鈴木重信の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(鈴木重信君) 鈴木でございます。すでに五人の方々からそれぞれお話がございましたので、それぞれのお立場は違うと思いますけれども、なるべく重複を避けまして、簡単に申し上げます。
 県の立場でございますが、神奈川県は農業、水産ともに、大都市の必然的な膨張発展ということと、第一次産業——農業、水産業の保護育成という点と、この両点が時として矛盾を生じて参るのであります。農業におきましても年々約三百町歩ぐらいのものが、都市の膨張発展のために、壊廃されつつある。ことに今日問題になっております漁業につきましては、特に沿岸、内湾等の漁業は、大都市の膨張発展のために、次第に埋め立て等によりまして壊廃する傾向にあるのであります。
 本件の特色といたしまして、これらの市の経済、あるいは市民の交通というようなものが当然に発展して参るということの必然性と同時に、住民としての漁業ないしは農業ということの生産の向上、生活の向上ということの矛盾をいかに調整して参るか、こういうことにつきましては非常に苦慮いたしておるわけでございます。従来までもそうしたことがあり、現に県におきまして、川崎市の大師河原のノリ漁場の、百六十万坪の工場地帯の埋め立てということは、数年来計画が立てられ、昨年から、漁民との間の交渉に入りまして、昨年の暮に補償の妥結を見まして、本年から実施に移る、こういうことに相なったわけであります。こうした事態が起きて参ります場合に、常に相互の深い理解、またことに埋め立てによる被害を受けます側の納得というものを得られまして、それが第一段階であり、その次に権利、あるいは生活権の保障ということに入るのが当然なのでございます。
 今般の事態を見ておりますと、その点は、市当局のお話によりますと、計画の実現が非常に急速化して参ったというような内部の諸般の事情がおありになったようでございますが、そうしたことが原因でありましたと思いますが、漁民の側との話し合いの機会を持つチャンスというものが非常におくれた、その機会を持たないうちに反対運動が起きてきた、こういうふうなことでありまして、事態を見ておりますと、反対運動が熾烈になってから話し合いを持つようになった、非常に不幸な立場にあったのではないか、かように思われるのであります。これにはやむを得ない事情もあったと存じますが、そのうちに世の中の世論というものが、市の発展という方向を正当づけ、その必然性を説くというような形になりまして、次第に漁民の諸君の反対運動が世論から孤立をしていくというふうな傾向があったわけであります。
 これが事態の推移でございますが、県といたしましては、昨年の十月の二十九日に漁民の諸君が反対の大会を行われ、そのあげくに、市並びに県に陳情に見えたのであります。この問題につきまして、初めて漁民から反対の意思を県が聴取いたしたのでありますが、当時はまだ市の計画の内容等についてつぶさに県は市からの説明を受けておりませんので、ただ一応陳情を受けた次第であります。こえて十二月の上旬になりまして、市の首脳部から県の知事を初め、関係者に正式の埋め立てに関するところの客観的な御説明があったわけであります。すでにそのときには反対も熾烈になり、また一方世論も起きて参る、かようなことでございまして、われわれ見ておりますと、先ほど申しました都市を発展させよう、工場地帯を作ろうという線と、これを反対する線が平行いたしておりまして、どこまでも平行線でありまして、話し合いの機会がないのはまことに不幸なことである、かように存じましたので、当時埋め立て反対の実行委員長でありました済田竹次郎君がたまたま県にたずねてこられましたので、これはどうしても一度冷静に向うの代表者とよく話し合いをするという機会を持つ方がよろしい、そうでないならば、いわゆる時流というものから孤立をしていく、こういう不幸なことになる、諸君は会津の白虎隊のような形になっては不幸なんだから、冷静に両者が話し合う機会をまずお持ちなさいと、こういうことを勧告いたしたのであります。その後、県会、市会等のあっせん、あるいは内湾漁連、あるいは全県の漁連の会長等のあっせんもございまして、押し詰まりまして、十二月の二十八日に最初の話し合いをお持ちになって、私も同席をいたしたのでありますが、そこから両者の理解納得の端緒と申しますか、相互に話し合いの機会が初めてそこに開けた、かような経過になっておるのであります。
 こえて、ことしになりましてから、また陳情もあり、また先ほどお話のありました去る二十四日に第二回の話し合いが開かれる、かような経過になっておりまして、これはこの席上今後委員会を設けて両者で話し合おう、こういう形になったのであります。それは反対あるいは賛成ということでなく、まず話し合いを冷静に持っていこう、かような形になったのであります。
 県といたしましては、こうした矛盾を生じております中に、市と市民、市と生産者との間に冷静な話し合いが続けられまして、なるべく円満な納得、理解が得られますように希望しておるような次第であります。
 まことに簡単でございますが、県の立場と現在までの経過措置を、簡単に申し上げました。

発言情報

speech_id: 102615007X01019570226_012

発言者: 鈴木重信

speaker_id: 14579

日付: 1957-02-26

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会