小坂善太郎の発言 (予算委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○小坂委員 労働問題は今おっしゃるように感情に訴えては解決しないと思う。やはり客観的な基盤、ことに生産性の問題と関連して考えていかなければならぬと思いますが、その中で最も重要な賃金の問題でありますが、私は今お話がありましたように、やはり賃金の問題というものも国民経済的な観点から考えなければいかぬというふうに思っております。国民経済の分析の中に賃金のあり方というものを見出していかなければ、やはり労使の間の話し合いの客観的な土俵ができないというように思うのであります。国民経済がある限度でありますのに、賃金だけが飛び離れ、高い賃金に対する考え方だけが、国民全般の考え方から飛び抜けていわゆる進歩的であるということは私はあり得ないことであると思っているのであります。
 わが国の雇用の実情を見てみますと、これは大臣には釈迦に説法でありますが、労働人口をかりに四千二百万人にいたしてみますと、その中で自営業者というものが千八十七万人、約一千万人でありまして、これが二五・七%であります。そのほかに特徴的な家族従事者というものがあるのでありますが、これが千三百八十九万人すなわち三二・九%を占めている。いわゆる賃金俸給をもらっている被雇用者が千七百五十一万人で四一・四%であります。
 これをアメリカやイギリス等と比べてみますと、アメリカにおいてはサラリーをもらっている人は全体の八二・二%である。イギリスにおいてはもっと多くて全体の九二・六%あるのであります。第一次産業が日本においては圧倒的に多く、サラリーをもらっているいわゆる労働者と一般的にいわれる人たちは比較的少数である。ここに私はわが国の賃金の問題の特殊性があると思っておるのであります。
 ことに産業の規模を分析してみますと、三十人未満の人を使っている事業所を事業種別に分けてみますと、九八%は三十人未満の人を使っている事業所なんです。三十人以上の人を使っているものは全体の三%しかない。ただ人間の関係でみますと、三十人米満のものが六〇%、三十人以上の人を使っている事業所で働いている労働者が四〇%、こういうことになっておるのであります。
 それをさらに数字にわたりまして恐縮でありますが考えてみますと、第一次産業、第二次産業、第三次産業と比べてみますと、日本では第一次産業が四三・八%であって、アメリカでは一二・二%、イギリスではわずかに四・九%しか第一次産業はないのです。第二次産業は日本が三二・九%、アメリカが三四・七%、イギリスでは四七・四%。第三次産業を見ますと、日本が三三・二%、アメリカでは五二・八%、イギリスでは四七・二%となっておるのであります。
 そこでこの労働賃金の取り分というものが問題になります。こうした産業構造の中で賃金は一体どのくらいの割合を占めたら、国民経済の上から見て正常な状態であろうかという問題でありますが、国民所得は言うまでもなく俸給によるところの所得、あるいは個人業種所得あるいは法人所得あるいは個人賃貸料、利子所得というようなもので構成されているのであります。
 最近アメリカその他においてはコスト・インフレという議論が出ている。これは日本では今申し上げましたように、アメリカと事情が違います、違いますからアメリカのコスト・インフレ論というものは日本では別の角度から見なければならぬと思いますが、わが国の勤労所得は一九五三年で見ますと、国民所得のうち四九%を勤労所得は占めているわけです。賃金俸給は四九%国民所得の中で占めている。これはアメリカやイギリスと比べてどうかと言うと、アメリカは六八・五%、イギリスが六四・四%、日本は四九だから低いじゃないかと言えるかもしれませんが、先ほど申し上げたようにアメリカではこの対象が多いわけです。アメリカでは全体の八二・二%で六八・五を取っておる。イギリスでは九二・八で六四・四を取っておる。日本は四〇%前後のものが四九%を取っておるということでありますから、決してその比率から言うと少いとは言えない。一体勤労所得というものが国民所得の中の何%を占めるということが日本では可能なのか。現在でもベース・アップをしろ、生産性が上っておるのだから、もっと上げろという議論があります。しかしこれを上げて五〇%をこえた場合に一体どうなるのか。まず中小企業の方で問題が起きてくる。それは今おっしゃったように資本の蓄積というものに食い込んでくる。これが経済全体のアンバランスを生ずるということになるのであります。ことに歴史的に見てみると、日本ではサラリーの占める割合というのは、いわゆる基準年次、昭和九年から十一年までは三八・九%であった。これが昭和二十年で三〇・八%になり、昭和二十三年は四二・二%、昭和二十七年で四六・一%、昭和二十九年で四九%、こういうふうに上ってきておる。いわゆる基準年次に対して賃金俸給の比率は現在では一〇%ふえておる。それだけ勤労所得というものの比重は大きくなってきておるのが実態なんであります。しかも何とかかんとかいいますけれども、保守党というものが相当に勤労者に理解があったということは、これは手前みそになりますけれども、この表からいえば言えると思うのであります。そこでむしろそれを経済学的に見るとどういうことになるか、こういう分析を一つしていただきたいと思うのであります。いろいろ学者の方もおられますから、よくこういう実情を検討して、賃金俸給というものがどのくらいのパーセントを占めれば経済が破綻されないか、この検討をしていただきたいと思います。前に申し上げたように雇用者というものは日本では少数であるわけです。そこで大企業の賃金というものが、ただ力関係でもって何かストライキをやる、そこで仲裁者が出てきてあっせんだか調停だか仲裁だかをやるということになって、中をとってだんだん上っていって、それで先ほど申したように中小企業者との間の較差がだんだん開いていく、こういう状態で参りますと、結局私は産業構造間のアンバランスができると思う。そうしてそのことが結局日本の産業機構というものを成り立たなくしてしまう、こういうふうに思うのであります。この点について一つ労働大臣としてどういうふうにお考えでありますか伺いたいと思います。

発言情報

speech_id: 102705261X00219571105_028

発言者: 小坂善太郎

speaker_id: 32950

日付: 1957-11-05

院: 衆議院

会議名: 予算委員会