申し上げます。
 御承知の通り、農地改革の結果といたしまして、二百万町歩をこえる小作地が自作地となり、四百二十万戸をこえる農家がその売り渡しを受け、自作農として農業に精進することになったのであります。この農地改革の成果の維持につきましては、現在農地法がその法制的部面を担当しているわけでありますが、自作地を維持するため必要な資金の融通措置についての制度はいまだ十分確立されるには至っておりません。これがため、すでに政府は昭和二十六年度から自作農創設特別措置特別会計の余裕金の運用によりまして、農地または採草放牧地の買収売り渡しの形式により、とりあえず農民の窮境を救う一助として参りましたが、とうてい農家の資金需要を満たすには至らなかったのであります。
 近年、農村における資金難から自然災害はもちろん、疾病その他の個人的災害、相続等による臨時支出をまかなうために農地または採草放牧地を売却するのやむなきに至る自作農が逐年増加しており、特に経済的に弱い農家は、転落の危険にさらされているのであります。従いまして、この際新たに農業経営の安定、農家の転落の防止のための措置を制度的に確立することは刻下の急務と考えられるのであります。よって政府は、農地及び採草放牧地が農業経営の基盤であり、かつ、農業者がこれらを所有することがその農業経営の安定をはかるための要件であることにかんがみまして、農林漁業金融公庫がその取得、維持または細分化防止のために必要な資金を長期かつ低利で貸し付けることにより、農家の経営の安定をはかることとし、このための立法措置を講ずることといたしたわけであります。
 この法律案のおもな内容について御説明申し上げますと、第一に貸付金といたしまして、農業経営を安定させるため農地または採草放牧地を取得するのに必要な資金、小作農が小作地または小作採草放牧地を取得するのに必要な資金、農地または採草放牧地の相続による細分化を防止するのに必要な資金、疾病、負傷、災害等のため自作地または自作採草放牧地を維持することが困難な場合に、これらの土地を維持するのに必要な資金の四種類について貸付を行うことといたしました。
 第二に、貸付条件につきましては、この資金の性格上、さきに申し上げましたように長期低利とし、年利五分五厘、償還期間は十五年以内といたしました。
 第三に、貸付を受けようとする者の適否の認定を都道府県知事が行い、その認定を受ける場合には、農業経営安定計画を作成せしめることといたしました。都道府県の指導及び援助のもとにこの計画を確実に実施することによってその経営を安定せしめ、みずから償還財源を確保し得るようにし、もって本制度の目的の達成をはかることといたしたいのであります。なお、この法律案の施行に伴い、この法律案に規定する業務を公庫の業務に加えることにいたし、これに伴い、農林漁業金融公庫法につきまして必要な改正を附則で行うことといたしました。
 以上が、この法律案のおもな内容でございますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
 次に、ただいま上提されました繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 繭糸価格安定法は、生糸の輸出増進と蚕糸業の経営安定とを目的として、最高価格による生糸の売り渡しと最低価格による生糸の買い入れによって、生糸の価格を安定帯の中に維持することを建前としているのでありますが、本法施行以後の経緯にかんがみますと、出発当初におきまして、政府の手持ち生糸なしに同法を実施いたすこととなりましたために、二十七、八両生糸年度におきましては、最高価格をはるかに突破するような異常な事態が生じたのであります。これでは本来の目的である生糸の輸出振興と蚕糸業の経営の安定をはかることは困難であります。よって、このような事態に対処して輸出生糸について有効な価格安定を実施し、もって輸出増進に資することができますように、政府において輸出適格生糸を保有し得る道を新たに開くことが第一のねらいであります。また、現行法では、生糸の価格を安定帯の範囲内に維持することによって原料繭の価格も自然に安定させることができるという考え方をとっておるのでありまして、春蚕農民の経営安定に直接関係のある繭価につきましては、ただ政府が繭価低落防止のための必要な措置を行うものとするというきわめて抽象的な規定を置いているのみであります。この規定では、政府がいかなるときに、いかなる方法で繭価維持の措置を行うかということは不明確であります。よって、この現行法の不備を補って、繭価維持についての明確な規定を置き、これに基く措置によって、養蚕農家が安んじて生産にいそしむことができるようにすることが第二のねらいであります。
 以下、法案の主要内容について、その概略を御説明申し上げます。第一は、政府は最高価格によって売り渡す生糸として輸出適格生糸を保有する必要のある場合は、最低価格を超える価格で買い入れることができるようにしたことであります。もちろんその場合でも糸価に悪影響を及ぼさない方法によって買い入れることが必要でありますので、その買入方法としては、あらかじめ農林大臣の指定する者が農林大臣の定める条件に従って保管した輸出適格生糸のうち、一定期間を経過してなお保管しているものについて、政府が買い入れる契約を結ぶことができることとした次第であります。この方法による買い入れは、当然輸出確保のための必要保有数量に限定すべきものでありますから、この方法によって買い入れ得る生糸の数量は、政令をもって限定いたしますとともに、すでに政府が最低価格で買い入れた生糸、あるいは繭価維持の結果買い上げた繭から作った生糸等の保有量と合せ、最高価格を維持するに必要な数量を限度として、この特別買入を行うこととしております。
 第二は、政府手持生糸の数量が、生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量を超えるような場合におきましては、その超過数量につきまして、最高価格でなくても時価によって売り渡すことができることとしたことであります。この場合、この売り渡しによって糸価を不当に圧迫することを避けねばならぬことはもちろんでありますので、この売り渡しは生糸の市場価格がその生産費を超えている場合においてのみ行い得ることといたしますとともに、その売り渡しは時価に悪影響を及ぼさない方法によるべきこととしております。
 第三は、繭価維持のための具体的な措置を定めたことであります。繭の価格が、生糸の最低価格に見合う価格、すなわち最低繭価以下に下がるようなおそれのある場合におきましては、農林大臣の指定する農業協同組合連合会が、あらかじめ農林大臣の承認をうけて繭の出廻わり調節による最低繭価維持のために自主的に保管をしたときは、保管に要する経費について、糸価安定特別会計から補助金を交付することができるものとしたのであります。このような措置によりまして、繭価は維持されると考えられるのでありますが、その保管した繭を一定期間中には最低繭価以上の価格で売り渡すことができない場合も考え得られますので、そのような場合には、さらに政府がその保管繭を買い入れることができることといたしまして、繭価維持の万全を期したのであります。
 第四は、政府保有繭の売渡、加工、生糸との交換の規定を設けたことであります。政府が買い上げた繭につきましては、その性質上、長期の保管には耐えないのでありまして、またそれを一時に売り渡すことにより、繭の時価に悪影響を及ぼすことを避けねばなりませんので、生糸に加工して保有する方法、または生糸との交換を考えている次第であります。
 第五は、政府が生糸の買い入れ契約、繭の買い入れ契約、補助金の交付契約をする場合におきまして、その金額に限度を設けたことであります。
 これによって、政府が契約することのできる額の総計は、糸価安定特別会計における収納済歳入額と借入金の限度の総計を超えてはならないことといたしております。
 以上申し上げましたような法律改正ができ、これによる措置が実施できますれば、生糸の輸出確保と蚕糸業の経営安定のために多大の効果があると考える次第であります。
 以上がこの法案提出の理由並びに内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されますようお願いする次第であります。

発言情報

speech_id: 102215007X01119550526_002

発言者: 吉川久衛

speaker_id: 27075

日付: 1955-05-26

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会