森厳夫の発言 (運輸委員会)
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○森説明員 それでは船員のストライキにつきまして、経過の御報告を申し上げます。
本年三月五日、全日本海員組合から船主団体連合会及び各船主団体に対しまして、職別最低賃金制度の改訂及びそれに伴う賃金の増額について要求されたのでございます。それ以来労使間に十数回にわたりまして団体交渉が開催されたのでありますが、労使間の主張の懸隔が相当大きく残ったままついに意見の一致を見ませんで、組合から船員中央労働委員会に対して調停の申請が行われたのでございます。
同委員会は、本件に関しまして、賃金改訂に関する調停委員会を設けまして、五月三十一日に第一回を開催し、それから約四カ月間にわたりまして、四十数回にわたって会議を開き、慎重に審議が行われておったのでございますが、労使間の意見の懸隔はなおはなはだしくございまして、問題が複雑であり、広範のために、なかなか調整が困難をきわめたのでございます。しかしながら、いろいろの紆余曲折はございましたが、九月二十五日に公益委員によって作成せられた案を調停案として労使双方に提示して、その回答を求めるに至ったのでございます。調停案の諾否につきましては、労使それぞれの機関において十分に検討せられたのでございますが、十月十五日に労使双方から正式に調停案を拒否するという回答をいたしまして、調停は不調に終ったのでございます。
調停の不調になりまして以来、労使はそれぞれ対策を検討しておったのでございますが、海員組合は闘争態勢の強化をはかるとともに、実力行使を行うことを決定いたしまして、十月二十三日船主側に対して実力行使を行う旨の通告をいたしたのでございます。その内容は、第一波といたしまして、十月二十六日の午前零時から二十七日まで四十八時間にわたって、客船を除く全船舶を対象といたし、それから引き続いて第二波といたしまして百二十時間、指定外航船――これは指定外航定期船とタンカーでありますが、これを対象といたしまして、夜間荷役及び出港の拒否ということを主とする停船ストをいたすことになったのでございます。しかし第二波はその後二十九日から二千トン以上の全船舶をさらに追加するということで強化いたされたのであります。そのストライキの通告以来、労使間には自主的団体交渉を再開する旨の動きが十分でなかったのでありますが、船員中央労働委員会の脇村会長は事態を重視いたしまして、この団体交渉を開始させるように努力をされました結果、十月二十四日の夜、スト通告以来初めて交渉が再開されまして、最悪の事態を回避するために労使双方とも真剣に努力が払われたのでございますが、数回にわたる交渉を行なったにもかかわらずついに意見の一致を見るに至りませんで、組合は予定通り停船ストに突入したのでございます。
組合の実力行使は第一波、第二波と継続せられまして、最悪事態の長期化が憂慮せられたのでございますが、船員中央労働委員会長は早期解決のために、再び労使間に団体交渉を再開するように勧告いたしまして、その結果団体交渉は、相当困難がありつつ、一時は決裂さえおそれられたのでございますが、十一月の一日から二日にわたりまして徹宵交渉いたしました結果、事態が急速に進展いたし、労使双方は正式に、残った差の点につきまして船員中央労働委員会長にあっせんを依頼するというようになったのであります。その結果、同会長は午後一時に船員中央労働委員会事務局長室に労使双方を招きまして、あっせん案を提示して事態の収拾を勧告したのでございます。この間に組合は第三波の実力行使としまして、十一月の二日午前零時から百二十時間のストを指令いたしました。これは千八百トン以上の全船舶を対象としたものであったのでありますが、この戦術を強化する指令を出しましたけれども、あっせん案の提示を受けた労使双方はその案を受諾することを決定しまして、その旨を会長に回答するとともに、午後四時停船ストを解除したのでございます。ここで長期にわたりましたこの争議も一応の解決を見ることになったのでございます。なおその争議によりまして、その段階においてそれぞれ違いますが、十一月二日午後四時におきましては二百十九隻、百三万五千トンという船がストップいたしたのでございます。
なお争議の内容につきまして簡単に申し上げますと、この海員組合の要求は、昭和二十六年に制定せられた最低賃金制度の改訂と、それに伴うところの賃金のアップであったのでございます。
制度の改訂に関しましては、同一労働、同一賃金を基調としたものでありまして、賃金の増額については乗船中の一人当りの賃金を最低三〇%アップということで、大体九千八百円程度引き上げるという要求であったのでございます。これに対しまして船主側は、自主交渉のときには一人当り外航関係では二千五百円、内航関係では平均本給の一〇%引き上げという線にとどまったのでございますが、調停委員会におきましては賃金の制度につきましては労使双方でいろいろ意見を調整いたしました結果、おおむね意見の一致を見まして相当の改善が行われたのでございますが、賃金額につきましては外航関係では三千四百円、内航関係では三千円の引き上げをする、つまり最低一二%アップを内容とするものであったのでございます。この調停案に対しまして組合側の態度は、体系については多少の工合の悪い点はあっても若干の修正をもって受諾できるけれども、賃金額についてはどうしても本給の最低二〇%アップ、大体五千六百円程度の引き上げは必要であるということを主張したものでありまして、船主側の態度はその前に主張しておったものとおおむね同じものであったのでございます。
ストの開始の直前の二十四日の交渉におきましては、船主側は初めの通りの案を主張しておりましたが、その後外航関係三千円、内航関係二千四百円程度まで引き上げるという案を出し、これを多少具体化する案を出したのでございます。しかしその後の交渉におきまして、船主側は一二%だけは最低アップしようという調停案の線まで譲歩し、さらに十一月一日には本給の最低二二%アップまで提示をしたのでございますが、組合側は受け入れできなかったのでございます。そうして、一日の夜から二日の未明にかけましての交渉におきまして、船主側は本給の最低一五%の引き上げ、船員側は二八%の引き上げというところまで歩み寄ったけれども、その間で両者の話し合いはできなかったのでございます。それで午後一時半にあっせんが行われて、ちょうどそのまん中の一五・五%で労使双方が受諾いたすことになったのでございます。そのあっせんの内容は、制度につきましてはほほ調停案通りになりまして、細目についてはなお協定の際に調整する部分も多少残っておりますが、賃金額については今申し上げましたように本給の最低の一五・五%引き上げということに相なっておりまして、大体一人当りの平均額は四千二百円程度の引き上げというように推定されておるわけでございます。
ごく概略を御説明申し上げました。