白井勇の発言 (大蔵委員会)

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○政府委員(白井勇君) ただいま議題となりました相続税法の一部を改正する法律案外五法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。
 最初に、相続税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 相続税については、現行の課税方式によれば、遺産の分割の状況により著しく税負担が異なり、農家、中小企業等一般に遺産の分割が困難な相続の場合にその負担が相対的に重くなりがちであること、税務執行の面で、遺産分割の状況の確認が困難なためときに税務執行の行き過ぎが見られるとともに、中には遺産分割を仮装する事例も見受けられること等の欠陥が指摘されており、また、現行の相続税の負担がなお重く、特に中小財産階層においてかなり重いものとなっていること等の現状からつとにその根本的再検討が要望されていたのであります。
 政府は、昨年来この問題を取り上げ、税制特別調査会にも諮って慎重な検討を行なった結果、その改正案を立案した次第でありますが、今回の改正案は、相続税について現行の遺産取得税体系を維持しつつ、遺産の総額と法定相続人の数とにより相続人の納付する相続税の総額が決定されるような制度とするとともに、相続税の基礎控除を大幅に引き上げ、中小財濃階層に適用される税率を緩和してその負担の軽減をはかる等相続税制度の合理化と中小財産階層の相続税負担の軽減をはかろうとしているのであります。
 次に、法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。
 第一は、相続税の課税方式を改めたことであります。すなわち現行の相続税は、各相続人のそれぞれの取得財産につき五十万円を基礎控除した後の課税価格に対して累進税率を適用して計算することとなっており、遺産の分割の状況によって、税負担が著しく異なってくるのでありますが、今回の改正案では、遺産の総額から一定の基礎控除を行なった後の価額を法定相続人が民法の相続分に従って相続するものとした場合の相続税の総領を計算し、これを各相続人の実際の取得財産の価額に応じて配分して各人の相続税額を計算する方式を採用することとしており、これによって、現行の遺産取得税の長所を生かしつつこれまで指摘されたような遺産の分割の状況によって税負担が著しく異なる欠陥を是正しようとしているわけであります。
 第二は、相続税の基礎控除を大幅に引き上げてさきに述べた相続税の総領を計算する場合に百五十万円に法定相続人一人につき二十万円を加算した金額を基礎控除することとしていることであります。現行の相続税は、遺産を取得した人ごとに五十万円を控除して課税することとしているため、農家、中小企業等遺産の分割が困難な相続の場合には、比較的少額の遺産についても相続税が課税されることとなっておりますが、今回の改正案によれば、このような問題もほとんど解消される見込みであり、これによって相続税の課税見込み人員は、現行の約五万五千人に対して約一万五千人と大幅に減少する見込みであります。
 第三は、相続税の税率についてその累進度を緩和したことであります。これにより相続税の負担は、さきに述べた課税方式の改正及び基礎控除の引上げと相待って特に中小財産階層の相続税の負担が大幅に軽減されることとなるのであります。
 第四は、配偶者控除及び未成年者控除について改正を行なったことであります。すなわち、現行法では、これらの控除は、それぞれ課税価格から控除する方式をとっているのを税額控除の方式に改めるとともに、配偶者控除については、一定の限度を設け、この控除が高額財産階層にとって著しく有利な制度とならないように配意し、また、未成年者控除については、特に中小財産階層においてその控除の利益が大きくなるように引きあげることとしております。
 なお、現行の制度が財産の分割の状況により税負担が異なるため改正前後の負担を正確に比較することは困難でありますが、通常の財産相続の形態において見ますと、現行法では遺産百万円の場合は約三万五千円、二百万円の場合は約十二万円、三百万円の場合は約二十五万円の負掛となっているのが改正案ではいずれも課税されないこととなり、遺産五百万円の場合は、現行法で約五十三万円、約一一%であるのが改正案では約二十万円、約四%の負担と、また遺産一千万円の場合は、現行法では約百四十六万円、約一五%であるのが改正案では約百六万円、約一一%とそれぞれその負担が大幅に軽減されることとなる見込みであります。
 第五は、相続税の負担の改正に即応して贈与税の基礎控除及び税率について改正を加えたことであります。すなわち、基礎控除を現行の十万円から二十万円に引き上げ、少額の贈与財産に対する税率の緩和をはかるとともに相続税負担との関連において税率全般の調整をはかることとしているのであります。これによって贈与税の課税見込み人員は、現行の約十六万人に対して約四が八千人と大幅に減少する見込みであります。
 以上のほか、相続税及び贈与税の負担の軽減がはかられる反面、贈与が分割して行われた場合と一時に行われた場合との間の負担の公平をはかる措置として、贈与税について新たに年十万円をこえる贈与が行われた場合にこれを三年間累積して課税する制度を設けるとともに、生前贈与を相続財産に加算する期間を相続開始前三年まで延長し、また、退職手当の非課税限度を法定相続人一人につき五十万円に引き上げ、その他相続税法について所要の規定の整備をはかることとしております。
 なお、この改正案は、昭和三十三年一月一日以後相続、遺贈または贈与があった場合の相続税及び贈与税について適用することとしております。
 以上この法律案の提案の理由とその概要を申し上げました。
 次に厚生保険特別会計法の一部改正について御説明申し上げます。
 政府におきましては、第二十二回国会において、政府管掌健康保険の給付費の異常な増高等に伴う支払財源の不足をうめるため、昭和三十年度以後七カ年間、毎年度、一般会計から十億円を限度として、厚生保険特別会計の健康勘定へ繰り入れることができる措置を講じたのであります。しかして、昭和三十一年度及び昭和三十二年度におきましては、この一般会計からの繰り入れを昭和三十三年度以後に繰り延べたのでありますが、昭和三十三年度におきましても、別に借入金等によりこれを処理することといたしましたことに伴い、一般会計からの繰り入れを、さらに、昭和三十四年度以後に繰り延べることとしようとするものであります。
 次に、船員保険特別会計法の一部改正について御説明申し上げます。
 船員保険におきましても、第二十二回国会において、療養給付等の部門における給付費の異常な増高等に伴い、その財源の一部に充てるため、昭和三十年度以後六カ年度間、毎年度、一般会計から二千五百万円を限度として、船員保険特別会計へ繰り入れることができる措置を講じたのでありますが、昭和三十一年度及び昭和三十二年度におきましては、健康保険の例に準じ、一般会計からの繰り入れば昭和三十三年度以後に繰り延べたのであります。しかして、昭和主十三年度におきましても、健康保険におけると同様、一般会計からの繰り入れを、さらに昭和三十四年度以後に繰り延べることとしようとするものであります。
 以上が、この法律案を提出した理由及びその内容であります。

発言情報

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発言者: 白井勇

speaker_id: 27445

日付: 1958-02-27

院: 参議院

会議名: 大蔵委員会