千葉信の発言 (本会議)
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○千葉信君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会
における審議の経過並びにその結果の概要を御報告申し上げます。
すでに御承知の通り、この三法案に
つきましては、去る第二十二及び第二十四国会におきまして、それぞれ一部改正法律案として提案されたのでありますが、いずれも審議未了となったの
であります。
まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
この改正法律案は、過ぐる第二十四国会において衆議院が修正されました部分を取り入れ、さらに一部負担金の支払方法を改めて、去る第二十五国会に三たび提案されたものでありますが、衆議院におきましては、継続審査として今国会に持ち越されて審議された次第であります。
昭和二年以来実施されております健康保険制度は、わが国における社会保障制度の支柱をなす制度として、今日まで約三十年間、労働者の疾病、負傷時における療養と生活の保障を行うものとして、重要な意義を有しておりますが、近年、その医療費は年を追って増高し、特に賃金水準の低い中小企業を対象とした政府管掌健康保険におきましては、昭和二十八年以来、給付費がついに保険料収入を上回るに至り、保険財政はきわめて困難なる事態に立ち至ったのであります。
改正案の内容を要約いたしますと第一に、国庫は予算の範囲内において、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとすること、第二に、標準報酬等級区分を最低四千円から最高五万二千円の二十四等級とすること、第三に、療養の給付を受ける者の負担すべき一部負担金の範囲を拡張すること、第四に、保険医療制度について、個人指定方式を取り入れた機関指定方式を採用すること、第五に、継続給付を受けるための資格期間を一年に延長すること、第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること、第七に、被扶養者の範囲を明確化すること、第八に、厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定を整備すること、第九に、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書の審査機構を整備すること等であります。
以上が本法律案の大要であります。
次に、船員保険法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
最近数年来、船員保険は、医療給付費等の支出増加のため、その財政状態が不安定になりつつあります。これに対処するため、現行制度を是正するとともに、その合理化を行うことを目途として、この改正案が提出されたというのであります。
改正の要点の第一は、国庫は予算の範囲内において、船員法の災害補償に相当する給付に要する費用を除き、船員保険事業の執行に要する費用の一部を補助するものとする旨の規定を設けることであります。第二は、将来にわたって船員保険の健全な発展を確保するため、新たに一部負担の制度を設けることであります。第三は、保険料率につきましては、失業保険の適用を受けるものについては千分の五、適用を受けないものについては千分の七を引き上げようとするものであります。第四は、標準報酬等級の区分を改め、現行の最低四千円を五千円とすることとしたのであります。第五は、報酬が歩合によって支払われる場合の報酬月額の算定方法を改め、前年度における実績を基準として算定するものとしたことであります。第六は、職務外傷病に対する資格喪失後における療養の給付等につき、原則として一年につき三カ月の資格期間を設けることとしたのであります。第七は、独身入院者の職務外の事由による傷病手当金の支給額を百分の五十とすることのほか、健康保険法の改正に準じ、被扶養者の範囲の明確化、保険医療制度の整備等、各般の改正を行おうとするものであります。
以上が本法律案の大要であります。
次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、改正のおもなる内容を御説明申し上げます。
すなわちその第一は、健康保険法の改正と歩調をあわせ、標準報酬の最低を現行の月額三千円から月額四千円に引き上げることであります。第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対しても、脱退手当金を支給し得るような規定を設けようとするものであります。すなわち、同様の事情にある男子に対しましては、現行の厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡をとりまして、女子に対しても脱退手当金を支給し得る根拠規定を設けようとするものであります。第三は、規定の整備を行うことであります。現行の厚生年金保険法は、第十九回国会において全面改正が行われて、その施行より約三年近くなりますが、この間の経過を検討いたしますに、多少規定の明確を欠く面がありますので、これを明らかにし、解釈上の問題が起ることを避けるため所要の規定の整備を行うというものであります。
以上がこの法律案の提出の理由であります。
この三法案は、それぞれ衆議院において修正議決されたのでありますが、その要旨を申し上げます。
健康保険法等の一部を改正する法律案については、第一、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正の項を削除して、基金の審査機構については現行法通りとすること、第二、これに伴い本法律案の題名を健康保険法の一部を改正する法律案に改めること、及び第三、本法の施行期日について、国庫補助に関する第七十条の三の規定は公布の日から施行し、その他の規定は公布の日から起算してニカ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行することに改めましたほか、これに伴う規定の整備を行なったことであり、船員保険法の一部を改正する法律案は、その施行期日につきまして、国庫補助に関する第五十八条の二の規定は公布の日から、報酬が歩合によって支払われる場合の標準報酬の算定方法に関する第四条及び第四条の二の改正規定は、公布の日から起算して五カ月をこえない範囲内で政令で定める日から、その他の規定は公布の日から起算してニカ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行することとするほか、これに伴う規定の整備を行なったものであり、厚生年金保険法の一部を改正する法律案については、その施行の日を公布の日から起算して二カ月をこえない範囲内で政令で定める日に改めるほか、これに伴う規定の整備を行なったものであります。
なお、健康保険法の運営に関しましては、衆議院社会労働委員会におきまして、修正と同時に付帯決議を付せられたのであります。すなわちその要点の第一は、保険医療機関及び保険薬局に関する指定更新の手続を簡易化すること、第二は、国庫負担制度の根本理念を明らかにすること、第三は、医師、歯科医師及び薬剤師の待遇を改善すること、第四は、医師会、歯科医師会及び薬剤師協会を法制化することの四項目についてであります。
本委員会におきましては、さきに山下義信君外四名の発議による健康保険法等の一部を改正する法律案が、第二十五臨時国会に提案せられ、今二十六国会に継続審査となっておりますので、政府の提案にかかる右三法案と一括して審議が進められた次第であります。
衆議院より送付されました政府提出の右三案は、三月十四日に本委員会に付託され、委員会においては、まず厚生大臣より提案理由の説明を聴取するとともに、野澤衆議院議員より、衆議院における修正理由の説明を聴取したのであります。本月二十五日には公聴会を開催し、二十六日に岸総理の出席を求めまして、桂会保険制度に対する岸構想について質疑応答し、二十七日より改正案の実質的審議に入ったのであります。
委員会におきましては、主として健康保険法の改正問題について熱心なる質疑が集中し、今回の政府提案が、社会保険審議会に諮問すべき建前を無視して、三たび提出されたことに対する疑義について、また衆議院における修正点並びにこれに関連する部分について検討が加えられ、しかる後に改正案に対する審議を慎重に行なったのでありますが、そのうち最も論議の中心となった問題といたしましては、「衆議院で付帯決議をつけた趣旨は、法律の修正だけでは不十分であるという意味であるか」との質問に対し、野澤衆議院議員は、「法律の改正については、修正点だけでよいと思っているが、たまたま誤解される部分が相当あるのではないかということを配慮した結果である」との答弁があり、さらに「単価改訂の方針とその実現性及び一部負担と単価値上げとの相関性をいかに考えるか」との質問に対しては、「単価の問題はこれ以上放置できないので、これを値上げするという前提で調査を進めたい、これが実現については、多年の懸案事項で問題の焦点もきまっているから、長いことではないと思う、税制との問題もその際に考慮する、一部負担と単価値上げとは全く関連がない」と答弁し、また、「本改正案では、国庫は予算の範囲内において補助するという規定になっているが、これを定率化する考えはないか」という趣旨の質問に対しては、「本改正案が通過した後において、将来、国庫負担を定率に持って行くことについては考慮してみたい」という趣旨の答弁がありました。
標準報酬の問題につきましては、「標準報酬の引き上げは、中小企業労働者の賃金の実態から見ても、低額所得階層に不当な圧迫を加えるものである」いう質問に対しては、「標準報酬を賃金ベースの上昇に即応して改訂したのであり、報酬額の引き上げによって影響を受ける三千円から四千円未満の者は全保険者のわずか一%に過ぎず、この点ではマイナスの面があるかもしれないが、傷病手当金が増額するのでプラスの面もある」との答弁があり、一部負担については、「一部負担の性格をどう考えるか、また初診の際に百円に満たない場合、その額を収納することは保険事務を複雑化するのではないか」との質問に対しては、「赤字を埋めるための一部負担ではなく、保険制度を完備して行く上において、国が負担すると同時に、これを健全ならしめるために患者に負担してもらう考えである。また、将来点数表の改訂によって百円未満をなくするかもしれないが、七十五円しかかからないのに百円を徴収することは妥当性を欠いている」との答弁がありました。
なお、医療機関の指定問題については、「医療機関の指定と保険医の登録については、地域指定や定員制を考慮されているのではないか」という趣旨の質問に対しましては、「かようなことは考えていない、今日の医療機関保険医指定をそのまま機関指定し、保険医の登録として行きたい」という答弁があり、「医療機関の指定が取り消された場合、何ら不正を働かない善意の保険医までが保険診療の場所を失い、生活権を奪われることになる、これは刑法的連座制の採用ではないか」との質問に対しては、「これは共同責任の原理を採用したのではない、指定の取り消しを受けた医療機関の保険医は、他の場所でなら幾らでも診療に携わることができるのであり、現在は、医師個人を医療担当者の単位と考えず、医療がいわゆる機関というものによって行われている実情を重視して、いわゆる二重指定方法を採用したのである」と答弁し、「医療機関を三つの種類に分けているが、これらの機関に対する異なる行政効果を及ぼすことによって差別待遇をするのではないか」という質問に対しては、「第四十三条の一、二、三項に規定されている諸医療機関は、不特定多数者を診療の対象とするか、特定多数を対象とするかによって、その存立目的を異にしているのであって、特に差別待遇する意図はない」との答弁がありました。
また、船員保険法の一部を改正する法律案については、「海上勤務者の標準報酬の最高額を据え置きにしていることは、傷病手当金等について、陸上勤務者との間に均衡を失するところがあると思うがいかん」との趣旨の質問に対しては、「陸上と海上とのアンバランスを是正するため、その標準報酬を引き上げるということは了解できるので、適当な機会に検討を加え、すみやかに改訂したい」との答弁がありました。
以上のほか、国民皆保険に対する基本方針、結核問題の根本対策、私的医療機関のあり方、医療担当者の待遇改善等の諸問題についても、きわめて熱心なる質疑応答が続けられたのであります。
なお、本改正案の重要性にかんがみまして、前述のごとく公聴会を開催したのでありますが、公聴会には、医療担当者、被保険者、事業主の各代表者、学識経験者等十名の公述人を招き、本案に対する意見の陳述を求めたのであります。各公述人は、みな本案に重大な関心を持ち、それぞれの立場から、きわめて貴重な意見の陳述がありましたが、その詳細につきましては会議録により御承知願いたいのであります。
かくて、質疑を終りましたところ、内閣提出衆議院送付の三法案について、自由民主党谷口弥三郎君外一名より、修正案が提出せられ、谷口委員より、その趣旨説明がありました。その要旨は、まず、健康保険法等の一部を改正する法律案については、「一、標準報酬等級区分の最低を三千円から四千円に引き上げることは取りやめること。二、いわゆる個人開業医の機関指定の更新については、指定の期間終了前三月までの間に別段の申し出がない限り、申請がなくとも指定の申請があったものとみなすこと。三、一部負担金中、入院の場合の一日二十円三カ月を、一日三十円一カ月とすること。四、一部負担に関する規定の施行期日を七月一日とし、その他の規定は、それぞれの性質に応じ、施行期日を調節すること」等であります。
次に、船員保険法の一部を改正する法律案については、「一部負担に関する規定の施行期日を七月一日とし、その他の規定は、それぞれの性質に応じ施行期日を調節する」ことであります。
また、厚生年金保険法の一部を改正する法律案については、「標準報酬等級区分の最低を三千円から四千円に引き上げることは取りやめること」であります。なお、本修正案は予算を伴うので、これに対する内閣の意見を求めたところ、厚生大臣より、「修正案に同意する」旨を表明されました。
次いで、三法案に対する右の各修正案及び修正部分を除く衆議院送付案を一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して高野一夫君より賛成の意見が述べられ、日本社会党の山下義信君より反対の意見を述べられたのであります。早川愼一君は、緑風会の多数意見を代表して賛成の意を表せられ、竹中恒夫君は、無所属クラブの多数意見を代表して反対の意を表明せられ、また、日本社会党の坂本昭君からも反対の意見が述べられたのであります。
かくて討論を終了し、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案について、おのおのその修正案並びに修正部分を除く衆議院送付案について、順次採決に入りましたところ、多数をもって、それぞれ修正議決すべきものと決定いたしました。
なおその際、日本社会党片岡文重君より、船員保険法の一部を改正する法律案に対し、付帯決議を付することの動議が提出せられ、その趣旨について説明がありました。その付帯決議案を朗読いたします。
付帯決議案
健康保険の被保険者の標準報酬額を引き上げた反面、船員保険の被保険者の標準報酬を最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険の療養給付の主旨から見て矛盾を感ぜられるから、船員保険法については、早急に根本的な改正について検討の必要がある。
右決議する。
右の付帯決議案について採決いたしました結果、全会一致をもって可決した次第であります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)