田中省吾の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(田中省吾君) 私、横浜市の助役の田中省吾でございます。横浜市の根岸湾埋立問題につきましては、先般来当委員会の皆様にも、非常な御迷惑、御配慮をわずらわしておりまして、まことに恐縮に存じております。この点厚くおわびを申し上げる次第であります。
ごく簡単に、根岸湾埋め立ての沿革とでも申すことを申し上げたいと存じますが、根岸湾埋め立てという問題は、実は古い問題でございまして、さかのぼりますと、明治四十四年の横浜市の市会におき失して、根岸湾埋め立ての議決をいたしまして、その一部は、昭和五年の八月に、約三万坪の埋め立てを実行いたしたのでございます。これはもうほんの少しでございます。それからさらに昭和二十六年に、二万九千坪余りの埋め立てを完成したような沿革もあるのでございます。
そういう古いことはさておきまして、それ以来、歴代の市の当局は、何とかこの根岸湾の埋め立てを実行いたしまして、工場地帯を造成いたしたいという念願を持ち続けておったのでございます。御承知のように、横浜には、神奈川、鶴見地区の大きな埋立地がございまして、そこは現在横浜市における大工場地帯を形成いたしておりますし、これはまあ日本全体から見ましても、大きな工場生産の基地になっておるというようなわけでございまして、横浜市といたしましては、さらに根岸湾の埋め立てを実行いたしまして、ここに第二の横浜港湾というものを作りたいという念願をもって、引き続いてずっと研究をいたしておりました。
それから最近になりましては、昭和十六年にやはり埋立計画を立てまして、市会の議決を経て、九十七万坪の埋め立てを計画いたしました。その当時、地元の漁業組合に埋め立ての同意を求めまして、そうして漁業組合に対しても十分の了解を求めて、覚書の交換もいたしました。漁業権については、漁業組合は漁業権を放棄する補償として、埋立面積の六十六万九千坪余りに対して、七万二千百九十一円支払うものとする、それから海面浚渫に対する慰謝料として五万円を支払うというような覚書を交換いたしまして、この六十六万九千坪余のうちで、まず五万坪を埋め立てするということになりまして、その五万坪の補償といたしまして六万五千百五十円、慰謝料として二万円、合せて八万五千百五十円の支払いを了しまして、その埋め立てにかかったのでございます。これがまあ漁業組合の方に、よく納得をして、了承を得て行いましたのでありまして、その後その五万坪のうちの約半分は竣工を見ておるのでございます。
そういうような沿革をたどっておるのでありますが、最近になりまして、何とか本格的な、五万坪や六万坪じゃなしに、何十万坪という大きな埋め立てをやりたいという希望で、いろいろ研究をいたしておりましたが、何しろ埋め立てには大きな金がかかりますし、その金策もなかなかむずかしい。かりにそれができましても、工場を誘致しても、工場が来てくれるかどうかという問題もありますし、最も大きな問題としては、漁業組合との了解がつかなければ、これはうまくいきませんので、そこでまだ実行をするという決心に立ち至らずに、まあ研究の程度で推移して参ったのでございます。
そういう沿革でございますが、実は昨年の初めになりまして、根岸線延長の問題というものが起って参りました。これはこれまた古い問題でございまして、国有鉄道が桜木町でとまっておりますのを、桜木町から延長してもらって、横浜市を貫通して北鎌倉駅に接続するという問題が、これは昭和十二年、鉄道建設法に根岸線の延長ということで載っておるわけでございまして、この鉄道の延長は、当時一部土地の買収もして、まさに着工しようという段階にまで立ち至ったのでありますけれども、戦争が起りましたために、中止になってしまっておるという問題が一つ、これは別の問題としてございます。
ところが、横浜市としては、やはりこれを実行いたしてもらいたいということを多年の念願としておったのでございます。しかるところ、昨年の初めになりまして、どうも桜木町から鉄道を延ばして北鎌倉に継ぐというのではおもしろくない、延長するならば大船駅にこれを接続するのがよろしいというようなことで、俗にこれが桜大線、桜木町の桜と、大船の大をとりまして、桜大線という名前でこれが問題になって参りました。正確の法律上の名前はやはり根岸線でございます。そこで昨年の二月に、鉄道建設審議会におきまして、根岸線の延長について、調査すべき線ということにお取りきめ願いまして、横浜市としては非常に喜んでおる次第でございます。
そこで、だんだん鉄道当局において御調査をなされ、市の当局としても、その御調査に対して全面的な御協力を申し上げて、今回に至っておるのでございますが、その初めのうちには、この根岸線、すなわち桜大線というものは、東海道線の現在の交通を緩和するということが非常に大きな理由になっておりまして、根岸湾の埋め立てということは、これはあればまことにけっこうだ、しかしまあその重みはむしろ東海道線の交通緩和ということにあるというような考え方であったのでございます。しかるに、漸次研究をして参りますと、この桜大線をやりましても、なかなか東海道線の交通緩和には、役立つには役立つけれども、十分でないということになりまして、東海道線の交通緩和にはまた別途の方法を講じなければならぬというような模様にだんだん変って参りました。
そこで私どもは、それはもう鉄道専門家の御研究に待つということにいたしまして、いずれにいたしましても、桜大線が敷かれるということになれば、根岸湾の埋めめ立てということも、これと並んで実行をいたしまして、ここに大工場地帯を作りまして、横浜港の第二港湾というようなものを作りたい。そうしてこれは横浜にとりましては非常にもう市の性格を変えるほどの大問題でございまして、御承知のように、横浜は戦災をこうむりました上に、その心臓部と申すべき部分を接収をいたされて、復興が非常におくれております。これを神戸、大阪、名古屋等に比べますれば、遺憾ながら非常に復興がおくれておりますので、この桜大線を敷設していただいて、そうして根岸湾を埋め立てて、横浜の性格を変更するような大事業をやっていただいて、そうして復興のおくれを取りもどしたい。これが横浜市の百年の大計として最も根本的な重要施策であり、これがまた日本の国の再建、復興に役立つものであるという信念を持ちまして、それに熱心にまあ研究をいたしておったわけでございます。
ところが、初めのうちはあくまでも研究をいたしておるというような状態でございました。そこへもって参りまして、昨年の八月、地元の鼻風浦の漁業組合で、この地元約二千坪を埋め立てたい、漁業組合の用に供するために二千坪を埋め立てたいという出願が出て参りまして、市長に対してその同意を求めるということになりました。これは法律的に申しますと、免許は知事に免許が申請されまして、知事から横浜市会にその意見を問われたわけでございまして、市会といたしましても、よく研究をいたしました結果、これに同意をしようということで同意を与えましたが、その際、漁業組合とよく懇談をいたしまして、一つの覚書を交換いたしたのでございます。
その覚書の内容駅で詳しく申し上げませんけれども、要するに、市はこの覚書に、漁業組合の二千坪の埋め立てに同意する、しかし、将来市が大きな埋立計画をやる場合に、これが支障になっては困るというので、その土地については、漁業組合において、市の方からかえ地を上げるとか、あるいはこれを市に売ってもらうとかということにしてもらいたい、というのは、将来本埋立地を市が必要とする場合は、組合はこの埋立地を適正な価格で市に譲渡するか、または適当な市有地と交換することに同意するといったような覚書を交換して、二千坪の埋め立てに同意をいたしました。そこは文言には現われておりませんけれども、まあ大きな埋め立てをするときには、漁業組合も同意してもらいたいという含めは十分あるつもりで、市の方はおったのでございます。
それからそのときにまだ、この根岸湾の埋め立てを本格的に実行するという決心は、市にはついておりませんでした。ついておりませんでしたけれども、決心をつけるためにいろいろな調査をいたさなければなりませんので、その調査をすることについて、まあ同意してもらいたいというお話もいたしたのでございまして、市の方としては、漁業組合の同意を得て、水面に入って、深さをはかってみたり、あるいはボーリングをやってみたりするということを、その後やりましたわけでございます。その後わかりましたところによりますと、どうも漁業組合においては、そういう漁場に入って深浅をはかったり、ボーリングをするということについて、完全な了解を与えていないのだということを、漁業組合の方で申しますので、そこにまあ一つの食い違いが実は起ったのでありまして、まことに残念でもあり、恐縮にも存じておるところでございます。市の方では決して強引にそういう調査をしたわけではないつもりであるのでございまして、まことに遺憾に思っておるところでございます。
そういう推移をたどりまして、昨年の十一月の初めに、国鉄当局の方から、だんだん調査研究の結果根岸線を延長……。ええ、もうすぐしまいにいたしますが、根岸線を延長するためには、やはりこの埋め立ということが非常に、絶対というほど必要であるというような意味で横浜市は本腰を入れてこの埋め立てをやるのかどうかというお問い合せがございまして、そこで市といたしましては、ほんとうに決心をいたしまして、これはすぐやらねばならぬという決心をいたしまして、市会の全員協議会にも諮りまして、御同意を得て、全会一致、政党政派を超越した御同意を得て、国鉄当局に、これはいたしますという回答をいたしました。
それから今年の一月十日には、市の内部に、埋立事業局という一つの新しい局を作りまして、そして自治庁等にもお願いをし、起債を認めてもらうという運動をして、これを実行するという段階になってたのでございます。そのためには、どうしても漁業組合に御同意を求めなければなりませんので、しばしば御同意を求めるために、地元の県市会議員、その他各種の方に御協力を得て、同意を求めるための努力をいたして参りました。そこで昨年の十二月二十八日と、本年の一月二十八日と、それから一昨日——日曜でございますが、三回にわたって漁業組合と折衝をいたして参りました。第二回目は地元の漁業組合は出席していただけませんでしたが、一昨日は皆さんおいでを願って、そこでお話し合いをいたしまして、それでは協議会を作って折衝をしようという段階にまで、おかげさまで到達いたしましたので、私どもの方としてはぜひともこの埋め立てはいたしたいという決心をいたしておりますし、そのためには漁業組合の同意をどうしても得なけりゃならぬ、最善の努力を尽しまして同意を得るつもりでございます。そうしてそれは漁業組合の方にとっては生活権の根本に触れる問題でございまして、非常に重大な問題でございますので私どもは漁業者の方々の身になってその補償等については最善の方途を講じたいというつもりでおるのでございます。
以上概要を申し述べまして、いろいろ行き違いもございましてまことに恐縮でございますが、そういう点についておわびを申し上げますと同時に、将来は責任をもって漁業組合と話し合いをつけて、漁民の生活については保障をいたしたい、こういうつもりでおりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げる次第であります。