竹中恒夫の発言 (本会議)

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○竹中恒夫君 ただいま提案されました三件につきまして、無所属クラブを代表して、絶対反対の討論を申し上げたいと存じます。(拍手)
 提案の理由が、保健財政の再建と制度の合理化ということになっておりまするが、その提案理由と内容とを比較いたしまするというと、全く羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいでございます。政府当局は、以前から赤字対策として考えておりましたその内容を、今日直ちに根本対策といたしておりまするが、明らかにこれは社会保障制度の後退でございまして、被保険者への経済的なるしわ寄せと、医療担当者に対しまする精神的な圧迫であって、官僚医療統制の復元であると言ってあえて過言でないのでございます。今こうした諸点について反対点に触れてみたいと思います。
 第一に、原案は、十人の人が見、十指の指さす通り、最も重要なるところの結核対策が欠如いたしております。健康保険の赤字の原因が、総医療費の三分の一以上に上回っておりまするところのこの結核問題を取り上げずして、どうして根本的な対策と言い得るでありましょうか。社会保障制度審議会並びに社会保険審議会等、官製のこうした審議会においてすら、健康保険の根本対策は結核問題であるということを提言し、すみやかにこれが解決策を勧告いたしておるのであります。世に爬羅剔抉という言葉がございまするが、健康保険制度の中から結核を取り出すことこそ、根本対策の第一になすべき施策であるということを、重ねて私はここに申し上げたいと思うのでございます。長期疾患の結核を短期保険で解決するということは、あたかも木によって魚を求めるのたぐいでございまして、むしろ当局は、結核予防法の財源の貧困を、健康保険に転嫁せんとするがごとき観さえするのでございます。
 第二の反対の理由は、国庫の定率負担がなされておらないことであります。先年の国会においても定率負担が論議され、付帯決議において、このことがコンクリートされたと一聞いております。当局の言われるがごとく、真に制度の合理化をはからんとするなれば、年々の医療費の総額に正比例する定率負担こそ望ましいものでありまして、これこそ国の責任を明確になし得るゆえんであるのでございます。かかる見地からいたしまして、すでに国民健康保険を初め、日雇あるいは労災等、すべてに定率が行われておる今日、ひとり健保のみが定率を採用し得ない理由は絶対にございません。そもそも国庫の負担の真の要因は、国民の所得の頭打ちと文化水準とのギャップ、この、ギャップは、ますますひどくなってくるのでございまして、この国民所得の頭打ち、低賃金所得の頭打ちと文化水準、すなわち医療水準の向上とのギャップは、どうしても国庫負担によらざれば解決し得ない問題でございます。(拍手)この意味合いにおきましても、私は国庫負担が定率でなければならない、かように存ずるのでございます。
 第三点は、被保険者へのゆえなきしわ寄せでございます。経済的加重でございます。被保険者の範囲を縮小し、縮小されて制度のらち外に放り出されたその気の毒な人を、一体どう取り扱うのか。私は、国民皆保険を唱えながら、せっかく医療保険のワク内にありまするそうした方々を、今らち外にほうり出すということは、国民皆保険の理論と全く矛盾するものでございます。これこそ全く笑止というべき、ナンセンスでございます。また同じくしわ寄せの一つといたしまして、継続受給資格の獲得の期間の延長等もせられております。特に見逃すことのできないのは、一部負担の大幅の増額でございます。先ほど一部負担を受益者負担のごとき論がなされました。私は全く奇異に感じます。制度を利用する者が受益者である、病気になった場合に医療保険を利用する者が受益者であるという考え方が根底にあることが、私はこの改正案に対しまする反対の最大の点でございます。少くとも医療保険というものは、一たん病気になった場合に、肉体的な苦痛がある、精神的な苦痛がある、せめては経済的な苦痛だけは、お互いに相互共済の精神で、ふだん保険料をかけておることによって、精神的な、あるいは肉体的な苦痛は避けられなくても、経済負担だけは何とか避けようというのが健康保険のあり方でございます。もし受益者負担であるとするならば、私はあえてお尋ねいたしたい。失業保険において失業給付金を受ける場合に、この制度を利用するからといって、給付金のうちから一部負担を逆に取るような考え方は成り立ちましょうか。健康保険は、失業保険と同じでございまして、要は、勤労階級の経済の援助でございます。ただ手段が医療を通じて経済負担を軽減するというのが医療保険でございます。してみれば、失業保険と何ら変るところはないのでございまして、この見地からして、一部負担の理論は成りたちません。
 第四の反対の理由は、当局の検査権の拡大でございます。単なる保険行政を行い、これが給付状況を検査し調査いたしまするのに、憲法の精神を乗り越えて、黙秘権を認めない、立ち入り権を行使する、こういう必要がどこにあるでしょうか。これこそ医療の官僚統制への布石であり、強化であると言わなければならないのであります。まさに憲兵政治の復活でございます。(拍手)十万医療担当者が激憤し、盗人扱いされる改正案に対しまして医療担当者が必死の抵抗をなしまするのも、ゆえなしとしないわけでございます。果して医療担当者が、世にいわれるがごとき水増し請求、不正請求がなされたか、私はここに数字をもって解明いたしまして、世の誤解を一掃いたしたいと存じます。
 昭和二十九年の政府所管の健康保険におきまして、取扱い件数が四千百二十四万件、この取扱い件数に対しまして、不正によって処分されたものが二千三百七十件、まさに〇・〇〇〇〇六%、千万分の六でございます。金額を申しますれば、三百八十二億円のうち不正の請求が百九十万円、一千万分の五でございます。百九十万円の不正を取り締るために、今回のごとき施策を必要とされるならば、一人の汚職官吏が一億円というあの膨大な金を、きわめて容易に費消し横領し得るがごとき官庁機構に対しまするところの監督権に、いかような監督規則があるでしょうか。(拍手)私は医療担当者の監督の強化よりは、むしろ官庁の峻厳なる取締り規則の制定を要望してやまないものでございます。(拍手)取り締る側の官吏の汚職は三年間に二万数千件、一日二十数件の汚職事件があるということでございます。して見れば取り締る官吏の方々の不正の率と医師の一千万分の六とをお考え下さい。どろぼうが巡査を取り締っておるような結果でございます。(拍手)私は、こういう意味合いにおきまして、今回の改正案は、被保険者にしわ寄せをし、医療担当者に精神的な圧迫を加えたものでございます。政府は申しました。赤字経済である、何とか三者がお互いに犠牲を払おう、三者共泣きしようと言われた。被保険者は三年前に保険料率を上げられて、年三二十五億円の保険料の増額を来たしております。しかして今回また一部負担金の増徴によって、この改正案が通りまするならば、ゆえなくして年々五十億円以上増徴される。医療担当者は、すでに昭和二十六年以来、低単価でもって泣き続けております。被保険者が泣き、医療担当者が泣いて、もう出る涙もございません。このときに泣き得るものは政府でございます。この国庫負担によって、この社会保険を推進することこそ、最も責任政治を痛感するところの政治家のなすべき義務でございます。
 私は時間がありませんので、はなはだ遺憾でございますが、以上、反対の要点を抄論いたしまして、反対討論といたします。(拍手)

発言情報

speech_id: 102615254X02219570331_029

発言者: 竹中恒夫

speaker_id: 16883

日付: 1957-03-31

院: 参議院

会議名: 本会議