大須賀金太郎の発言 (農林水産委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(大須賀金太郎君) お許しをお願いいたします。
 横浜市屏風浦の漁場埋め立ての件に関し、地元漁民を代表しまして、以下率直に意見並びに問題点の概要を申し上げます。
 まず、私ども地元漁民は終始一貫して本埋立を実施に絶対反対であることを申し上げます。
 その理由は、申すまでもなく、われわれ漁民の生活権擁護のためであります。現漁場は屏風浦、根岸湾、本牧の地元三組合のほか、関係五組合が入漁しており、一千五百六十五世帯の漁家が本漁場により生活しているのであります。
 この漁場に操業いたします業種は、ノリ養殖業を主体として、貝類養殖、ます網、打たせ網、延べなわ、一本釣り、潜水器等多種類に上り、東京湾西海区における沿岸漁場の中心漁場となっております。しかして本漁場における水揚総額は現在七億円をこしておりますが、さらに近年における浅海増殖技術の画期的進歩に伴い、近い将来においては十億円の水揚げも十分予想し得る全国屈指の優良漁場であります。また本漁場は、その生産高のみならず、製品の品質の優秀性においても、古くより内外の業界によく知られているところであります。
 なお、特にここで申し上げたいことは、漁業生産の特質についてであります。すなわち、委員各位にはすでに十分御承知の通り、稚魚、稚貝はすべて沿岸の磯より発生いたします。私ども漁業者が日でろ磯々と申して大切に考えるのはそのためであります。従いまして、たとえ沿岸をわずかでも埋め立てされましたならば、この稚魚、稚貝の発生が根絶し、ために沿岸一般の各種漁業が壊滅するのであります。
 以上本漁場の実情についてその概要を申し上げたのでありますが、結論として、本漁場の埋め立てが寸土といえども行われた場合は、優良漁場は壊滅して沿岸各種漁業が永久に根絶するのであります。また地元三千人の漁業者はその生活を根底から抹殺され、さらに入漁関係五千人の漁業者の生活にも死活に関する重大なる影響を及ぼすことになるのであります。
 そこで、今かりに他の方法による生活権の確立を考えるとします。まず、今後もし私ども漁業者が未知でありしかも無経験である職業に転業いたしたとしても、とうてい長続きするとは考えられません。また生活を維持する収入においても、現在の収入もしくはそれに近い収入を得ることは不可能と断じ得るのであります。このことは、私どもは戦時中、徴用等による苦い経験をなめておるのでございますので、はっきりと申し上げ得るのであります。特に比較的漁業者には年長者が多いのでございまして、なかなか転業の道とてございません。祖父より受け継いで年少のころより就業し、さらに子孫代々にまでも残し得るこの安定した現職業を考えますときに、何人といえども私どもの生活権の代かえが絶対に不可能であることを御承知願えると信じます。従いまして、一般に考えられる一時的な補償のごときは、とうてい問題にはならないのでございます。
 もとより私ども漁業者にとりまして、永年の漁場を失う悲しみと申しますか、万感胸に迫り、断ち切れざる哀愁は、よろしく御推察願えると存じます。しかしながら、私どもが断固として全員一致して埋め立てに絶対反対するその根底は、さような感傷的なものではありません。以上申し上げました通り、私どもは本埋め立て実施によって、将来あるこの優良漁場と、沿岸各種漁業の根絶を憂うるからであります。さらに私どもの生活権の確立、擁護を深刻に考えた上でありまして、しかも現在その代かえが絶対不可能であるとの観点に立って申しているのであります。この点は、私どもの意のあるところを十分御推察願いたいと思います。
 第二に、この屏風浦一帯の沿岸地域は、横浜市有数の景勝の地であります。また住宅、観光地区としてはむろん、市民の健康を維持する衛生地帯としても、横浜市としてはなくてはならない所であります。この点はすでに広く内外によく知られております。従いまして、本埋め立ての、実施につきましては、漁業者のみならず、地元市民においても反対しておるわけであります。
 時間の関係上大要にとどめますが、要するに、私ども漁業者としても、工業地帯造成の必要性は一応了解できるのでありますが、前述の通り、一体善良なる市民であるわれわれの絶対に代かえのない、しかも安定した性活権までも犠牲にして、埋め立てを実施する必要があるのかどうか。また、二度とかえがたい優秀なる漁場と沿岸漁業を永久に壊滅してまで、実施する必要があるかどうか、さらに、古来からの風教、景勝の地を永久に喪失してまで、実施する価値があるかどうか。むしろ他の陸上地区に求めた方が合理的ではないのか。こうした点を強く横浜市当局に再検討願いたいと思います。またそうした再検討による工業地帯造成の可能性をかたく信ずるものであります。
 次に申し上げたいのは、今日の事態を招いた横浜市当局の本産め立てに対する施策並びに私ども漁業者に対するあり方であります、
 大要を述べますと、昭和二十八年の八月、横浜市船引助役が屏風浦漁業協同組合の総会に出席されましたときに、全組合員の前で次のようなことを言明されたのであります。すなわち、現在埋立計画はない、また今後そのような計画があれば、事前に地元漁業者と協議する、さらに、もし私が漁業者の立場に立てば、埋立実施は死活問題である、との発言を行われております。この発言は去る昭和三十一年十二月に、地元県、市議団、県当局立ち会いの上で、横浜市首脳部と漁業者側が会見したときに、同助役も認めております。このときに確認書として、田中、船引両助役、八木、蔵原両県会議員の記名捺印した書類も提出されております、従いまして、純真なる漁業者は、一切この発言を信じて今日に至りましたことは当然のことであります。しかるに、昨年の九月ごろに至りまして、新聞紙上で、しきりに横浜市に埋立計画があり、しかも近く実施される旨の報道がありましたので、地元漁民は吃驚いたしまして直ちに市当局に面接いたしましたが、言を左右にしてなお要領を得なかったのであります。ところが、その後調査いたしますと、すでにそのときには組合に無断で埋め立ての現地調査を行なっており、市会においても埋め立てを前提とする根岸線の誘致を上提、可決しており、さらに各方面にも働きかけておったのであります。かくして正式に漁業者に埋立計画を示してきたのは去る十二月の会見の後でありまして、その間一切を頬かむりし、漁業者の存在を無視して、今日に至った市当局の態度は、私どもとしてまことに理解に苦しむところでございます。
 次に、根岸線と本埋め立ての関連でありますが、元来この二つの問題は別個のものであろうと考えます。事実横浜市当局にしても、また調査に当った国鉄にいたしましても、私どもが九月及び十月に陳情いたしましたときには、常に根岸線の延長と埋め立ては別だ、埋め立てとは関係がないという回答であったのであります。むろん漁業者としても、市の発展上、鉄道の延上そのものにつきましては、反対できないことは御了解願えると思います。ところが、昨年の十二月末の会見のときに至り、埋め立てと鉄道の延長は切り離せなくなったと言い出してきたのであります。ところが、この点もあとでよく調査しますと、当初より、埋立地に鉄道を延長する案で、調査、準備を行なっており、当然まず考えるべき陸路線については本格的な検討を行なっていないのであります。しかも一方では横浜市は中央及び県に対し猛烈なる運動を行なっていたのであります。
 こうした横浜市の地元漁業者並びに漁業を無視した動きに対しては、去る十二月の会見のときにも漁業者側から鋭く批判され、市当局も、その非を率直に認めておるところであります。こうしたことは、私どもとして決して感情論で申し上げているのではありません。こうした横浜市当局の態度、また漁業に対する軽視並びにその実情に対する認識不足、さらにまた調査計画の不備が、今日本問題を一そう紛争せしめている事実を御承知願いたいと思います。私どもは、当初申し上げた通り、本問題は絶対に代がえ不可能な生活権の擁護のためでありますがゆえに、現在家族ぐるみ、漁村の全組織をあげて埋立絶対反対の態度を持しており、今後もこの態度は絶対に変りございません。また昨年の十月における第五回の神奈川県水産大会及び内湾漁民総決起大会の決議の通り、県下全漁業系統団体、県下全漁民の総力をあげて戦っております。私どもは、横浜市当局がまず漁業の実態と、市民である漁業者の実情を十分に御了解の上、当然のことではありますが、まず第一歩から順序を立てて、陸路線による鉄道の延長及び内湾における工業地帯の造成について、本格的なる御研究をなされんことをお願いするものでございます。
 最後に申し上げたい点は、最近沿岸漁場の埋め立てに関する問題が全国各地に起っておりますが、その根底は漁民の蔑視、沿岸漁業軽視の観念から生ずるものであります。私どもが沿岸漁業者として一歩も譲ることができません。さらに本埋め立ての件は、戦後までに埋立権を設定済みの所、あるいは漁場価値の比較的希薄な所とは異なって、戦後における新たなる優良漁場の埋め立てという全く新しい型の問題でありますので、この影響するところも重大なものがあると考えます。その意味におきまして、本常任委員会が慎重審議され、沿岸漁業百年の大計をはかられんことを心からお願い申し上げる次第でございます。
 まことに恐縮でございました。
 今、田中助役さんから、先般、二十四日の会合のときにおきまして、議決会を設置するという問題がございました。私どもは議決会に列席するものでございませんで、今後のことは相談をするというだけに承認いたしてあるのでございまして、決して同意をするということに賛成いたしておるのではございませんので、この点は常任委員の各先生方に、かくとお願い申し上げる次第でございます。まことに失礼いたしました。

発言情報

speech_id: 102615007X01019570226_004

発言者: 大須賀金太郎

speaker_id: 32403

日付: 1957-02-26

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会