加賀田進の発言 (地方行政委員会)

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○加賀田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする地方自治法の一部を改正する法律案に対して、自民党の修正案に賛成をいたしまして、修正部分を除きまする政府原案、並びに本法に伴っての関係法律の整理に関する法律案に対して、反対の討論を行わんとするものであります。
 この法律は今次国会で初めて提出された法案ではございません。いわゆる政府が一貫して地方自治法の改正をねらい、しかもこの改正に基いて中央集権への道を、何とか切り開きたいという野望の上に立っての三回目の提案でございます。しかし最初一昨年の十九国会におきましては、御存じのように、警察法の改正のあおりを食って、とうとう廃案となってしまいました。昨年の二十二国会におきましても、地方財政再建特別措置法案のあおりを食って、しかもそのときには地方団体の議会側はもとより、理事者側も、執行機関も、こぞってこの法案に対しての反対を行いました国民的な反撃の背景の中で、この法案がとうとう廃案といううき目を見たわけであります。
 このたび出して参りましたこの地方自治法の改正は、昨年よりも少し緩和されておるとは思いますけれども、政府の一貫してねらっているその中央集権への道を切り開こうとするねらいに対しましては、やはり依然として同じ態度をとっておるというところに、われわれとしては軽視できない問題があると思うのであります。しかも地方自治体に対しこの行政面その他に対する圧迫と議会に対する運動への圧力というものは、一貫してこの法案の中に流れております。
 まず第一に、今度の改正の中では、内閣総理大臣が地方公共団体の事務の処理その他経費の不当な支出等の理由のもとにいろいろな必要な措置を講ずることを命令するという規定が出されております。現在の法律でも、国の委譲事務につきましては、不正行為があればこれを救済するという処置が規定してあるにもかかわらず、あらためてこういう法律を設けますと、国の委譲事務ではなくして、地方公共団体が自主的に独自の権限に基いて行ういろいろの執行面に対して、総理大臣みずからが魔の手を伸ばすというような危険性がこの中にあるわけでございます。委員会の質疑の中で、政府は特に顕著なものに対してのみこれを発動するといっておりますけれども、従来の政府の自治体に対するやり方を見ておりますると、私たちは安心してこれをまかし得ないと思うのであります。もしこの法律の内容を悪用いたしまして、一々地方公共団体に対して内閣総理大臣の手を通じて中央の政治権力が地方自治体に入ったとするならば、地方自治体の自主性というものは一体どこに行ったか、全く私はなくなると思うのであります。しかもそうした規定の上に立って、今度は内閣総理大臣が直接地方公共団体にこうした処置を命令できない場合、あるいはしょうとしない場合には、都道府県の知事を通じて市町村にこういう魔の手を伸ばそうといたしております。これは本法が提出せられましてから市町村議会側も、あるいは執行機関も、これらに対して知事の権能を拡大強化することは、知事官選のおそれがあるから反対だと強い陳情のあったことも、御存じの通りであります。われわれといたしましても、そういうことは単なる臆測ではなくて、従来政府が知事官選の道を切り開こうとするねらいがあるのではないか、こういうことについて危惧をせざるを得ないのであります。なお執行面におきまする部局の制限につきましても、現在の法律におきましては単なる基準を設けまして、あとは条例に基いてこれを制定するという全くの自主性を持っているわけであります。御存じのように、都におきましては十局、道におきましては九部、その他三段階に分けまして各部局を設けることになっております。しかし今度はこういう部局を改めて増加する場合には、内閣総理大臣と協議をせなくてはこれを設けることはできない。現在でも住民の要望や政府の委任事務の煩瑣のために、どうしてもこの基準以外に部局を設けなくてはならないので、全国で約百以上の部局を制定いたしておるのでありますけれども、これをこの法律の中で規制をいたして参りまして、もし増加する場合には内閣総理大臣に協議をしなければならない、協議とは双方の意見の一致を見なければこれが実施できないということであります。そういたしますと、実際の現実に基いて部局を増加いたしたいと思いましても、内閣総理大臣がこれを拒否いたしますと、そういうことができないというような、全く政府の支配権がそういう執行面の機構の中にまで入ってくるというおそれがあるのであります。しかもこの法案が通りますと、三ヵ月以内にこの法に基いて部局の整理を行わなくてはならないという規定があります。現在地方公共団体は、赤字を解消するために、財政再建のために、みずから自主的にこの部局の整理に努力をいたしていることは御存じの通りでありますけれども、この部局の整理を最も阻害しておる力は何であるか。それは地方公共団体の内部にあるのではなくしてこの部局を減少いたそうとするのに対して、圧力をかけるのは政府であります、政府と地方団体との直接不可分の関係にある各省の高級官僚であります。もしそういうようなことなら、内閣総理大臣と協議をしなければ部局の増加を認めないというような政府の支配の規定を設ける前に、政府内部におけるいわゆる獅子身中の虫に対して、みずからが断を下すことが私は正しいと思うのです。そうでなくては、私は単なる権力に基いて、地方自治体の現状を無視するような部局の整理というものはなすべきではないと信じております。
 なお、地方議会におきましても、あらゆる面で制約を受けております。たとえば議案の提出権におきましても、修正動議の提出権におきましても、議員総数の八分の一の賛成がなければこれを提出することはできない。現在の議員の数は、多いところで百二十名、少いもので十六名の議員を有しております。こういう大きな幅のある議員数に、単に八分の一という一つの定数を設けて議案提出権あるいは審議権を実質的に奪うということは、地方住民の代表である議員の審議権を抹殺するものだと思うのです。特にこういうように八分の一ということを規定いたしますと、地方議会における少数派の実質的な審議権を抹殺するというおそれがあって、ほんとうの民主議会の運営というものは困難になってくるのじゃないかと思うのです。
 なお問題になって参りますのは、今度の修正案の中でも、与党の方で相当論議が重ねられたと聞いておりますけれども、いわゆる常任委員会の制定の問題であります。常任委員会に対しましては、各人口一割りにおきまして都道府県市町村に常任委員会の数を規定しております。こういうことになりますと、その行政の大きさ、範囲におきましてこの常任委員会というものを決定しなければならないにもかかわらず、単なる人口割りのみに基いてこの問題が制限されて参ります。本委員会においてもいろいろ論議されて参りましたが、一例を申し上げますと京都府の問題があります。京都府は百九十万の人口を有して、この部が六部しかできません。同じ京都府におきます京都市におきましては、人口百十万で、百万をこしますとこの部局が八部できます。こういうようにして、広域にわたる事務を処理しなければならない府が六部であって、その地域の中に含まれている市が八部で運営をするという矛盾がこの中に起っております。こういう問題をるる申していきますと、地方議会における権限というものは、従来より以上に抹殺されるということは、火を見るよりも明らかだと思うのであります。このように、この法案の政府のねらいは、当初申し上げました通り地方自治体の育成発展ではなくして、地方自治体に対する政府の中央集権の道が、この法律改正の中に現われているということに対して、社会党としてはどうしても承服することができないのであります。
 なお最後に、私は大都市制度に対する十六項目に対して一言触れておきたいと思います。これは今の質疑の中で申し上げた通り、昨年の二十二国会においてすでに提出されました。しかしこのことは、政府として将来の市町村の育成発展の基礎的な計画の上に立って出されていないというところに、問題があるのじゃないかと私たちは思います。いわゆる政府のいつも言う政治折衝によって、政治的な考慮のもとにこの事務委譲というものが出されてきたということなんです。御存じのように、警察法の改正に基いて市町村警察が府県に委譲されましたが、その経過措置として、五大市におきましては、昨年の三月三十一日まで存続することを認めてきたわけです。いわゆる昨年の四月一日以降五大市の市警も府県に委譲しなければならぬという現状の中で、当時五大市は、せめても自治体警察として五大市だけは認めてもらいたいという強い運動をいたしましたが、そのときに政府としては、そういう圧力の中で調整が困難なために、五大市の警察は府県に渡すが、しかし何とか十六項目の事務を委譲するということをやったわけであります。そういう過程で昨年の改正においても五大市は猛烈な運動をいたしましたが、政府といたしましては幸か不幸かこれが流れました。引き続いて今次の国会において同じような法案が出ましたが、こういう法案の中で、警察制度は府県に委譲されましたが、おさまらないのは府県側です。府県側は御存じのように太田長官に再三この十六項目委譲に対しての反対の陳情があった。そこで政府としては、十六項目を五大市に渡すことが将来の市町村の発展強化の基礎の計画の上に立って出されたのではなくして、これもまた政治折衝として一を与え一を奪いとっていくというやり方をやったわけであります。だから逆に五大市に対しましては、十六項目の事務は委譲するけれども、従来しばしば問題になっておりました特別市制問題は全部抹殺するという形をとってしまったではありませんか。今も質問の中に明らかになったように、政治折衝によって十六項目が委譲されたために、十六項目の内容の中で、どの点を五大市に委譲するのか、どの点を残すのか、全部委譲するのか、さっぱり今でも自治庁としては明確にされないじゃないか。審議されて二ヵ月間、その資料を要求したにもかかわらず、今なお各省の話し合いがつかないから——各省の話し合いがつかないような法案をなぜ出したか、そんな権威のない出し方をわれわれとしては承服することはできないのです。
 最後に私は、今北山委員も申された通り、この審議過程の問題に対して、本委員会は非常に悪例を残したということです。この法案は三月十五日に提出されまして、三月二十二日に提案理由の説明があったわけです。それから約一ヵ月問われわれは審議をいたして参りまして、四月の二十七日、全会一致で質疑が打ち切られました。質疑が打ち切られましたときには、与党の諸君も喜んで、肩をたたいて、どうもありがといございましたとわれわれに言った。ところが数刻を出ずして修正案を出したいから、二、三日時間的な猶予をくれ、われわれは良心的に四、五日の時間の猶予を与えました。ところが現在まで十八日間もそれが出てこなかった。聞くところによりますと、二十七日にはどうもいろいろ審議が進行いたしまして、本日質疑が打ち切られるのではないか、質疑が打ち切られたら困るから、打ち切られないように、注意をしてもらいたいと、太田長官は理事に要請をした。早川政務次官は質疑の打ち切りがなされたと聞いたら、とたんに顔面蒼白となって、同僚に暴言をはいたとわれわれは聞いております。一体政府の責任で出された法案で、その法律を通過さす責任を持つ太田長官と早川政務次官並びに与党諸君が、法律審議を引き延ばすような政策は、国会史上かって見ない珍事態だと思うのです。今後われわれも与党のこの戦略を模範といたしまして、質疑打ち切りせられた法案に対しても、さらに修正案を提出するから、時間的な余裕を要求いたしたいと思うのです。
 最後に、与党諸君が出された修正案に対しましては、十八日間の審議ではあまりに少い修正案でございますけれども、この点半歩前進したものと私たちは認めまして賛成をいたしたいのであります。
 以上、社会党を代表いたしましての討論を終ります。(拍手)

発言情報

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発言者: 加賀田進

speaker_id: 20805

日付: 1956-05-15

院: 衆議院

会議名: 地方行政委員会