岸信介の発言 (本会議)

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○国務大臣(岸信介君) 御質問の数点に対しまして、お答えを申し上げます。
 第一点は、経済不況対策に関しての御質問であります。私は所信の表明においても申し述べました通り、昨年来とって参った総合緊急対策は、大体において、その目的を達しつつあります。すなわち、ごらん下さいましてもはっきりするように、これによって国際収支は著しく改善をされております。ただ、国外におけるこの国際収支を改善するためにとりましたところのいろいろな調整のことや、あるいは基礎的のいろいろな整備の問題等につきましては、これがいろいろな方面に深刻な影響を及ぼしておることは当然でありますが、これが、最初私どもの考えた、上半期において大体それが終るという見通しにつきましては、多少時期的なズレがあることは、これは私は認めております。しかしながら、われわれがこういう政策を立てました基礎になっておる経済計画そのものの基調並びにその大筋においては誤りはないのでありまして、この際これが改革をしなければならぬというような情勢ではないのであります。(拍手)
 また、これらの影響として、失業問題や、あるいは農林漁業、中小企業の問題、あるいは一般国民の生活向上、安定の問題について、補正予算を出して、この特別国会において審議すべきではないかという、御意見を入れての御質問でありましたが、これは、御承知の通り、三十三年度の予算を編成する場合に、私どもは、総合緊急対策をとることによって失業問題もふえてくるだろう、あるいは農林漁業、中小企業に及ぼす影響も深刻であろうというようなことを十分考慮いたしまして、三十三年度の予算が編成されておることは、御承知の通りであります。従いまして、これを施行することによって、今御心配のような点におきましても相当な効果があるのではないか。しかし、さらに必要があるならば、案をなにして国会の審議を求めることは当然でありますけれども、現在の段階において補正予算を編成する必要は私はないと思う。
 中共貿易の問題についての御質問であります。私は、現在の日中関係につきましては、はなはだ遺憾に考えております。私どもは、従来、この中共貿易を促進するということについては、日本が置かれておるところの地位、立場、これを前提として、その範囲内において、できるだけのことは、ほんとうに誠意をもってやるという態度で従来もきております。従いまして、私は、今回の、中共のとっておる、あるいは、いろいろな言動等に現われておるところのものは誤解である。所信表明にも明らかにしておるように、今日国交が正式に回復しておらないこの両国の間において、文化交流であるとか、あるいは、貿易というものを、いかにして促進しなければならぬかということを、真剣に両国が理解し合えば、私は、これは打開できるものであり、そういうふうに努力をしたいと思っております。
 次に、民主政始の問題につきましての御質問でありましたが、言うまでもなく、この私も、所信において、この点におきましては、民主政治の育成、完成に努力するということについては、鈴木君と全く見解を同じくするのでありますが、そのためには、多数党が少数党の意見についても十分謙虚な気持でこれに耳を傾けねばならぬものということを私は申しております。今お話がありましたが、この民主主義というもの、議会政治というものを考えますと、やはり、最後においては多数決によってきまるというのが民主主義のルールである。ただ、その決をとるまでの間における道程において、十分に議論を尽し、そうして、両方が常に反省をし、謙虚な気持で、どうすることが、国のために、国民のために一番いいかという見地に立って物事を考えていく、こういう立場において、その議論の途中におきましても、改めるべきものは改めていくということが当然であります。また、さらに大きなことは、その道程におけるところの、意見が違う場合における意見に対して、世論がこれに対して批判をする、これに対してわれわれが謙虚に聞いていくということが必要なのでありまして、結果において、あるいは多数決であり、多数党がきめたところに決定されるということになるといたしましても、途中におけるこの世論こそが、私は民主政治の上における非常に大事なことであり、十分に尽して、世論の批判を受け、お互いに反省し合うということが望ましいと思います。立案について、少数党とも十分話をして立案したらどうだというお話であります。私は、問題によってはそういうことも適当であろうと思いますが、すべての場合において、すべて共同して立案するというようなことは、事実上行い得ないと思います。
 小選挙区制の問題でありましたが、私は、民主政治を完成するために二大政党が国民政党として健全に発展成長していくためには小選挙区制がいいという、従来意見を持っております。これは私の見解でございます。しかしながら、お話しの通り、選挙制度というものは非常な重大な問題であることは言うを待ちません。ただ、鈴木君が、この問題を、何か憲法改正とつながるというふうなお話でありますけれども、私は、そういう考えは持っておりません。私は小選挙区論者でありますが、反対論もございます。ことに、いわんや、具体的な区制の問題については、これは十分に公正に研究しなければならぬ問題であります。従いまして、この問題に関しては、私は、慎重なる態度をもって、十分研究した上において立案し、御審議を願うということにしたいと思います。
 次に、文教政策について、道徳教育や、あるいは勤務評定等について、反動政策をやるのじゃないかという一つの御意見でありましたが、日本の文教政策については、私がここで申し上げるまでもなく、教育基本法の精神にのっとるべきことは言うを待ちません。そうして、一番必要なことは教育の中立性ということであると私は思うのです。従いまして、その意味において、すべて考えていかなければならぬ。勤務評定の問題につきましても、世間にいろいろな議論がありますけれども、人事の管理を公正にし、真に教員の中正を確保するためには、どうしても正しい勤務評定が行われるということが必要であります。これが法律の精神であると思うのであります。(拍手)ただ、この点について、教員諸君の意見も聞いたらいいじゃないかというお話がございました。私は、教員諸君が、この問題に関して建設的な意見を述べられるならば、これは喜んで聞くべきである。初めから反対して、この問題を施行させないという態度を改められるならば、私は十分意見を聞くべきであると思います。
 労働三法の改正問題についての御質問でありますが、これは今お話しの通り、労働者にとりまして基本的なものでございます。従いまして、軽々にこれが改正をするとかなんとかいうべき問題でないことは言うを待ちません。ただ、従来、いろいろな方面における意見におきましては、あるいは実情に適しないとか、あるいは立法技術の上において無理があるとかいうようなことが言われておりますから、私は、権威者に研究はしてもらいますけれども、今日これが改正問題を考えておるわけではございません。
 それから、進歩的保守党という問題につきまして、現実に労働運動等を弾圧するようななにであって、むしろ、進歩的保守党ではなくして、保守反動であるというような御意見の御質問でありましたが、これは私どもの考えとは全然違っております。労働運動に対する考え方も、しばしば国会おいて明らかにしておるように、私どもは、健全な労働運動、すなわち、労使間における健全なる慣行を作り上げるということにつきましては、われわれ非常に努力しておりますが、これが私は民主政治の根本だと思います。法律をお互いに守って、その範囲内においてやっていく、もし法律が不適当というならば、民主的な方法によって改正をすべきものである。こういう態度を私は堅持しております。決してこの問題に対してわれわれが保守反動ではない。むしろ、われわれは、あらゆる面において、すなわち、現実——われわれ、これは保守党の立場ですから、現実に即して、秩序を守って、そして漸進的にこれが改善を加え、進歩していく、これが私どもの立場であります。
 核浜鶴の問題及びミサイル基地の問題についての御質問であります。私も、所信表明のうちにおきまして、相当詳しくこの問題には触れて私の所信を明らかにしたつもりであります。この原水爆の実験禁止のみならず、その製造や、あるいは使用、あるいは貯蔵というような、全面的禁止に向って、はっきりと私の所信を明らかにし、これを実現するために世界の良識に訴え、また、考えを同じくするところの各国と協力して、実現にたゆまない努力をするということは、私は強く申しております。また、私自身が日本に対してどうするかという問題については、これまた国会においてしばしば言明を、いたしております通り、私は、自衛隊を核兵器をもって武装しない、及び、日本にこれを持ち込むことは認めないということを、中外に明らかにいたしておりまして、これに対しましては、いずれの方面からも、何らの故障もなければ、それに対する意見等もございません。私は、日本の態度として、これは正しいことである。日米の協定云々という問題もありましたが、私は、この点につきましては、すでに申し上げておる通り、安保条約というものが、両国民の意向に合うように、これを運営することについての共同委員会を作っておりますから、こういう問題につきましても、適当なときにそういう話し合いはすべきものだと思います。決して御心配は要らないということを、はっきり申し上げておきます。(拍手)
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発言情報

speech_id: 102905254X00419580617_008

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1958-06-17

院: 衆議院

会議名: 本会議