本会議

1958-06-17 衆議院 全12発言

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会議録情報#0
昭和三十三年六月十七日(火曜日)
    —————————————
    開 会 式
午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時一分 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に出御され、玉座に着かれた。
衆議院議長は、左の式辞を述べた。
    —————————————
  天皇陛下の御臨席を仰ぎ、第二十九回国会の開会式を挙げるにあたり、衆議院及び参議院を代表して式辞を申し述べます。
 去る五月二十二日衆議院議員の総選挙が行われ、六月十日をもって特別国会が召集されたのでありますが、われわれは現下わが国のおかれたる情勢に対処し、すみやかに諸般の態勢を整え、内治外交の施策を強力に推進し、もって国運をいっそう繁栄ならしむるとともに、世界平和の達成に寄与するよう一段と努めなければなりません。
  ここに国会は過般の総選挙による新議員を迎え、われわれに負荷せられた重大な使命に鑑み、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託に応えようとするものであります。
    —————————————
次いで、天皇陛下から左の御言葉を賜わった。
    —————————————
  本日、第二十九回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの深く喜びとするところであります。
  国会が、衆議院議員総選挙による新議員を迎え、わが国経済の発展と民生の安定のため、新たな決意をもって現下内外の諸情勢に対処し、当面する諸問題の審議に努められることは、わたくしの多とするところであります。
  ここに、国会が、国権の最高機関としてその使命を遺憾なく果し、国民の信託にこたえることを切に望みます。
    —————————————
衆議院議長は、御前に参進して、御言葉書を拝受した。
午前十一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で入御された。
次いで、諸員は式場を出た。
    午前十一時七分式を終る
     ————◇—————
昭和三十三年六月十七日(火曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和三十三年六月十七日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    —————————————
○本日の会議に付した案件
 岸内閣総理大臣の演説
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三十七分開議
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星島二郎#1
○議長(星島二郎君) これより会議を開きます。
     ————◇—————
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星島二郎#2
○議長(星島二郎君) 内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸信介君。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
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岸信介#3
○国務大臣(岸信介君) このたびの総選挙は、わが国政治史上画期的な意義を有する保守、革新の二大政党対立下における最初の総選挙でありましたが、その結果、与党たる自由民主党は国民の圧倒的多数の支持を得、ここに、私は、再び内閣総理大臣の重責をになうこととなりました。拍手
 この総選挙に示された国民の意思は、大多数の国民が、現実的かつ進歩的な政治を信頼し、急激かつ冒険的な変革を欲しないということであります。拍手私は、この国民の審判に深く思いをいたし、国政の運営に最善を尽し、もって、国民諸君の信頼と期待にこたえる決意を新たにするものであります。拍手
 総選挙において公約した重要政策につきましては、政府としても、できるだけすみやかに具体的方策を決定し、適当な時期において国会の審議をお願いいたしたいと考えております。従って、この際は、今後の施政の進路について所信を率直に述べ、また、当面の緊急問題につき方針を明らかにしたいのであります。
 まず、私は、民主政治の擁護を強調いたしたいのであります。
 わが国の民主政治の歴史は、日なお浅く、これを正しく育成し、その基盤を固めるには、さらに多くの努力を要するのであります。
 わが国の民主政治の健全な発達をはかるためには、極左、極右の活動を抑制しなければなりません。拍手最近、ややもすれば、公然と法の秩序を無視し、あるいは、集団の圧力によって国会の自由な活動を不当に制肘するような傾向が見受けられますことは、法の権威と国会の威信を保つ上からも、きわめて遺憾なことであります。拍手このような非民主的な活動に対しては、私は毅然たる態度をもって臨むものであります。また、私は、与野党のいずれもが、民主政治の本旨にのっとり、常に反省を怠らず、いやしくも外部からの不当な圧力に屈することなく、互いに協力して、公明な議会政治の確立に努められることを切に期待するものであります。拍手
 政府がこれまでとってきた外交方針は、このたびの総選挙の結果に徴しましても、国民のきわめて強い支持があったものと確信するのであります。拍手政府は、今後も、従来からの外交の基調を堅持し、国際情勢の推移に応じていよいよ積極的に自主平和外交を展開し、アジアの繁栄と世界の平和に寄与したいのであります。
 最近の世界の情勢は、緊張のうちにも国際間の対立を打開しようとする真剣な努力が続けられているのでありまして、特に東西の巨頭会談の動きには、大いに注目すべきものがあると思うのであります。私は、このような世界の大勢に応じ、今後も各国首脳者とできるだけ往来し、また、国際連合を通じて、国際緊張の緩和、世界平和の建設に一そう積極的な努力を続けていきたいのであります。
 この際、私が特に申し述べたいことは、原水爆禁止の問題と中共関係についてであります。
 科学兵器の高度かつ急速な発達は、一方において大規模な戦争の勃発を抑制する効果を有することは事実でありますが、このような大国間の力の均衡による平和の維持ということは、実はぎわめて不安定なものであり、もしもこの均衡が破れることになると、再び戦争の危険が生ずるのであります。その結果、万一にも原水爆戦に発展することになれば、それは、もはや、人類の破滅を意味することは言うまでもありません。
 このような不幸を絶対に避ける道は、大国間の軍備縮小とあわせて、原水爆の実験はもとより、その使用、製造、貯蔵を全面的に禁止するほかはないのであります。拍手私が、かねてから、わが日本全国民の悲願を込めてこれを強く世界に訴え、また、あらゆる機会と手段を通じてその実現を強く推進しているのも、このような認識に基くものであります。政府は、さらに、志を同じくする世界各国と緊密に協力し、人類の良識に訴えて、原水爆全面禁止の実現にたゆまざる努力を傾ける決意であります。拍手
 日中関係につきましては、政府は、従来から、わが国の現在の立場上可能な最大限度において、貿易や文化交流を促進し「漁業問題等の解決もはかるという方針で対処して参り、今後も、この方針で進みたいと考えているのであります。私は、国交が正式に回復していない現状のもとにおいて、貿易や文化交流を行わざるを得ない相互の立場を理解し合うことを期待するものであります。拍手
 最近の経済情勢の推移を見ますと、昨年来の緊急総合対策は予期以上の効果を上げ、国際収支は著しく改善されたのであります。しかしながら、世界経済が、なお沈滞を続けておりますことは、わが国の輸出の伸びにも大きく影響しており、わが国経済の国際的な環境は、いまだ楽観を許さない状況であります。
 このような経済の実情に対処し、政府は、経済の正常化をはかるため、適切な措置を講じ、さらに、長期にわたる経済計画のもとに、着実に経済の安定した拡大に導くように、経済基盤の強化など必要な施策をとる方針であります。特に、輸出の増進は、わが国経済発展のための必須の要件でありますので、これには、さらに特段の努力を傾けたいと考えるのであります。拍手
 政府は、このような方針によって経済政策を推進するに当り、かねて、中小企業と農林漁業の地位の安定に意を用いているのでありますが、私は、特に、この際、労働秩序の確立と産業平和の確保をはかって、生産性を高めるべきことを強調したいと思います。拍手
 民生の安定向上も重要な公約であります。これに関する諸施策につきましては、政府としても、鋭意その具体化をはかる決意であります。特に、一方において税負担の軽減合理化をはかり、他方国民年金制度の創設など多額の財源を要する政策を実施することは容易ならぬことでありますが、福祉国家建設の理想のもとに、万難を排して逐次これを実施する決意であります。拍手
 未来の新しい日本を作り出すことは、青少年に課せられた使命であります。私は、青少年が常に明るい希望と情熱に生き、わが国の歴史と文化のよりよき創造発展に努められることを望むものであります。政府は、このため青少年教育を刷新充実し、その地域活動を促進するための諸施設を拡充するとともに、現在一部に見られる青少年の不良化を防止する方策を講ずるなど、これが対策を活発に進める考えであります。
 なお、最近における繭糸価格の下落と旱魃による水田の被害が関係農家に不安を与えておることにかんがみ、政府は、すみやかに適切な対策を講ずることとしております。拍手
 以上、所信の一端を申し述べたのでありますが、私は、国政が常に民意の上に立ち、公正にして誤まりなく運営されることを念願するとともに、謙虚な気持で、国民の信頼と期待にこたえたいと思うのであります。拍手また、国会における少数の意見であっても、聞くべきものは十分これを聞き、いやしくも多数党の独善に陥ることなく、真の民主政治の実をあげたいと存ずるのであります。拍手
 国民諸君の力強い支持を切に期待してやみません。
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星島二郎#4
○議長(星島二郎君) この際暫時休憩いたします。
    午後一時五十一分休憩
     ————◇—————
    午後三時十七分開議
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星島二郎#5
○議長(星島二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ————◇—————
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星島二郎#6
○議長(星島二郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鈴木茂三郎君。
    〔鈴木茂三郎君登壇〕
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鈴木茂三郎#7
○鈴木茂三郎君 岸総理は、総選挙によって国民の審判を初めて受けられ、岸総理一色の内閣を組織されたのであります。私は、ここに、社会党を代表いたしまして、岸総理の組閣に祝意を表するものでございます。拍手
 特別国会に臨み、ここに表明された岸総理の所信は、言い古されたものであるというばかりでなくて、きわめて抽象的なものであったことは、私のはなはだ遺憾とするところであります。拍手
 岸総理一色の第二次岸内閣の組閣が電光石火的であったということは、何ら私は誇るに足りないと思います。誇るに値するかどうかということは、組閣をすみやかに完了した以上、特別国会の劈頭、その所信を具体的に明らかにし、同時に、その政策、特に総選挙における公約と、当面の緊急対策に関する施策をこの国会に提案して、即時実行できるようにするかどうかということが、誇るに値するかどうかという点であると思います。拍手ただいま総理の所信を承わりますと、総選挙に当って国民に公約されたところは、いっこれを実行に移されるのか、永遠のかなたに追いやられたような感を受けるのであります。拍手民主主義の政党政治の要諦は、どの政党であれ、責任の地位に立ったとき、いつ、また、いかなる場合においても、その方針、政策を即時実行できる用意を持っていなければならないのであります。
 かような見地から、私のお尋ねしたい第一は、財政経済上の問題、特に当面の深刻な経済不況に対する緊急措置の問題についてであります。
 さきに第一次岸内閣が本年度の予算案を提案された当時、政府は、不況の情勢を過小評価して、楽観的な見通しを持たれたのでありますが、その後の経済情勢を見ますと、国際経済は、アメリカは、次第に利潤率の低下が始まって、緩慢ながら悪化の一途をたどっている。英国は、軍事費を削減するか、それとも社会保障費を削減するかという危機に直面をしている。また、世界後進国の諸国は、工業原料品の下落、外貨の交乏等に悩み、「政府の当時予想されたのに反して、世界景気は立ち直る徴候さえ今日見られないのであります。日本の経済不況はさらに深刻でありまして、岸内閣が本年度予算案を編成した当時の予算案に裏づけされた経済計画は、今日あらためて再検討しなければならない状態に立ち至っております。拍手三十一億五千万ドルという、政府が予想した対外輸出は、二十八億ドルを下回るおそれさえある。アメリカとのはなはだしい片貿易は少しも是正されない今日、日本商品の排斥だけはさらに強行されております。東南アジアの貿易は伸び悩み、岸総理が描かれた県南アジア開発基金の構想は、盧生邯鄲の夢と消え去った感があるのであります。拍手しかも、日中貿易は、政府の心ない言動によって、せっかくの第四次貿易協定が破壊され、日本の外交と同じように、各国間の激しい世界市場争奪戦の中で、わが海外貿易は八方ふさがりの状態にあるのであります。拍手
 そこで、お尋ねをいたしたい点は、かかる深刻な国内の不況対策を、岸総理は具体的にどうされようかということが、私の質疑の第一点であります。拍手
 私は世界並びに日本の現在のかかる経済情勢に関して、どうしてもここで考慮しなければならない二つの基本的な問題があると思います。
 一つは、世界経済の後退または不況は、今や資本主義特有の過剰生産恐慌の様相を露呈して参っておるのであります。従って、これは、資本家本位の資本主義体制の矛盾に根ざすもりでありますから、西欧諸国と呼ばれる日本を含めたこれら諸国の資本主義体制が変革されない限り、こうした資本主義の末期的な症状は快癒できないということであります。拍手
 他の、もう一つの点は、こうした西欧諸国の指導者たるアメリカに日本が今日のように従属しておって平和外交のみならず、経済不況打開のための海外貿易の伸張をはかる経済外交の自由さえ制約されておる現状において、抜本的な対策を立ててこれを解決することは、きわめて至難であると見なければなりません。
 従って、私がここで岸総理にお尋ねをいたしますことは、かかる基本的な問題ではなくて、当面の緊急対策として、増大する失業者の生活の保障、国家の責任において、減退する雇用を確保すること、不況の最もはなはだしい農林漁業を立ち行くようにすること、中小企業や農林漁業の近代化を資金の面からも助成すること、また、産業の土台である働く国民の生活の向上をはかること、その他、私は、最近農村、漁村を視察いたしまして、この経済不況が農村、漁村に与えておる影響がきわめて深刻なものを見まして、一日もゆるがせにできないということを切実に痛感いたしたものであります。これらの緊急対策を即時実施するために、わが日本社会党は、当特別国会に、補正予算案を編成し、それに伴う関係法案とともに提出することを、強く政府に要求をしておるのであります。これに対する岸総理の所見をただしたい。
 財政経済上の第二点のお尋ねは、中国貿易の問題であります。この問題は、日中貿易を発展せしめることに対して政府にこれまで強い制約を加えてきたアメリカから、日本がその従属関係を断ち、日本に必要な平和と貿易のための外交を行えるように自主独立することが根本的な問題であるのであります。拍手し心し、私は、ここでは、日本の貿易を伸張して経済不況を打開するという見地から、岸総理の日中貿易に対する所信をただしたいのであります。
 日中の友好や第四次の貿易の協定、その他たくさんな今日存在しておる協定が成立いたしましたのは、アメリカの日本に対する制約の条件の中で、こうした成果を上げ、しかも、この成果はアメリカに気がねをされる歴代の保守派政府の努力ではなくして、国民外交による民間の手で一つ一つ積み重ねて、ここまで成果を上げて参ったのであります。拍手本来ならば、かかることは当然政府が行わなければならない問題であるのであります。しかるに、政府側の心ない言動なり、誤まった措置のために、政府みずから、せっかく民間の手によって上げた成果をここで破壊するというようなことは、私は何といたしても理不尽といわなければならぬと思うのであります。拍手日中の貿易と同時に日中友好関係が破壊されてどうして日本の平和と日本の貿易の発展、経済不況の打開ができましょうか。政府の手で誤まって破壊したことは政府の手で解決しなければならないことは当然であります。岸総理は、いたずらに手をこまねいて傍観者のような立場をとるのではなくて、進んで平和互恵あるいは善隣友好の基本的な立場に立って、これが解決のために努力されなければならないと信ずるのであります。わが党は、この最悪の事態の打開のために力を尽すことに、もとよりやぶさかではございません。岸総理のこれに対する所信をただしたいのであります。拍手具体的に——手をこまねいておるのではなくして、どうしようというのかという具体的な所信をただしたいのであります。
 第二にお尋ねいたしたいことは、民主政治のあり方についてであります。岸総理も、所信において民主主義に関する熱意を示されておるようでございます。民主政治の育成にも努めるということを言われて参っております。昔から、言うはやすく行うはかたしといわれていることはここでありまして、岸総理のやっていることは、およそ言われていることと逆であるのであります。拍手
 現行憲法を貫いている最も重要な原則は民主主義であります。古い日本から新しい日本に脱皮し発展させる基本精神こそは、民主主義でなければならないのであります。しかるに、新しい日本へ脱皮することを妨げておるものが、根強く今日なお残存しているのであります。すなわち、それは、古い日本が持っておった封建牲、独裁性の官僚的な反民主主義の反動的性格であるのであります。第二次岸内閣に対する内外の批判を聞きますと、不幸にして、第二次岸内閣こそは、この古い日本を代表する反民主主義の反動的な政府であるかのような批判を受けておることは、私の遺憾とするところでございます。拍手
 申すまでもなく、議会政治運営の形式としては、二大政党対立の形が最も進んだ政治形態ではありましょう。現在の二大政党は、ただ形だけであって民主主義が発達してできたものではありません。しかも、二大政党の形のもとで初めで行われた今回の総選挙の実情を見ますと、これは、総理自身が体験されたように、公正かつ明朗な選挙ではなく、むしろ民主主義を冒涜した選挙であったとの批判さえ起っておるのであります。拍手
 岸総理にお尋ねいたしたい第一点は、二大政党による民主主義は、多数党、政府党が少数党、反対党を尊重する建前の上に初めて成り立つものと信ずるのであります。総選挙後の政治のあり方を見ますと、わずかな期間ではありますが、多数が少数を押える一党独裁の反民主的な傾向がさらに顕著に強まってきたのであります。拍手
 岸総理は、二大政党下におい、て民主主義の発達をはかり、国会の民主的な運営を進めるために、少数党の意見を尊重する方法、どういう方法によって尊重されようとするのか、その用意があるかということを、私はここにお尋ねをいたしたいのであります。拍手
 たとえば、政府がこれはよいと信じて行わんとする政策に関しましても、そのうち重要な特定の問題に関しましては、立案し、提案する前に、一応野党の意見を徴し、尊重することは、よい政治慣行であるように思われます。今日まで、政府は、いろいろな諮問委員会または審議会というようなものを設けて、それぞれの意見を徴するようなことはされておる。しかし、これは単にそういうゼスチュアをするだけのことであって、政府は、多くの場合、当初きめた提案の方針を変えようとしたことはほとんどないように見受けられるのであります。われわれは、反対の意見や修正意見をいつでも採用せよというのではありません。対立した二つの意見は、世論の反響というものを十分考慮のうちに入れて、適正妥当な結論を見出す、これこそ民主主義の要諦と信ずるのであります。拍手私はこのことは、政府が独自の立場から国会に提案される諸法案の審議、その取扱いについても同じことが言えると思うのであります。
 民主主義のあり方に関する質疑の第二点は、小選挙区制の問題であります。首相は、その就任第一声において、適当な時期に小選挙法案を提出するということを言われております。この問題は、申し上げるまでもなく、人権尊重と平和を守る憲法の改正に通ずる、わが民主政治の土台をゆるがす重大な問題であるのであります。従って、総理は、これを、いつ、いかなる形で当国会に提案するのか、これを明示されたいのであります。そうでないと、私は、政界にいたずらな波乱と混乱を引き起すおそれもあるのではないかということを憂慮いたします。
 第三点は、目下問題となっておる復古的、反動的な道徳教育の実施、憲法において約束された教育の自由、人格権の尊重をじゅうりんする教員の勤務評定強行の問題、これらの問題は、国のあらゆる識者が反対し、国民の多くは危惧の念を抱いておるのであります。教壇に立って学童の教育を実際に担当している者は、総理大臣でもなければ、文部大臣でもありません。私は、総理は教育の実務を担当する学校教員の反対意見をもっと率直に聞くべきであると思うが、どうか。拍手
 第四点は、岸総理はひそかに労働三法の改正をもくろんでおるということが伝えられております。労働三法こそは、新憲法においてわが国労働者に与えられた基本的労働権に基いて制定された諸法律であるのであります。これは働く労働階級のマグナ・カルタであって資本家だけでなく、労働者の権利をも保護しなければならない立場にある政府が、労働三法改正の意図を秘めているとすれば、私は、これは重大な問題でなければならぬと思います。この際明確にされたいのであります。
 第五点は、岸首相は、その組閣の声明において、進歩的な保守派たらんことを明らかにされておるのであります。これは、私はまことにけっこうなことであると思います。総選挙に当って、私は、二大政党について、その民主的なあり方について、自民党が現在のように反動的な保守派であってはならない、英国のように、進歩的な保守党たらんことを望んだのであります。岸総理の今回の声明は、総選挙における私に対する喜ばしい回答として、私はこれを理解をいたしたいのであります。しかし、これまた言葉だけであってはならないのであります。労働運動や生存権確保のための民衆の運動、たとえば、汚水問題や軍事基地問題のごとき、露骨な警察権の干渉や、検察権の発動が、ひんぱんになってきたことも、周知の事実であります。これこそは、封建的、独裁的な官僚性の反動政治そのものであるといわなければならないのであります。拍手岸総理は、実際にはこういうことをやっておりながら、保守派としての反動性を、いかにして進歩的な保守派たらしめんとするか、ここに具体的にその方針を示されたいのであります。拍手わが日本社会党は、かかる反動政策に対しては、断固として、総力をあげて民主主義を守るために戦う決意であることを、ここに特に表明いたしておきます。拍手
 第三として最後にお尋ねいたしたいのは、核兵器とミサイル基地の問題であります。総理は、本日の所信の表明において——今日まで、核兵器の実験に関して条件を付されて参りました。これは、実際は、核兵器の実験の禁止を——できないことに条件で縛ることになるのであります。しかるに、ようやく、今日、わが社会党と同じように、原爆の実験に関しまして無条件に賛成されたことは、岸総理の一歩前進であるとして私は喜びます。拍手しかし、同時に、核兵器とミサイル基地の問題については重大な当面の問題でありまして、この問題について岸総理は、総選挙に当っても、また、前国会においても、核兵器の持ち込みはしないと繰り返し声明されておるのであります。しかるに、岸総理が声明されれば声明されるほど、結局、日本は米ソの核兵器の競争並びに核兵器の戦争の危険に国民と領土をぶち込むようなことになるのではないかという疑惑と不安が日増しに国民の中に強くなって参っております。拍手これはなぜでありましょうか。一つは、アメリカの国防当局が、日本本土並びにその周辺に核兵器を持ち込んで武装をし、ミサイル基地を設置しようという強硬な意図を、今日までしばしば表明してきたこと、これがために国民の疑惑と不安を強くしておると思われるのであります。
 また“西ドイツにおいては、アメリカの軍事基地が核兵器によって武装されること、北大西洋軍事同盟の戦略に従って、同じような武装が行われることについては、今日となっては、もはや、いかんともいたしがたいようでございます。ただ一つの残された問題は、ドイツの軍隊それ自身が核兵器によって武装するかしないかという問題が残されておるだけでございます。しかるに、昨年の西ドイツの総選挙によって、革新派を押えて保守派が勝利を得ました。その直後、アメリカから圧力がかかって、保守派のアデナウアー首相は、ドイツ軍にも核兵器を持ち込むことを承諾しなければならない羽目に陥っておるのであります。これがため、ドイツ国民は、総力をあげて反対運動を行なっております。それでありますから、総選挙後の西ドイツに起ったことが選挙後の日本にも起るのではなかろうかということ、これも国民の核兵器に対する疑惑や不安を強める理由ともなっておると考えられるのであります。拍手
 さらに、こうした情勢の中にあって、日本は、アメリカの軍事基地においても、また自衛隊自身においても、絶対に核兵器を持ち込んで武装をさせない、ミサイル基地を設けさせないという岸総理の言明や態度に、きわめてあいまいもこたるものがあるのであります。従って、結局は、岸総理は、アメリカの要求に屈服して、核兵器並びにミサイル基地を設置せしめられることになるのではなかろうか、こうしたところにも国民の不安と疑惑がいやまして濃くなり、深くなっていくように私は考えるのであります。それでありますから、岸総理が、これまでのように、日本の自衛隊は言うまでもなく、アメリカ軍事基地においても、核兵器を持ち込み、またはミサイル基地は作らせないという意思を、ただ表明されただけでは、国民の抱く疑惑と不安は断じて解消しないのであります。私は、この際、広く世界の日本に対する不安や不信を解くためにも、この際、日本の潜在主権を有する沖縄等も含めて、日本の本土には一切核兵器を持ち込ませない、また、ミサイル基地を作らせないという、日米相互の理解に基く協定を取りつけることが、まず必要であると思うのであります。拍手これに対する岸総理の所信をただしたい。私は、国民が核兵器とミサイル基地に対する疑惑と不安から解放されて、祖国日本の平和と建設のために明るい希望を持って生活することのできるよう、岸総理の決断を望んで、私の質問を終了いたします。拍手
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
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岸信介#8
○国務大臣(岸信介君) 御質問の数点に対しまして、お答えを申し上げます。
 第一点は、経済不況対策に関しての御質問であります。私は所信の表明においても申し述べました通り、昨年来とって参った総合緊急対策は、大体において、その目的を達しつつあります。すなわち、ごらん下さいましてもはっきりするように、これによって国際収支は著しく改善をされております。ただ、国外におけるこの国際収支を改善するためにとりましたところのいろいろな調整のことや、あるいは基礎的のいろいろな整備の問題等につきましては、これがいろいろな方面に深刻な影響を及ぼしておることは当然でありますが、これが、最初私どもの考えた、上半期において大体それが終るという見通しにつきましては、多少時期的なズレがあることは、これは私は認めております。しかしながら、われわれがこういう政策を立てました基礎になっておる経済計画そのものの基調並びにその大筋においては誤りはないのでありまして、この際これが改革をしなければならぬというような情勢ではないのであります。拍手
 また、これらの影響として、失業問題や、あるいは農林漁業、中小企業の問題、あるいは一般国民の生活向上、安定の問題について、補正予算を出して、この特別国会において審議すべきではないかという、御意見を入れての御質問でありましたが、これは、御承知の通り、三十三年度の予算を編成する場合に、私どもは、総合緊急対策をとることによって失業問題もふえてくるだろう、あるいは農林漁業、中小企業に及ぼす影響も深刻であろうというようなことを十分考慮いたしまして、三十三年度の予算が編成されておることは、御承知の通りであります。従いまして、これを施行することによって、今御心配のような点におきましても相当な効果があるのではないか。しかし、さらに必要があるならば、案をなにして国会の審議を求めることは当然でありますけれども、現在の段階において補正予算を編成する必要は私はないと思う。
 中共貿易の問題についての御質問であります。私は、現在の日中関係につきましては、はなはだ遺憾に考えております。私どもは、従来、この中共貿易を促進するということについては、日本が置かれておるところの地位、立場、これを前提として、その範囲内において、できるだけのことは、ほんとうに誠意をもってやるという態度で従来もきております。従いまして、私は、今回の、中共のとっておる、あるいは、いろいろな言動等に現われておるところのものは誤解である。所信表明にも明らかにしておるように、今日国交が正式に回復しておらないこの両国の間において、文化交流であるとか、あるいは、貿易というものを、いかにして促進しなければならぬかということを、真剣に両国が理解し合えば、私は、これは打開できるものであり、そういうふうに努力をしたいと思っております。
 次に、民主政始の問題につきましての御質問でありましたが、言うまでもなく、この私も、所信において、この点におきましては、民主政治の育成、完成に努力するということについては、鈴木君と全く見解を同じくするのでありますが、そのためには、多数党が少数党の意見についても十分謙虚な気持でこれに耳を傾けねばならぬものということを私は申しております。今お話がありましたが、この民主主義というもの、議会政治というものを考えますと、やはり、最後においては多数決によってきまるというのが民主主義のルールである。ただ、その決をとるまでの間における道程において、十分に議論を尽し、そうして、両方が常に反省をし、謙虚な気持で、どうすることが、国のために、国民のために一番いいかという見地に立って物事を考えていく、こういう立場において、その議論の途中におきましても、改めるべきものは改めていくということが当然であります。また、さらに大きなことは、その道程におけるところの、意見が違う場合における意見に対して、世論がこれに対して批判をする、これに対してわれわれが謙虚に聞いていくということが必要なのでありまして、結果において、あるいは多数決であり、多数党がきめたところに決定されるということになるといたしましても、途中におけるこの世論こそが、私は民主政治の上における非常に大事なことであり、十分に尽して、世論の批判を受け、お互いに反省し合うということが望ましいと思います。立案について、少数党とも十分話をして立案したらどうだというお話であります。私は、問題によってはそういうことも適当であろうと思いますが、すべての場合において、すべて共同して立案するというようなことは、事実上行い得ないと思います。
 小選挙区制の問題でありましたが、私は、民主政治を完成するために二大政党が国民政党として健全に発展成長していくためには小選挙区制がいいという、従来意見を持っております。これは私の見解でございます。しかしながら、お話しの通り、選挙制度というものは非常な重大な問題であることは言うを待ちません。ただ、鈴木君が、この問題を、何か憲法改正とつながるというふうなお話でありますけれども、私は、そういう考えは持っておりません。私は小選挙区論者でありますが、反対論もございます。ことに、いわんや、具体的な区制の問題については、これは十分に公正に研究しなければならぬ問題であります。従いまして、この問題に関しては、私は、慎重なる態度をもって、十分研究した上において立案し、御審議を願うということにしたいと思います。
 次に、文教政策について、道徳教育や、あるいは勤務評定等について、反動政策をやるのじゃないかという一つの御意見でありましたが、日本の文教政策については、私がここで申し上げるまでもなく、教育基本法の精神にのっとるべきことは言うを待ちません。そうして、一番必要なことは教育の中立性ということであると私は思うのです。従いまして、その意味において、すべて考えていかなければならぬ。勤務評定の問題につきましても、世間にいろいろな議論がありますけれども、人事の管理を公正にし、真に教員の中正を確保するためには、どうしても正しい勤務評定が行われるということが必要であります。これが法律の精神であると思うのであります。拍手ただ、この点について、教員諸君の意見も聞いたらいいじゃないかというお話がございました。私は、教員諸君が、この問題に関して建設的な意見を述べられるならば、これは喜んで聞くべきである。初めから反対して、この問題を施行させないという態度を改められるならば、私は十分意見を聞くべきであると思います。
 労働三法の改正問題についての御質問でありますが、これは今お話しの通り、労働者にとりまして基本的なものでございます。従いまして、軽々にこれが改正をするとかなんとかいうべき問題でないことは言うを待ちません。ただ、従来、いろいろな方面における意見におきましては、あるいは実情に適しないとか、あるいは立法技術の上において無理があるとかいうようなことが言われておりますから、私は、権威者に研究はしてもらいますけれども、今日これが改正問題を考えておるわけではございません。
 それから、進歩的保守党という問題につきまして、現実に労働運動等を弾圧するようななにであって、むしろ、進歩的保守党ではなくして、保守反動であるというような御意見の御質問でありましたが、これは私どもの考えとは全然違っております。労働運動に対する考え方も、しばしば国会おいて明らかにしておるように、私どもは、健全な労働運動、すなわち、労使間における健全なる慣行を作り上げるということにつきましては、われわれ非常に努力しておりますが、これが私は民主政治の根本だと思います。法律をお互いに守って、その範囲内においてやっていく、もし法律が不適当というならば、民主的な方法によって改正をすべきものである。こういう態度を私は堅持しております。決してこの問題に対してわれわれが保守反動ではない。むしろ、われわれは、あらゆる面において、すなわち、現実——われわれ、これは保守党の立場ですから、現実に即して、秩序を守って、そして漸進的にこれが改善を加え、進歩していく、これが私どもの立場であります。
 核浜鶴の問題及びミサイル基地の問題についての御質問であります。私も、所信表明のうちにおきまして、相当詳しくこの問題には触れて私の所信を明らかにしたつもりであります。この原水爆の実験禁止のみならず、その製造や、あるいは使用、あるいは貯蔵というような、全面的禁止に向って、はっきりと私の所信を明らかにし、これを実現するために世界の良識に訴え、また、考えを同じくするところの各国と協力して、実現にたゆまない努力をするということは、私は強く申しております。また、私自身が日本に対してどうするかという問題については、これまた国会においてしばしば言明を、いたしております通り、私は、自衛隊を核兵器をもって武装しない、及び、日本にこれを持ち込むことは認めないということを、中外に明らかにいたしておりまして、これに対しましては、いずれの方面からも、何らの故障もなければ、それに対する意見等もございません。私は、日本の態度として、これは正しいことである。日米の協定云々という問題もありましたが、私は、この点につきましては、すでに申し上げておる通り、安保条約というものが、両国民の意向に合うように、これを運営することについての共同委員会を作っておりますから、こういう問題につきましても、適当なときにそういう話し合いはすべきものだと思います。決して御心配は要らないということを、はっきり申し上げておきます。拍手
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松澤雄藏#9
○松澤雄藏君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十八日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
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星島二郎#10
○議長(星島二郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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星島二郎#11
○議長(星島二郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十九分散会
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