小平忠の発言 (本会議)
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○小平忠君 私は、日本社会党を代表して、政府提出の補正予算案二案の撤回を求め、以下、私が述べる要旨に基いて、政府案の編成がえを求める動議を提出するものであります。(拍手)
政府は、台風二十二号の襲来によってしぶしぶながら補正予算を提出したのでありますが、今回の補正予算を出すまでの経緯並びにその内容につきましては、おおよそ自民党歴代内閣の提出した補正予算案の中でも、最も不誠意、かつ財政政策としても不適切なものでありまして一戦後最悪の補正予算案と評しても過言でないのであります。(拍手)
なぜ、今回の政府案をかく批判せざるを得ないのであるか。その第一の理由は、最近の経済不況は、ついに有名大企業すらも企業整備に着手するほど深刻化し労働条件も悪化の一途をたどり、大量首切り、失業者の増加は、年末に向ってますます激しくなってきている実情であり、一方、本年度の災害は、二十二号台風を含めてほとんど全国に及び、その被害の範囲と、その激甚さは、昭和二十八年度被害に匹敵するものがあるのであります。
このように、二十二号台風による罹災者を含めて、今や経済不況の波はわが国国民大衆の生活の上に大きな恐怖となって押し寄せてきているきわめて重大なときにもかかわらず、そこに提出されました補正予算案なるものは、ただ災害復旧関係及び外債発行関係に限定したものであり、経済不況に対する対策費は何ら考慮されるところなく、その必要性する認めようとしていないのであります。
しかも、政府が計上している災害対策費九十億九千八百三十三万円は、今回の衆議院予算委員会におきまして、わが、党委員の追及の中に明らかにされたように、本年度計上額としてはまことに不十分であり、かつ不足なものであることを、これは大蔵当局みずからが認めているところであります。(拍手)
また、災害復旧に要する国費の支出に際しての国の負担率、補助率の増額、その他の特別措置についても、政府の国会提出はまことに遅々として進まない状態であります。政府は、会期中にすべての必要なる特別立法措置を国会に提出すると答弁しておりながら、昭和二十八年度災害当時の二十数件に及んだ特別措置に比べれば、なぜに本年の災害についてはその措置がおくれているのか、われわれは全く理解に苦しむものであります。
本年の災害は、四月の霜雪害以来、干害、雨害、十八号台風、二十一号台風と、たび重なっているのでありますが、それにもかかわらず、これら災害については何ら特別措置をとる誠意すら見られず、政府は、二十二号台風によって、ようやく補正予算の必要と特別立法措置の必要を認めようとしているのであります。これは、まことに全国罹災者を軽視したものといわなければならないのであります。
従いまして、今回の政府提出災害予算案は、金額としても過小に過ぎるし、また、特別措置はあまりも不十分であり、これでは地方経済は不況と災害の二重の被害によって困窮の度を増すことはきわめて明瞭であります。(拍手)
しかも、政府は、今回の補正予算の財源として、本年度歳入の税外収入の増収分を充当しようとする無理算段な財源捻出方策であり、政府みずから災害予算規模の僅少なることを自覚しながらも、財源措置に縛られ、その規模を広げられないという体たらくで、すなわち、政府はみずから経済基盤強化資金というたな上げ財源のワクを設定し、異常災害の復旧に際してはこれを使用することを定めておきながらも、なぜに今回の異常災害にこれを使用しないのでありましょうか。今回の狩野川流域のあの悲惨なる被害を、政府は異常災害とは見ていないのでありましょうか。また、常に健全財政の建前を守るならば、補正予算の編成に当っては、まず、その財源として、既定経費のうち、節約、削減し得る経費はないかどうかを再検討すべきであります。政府は、今回の補正に際して、果してこの努力を尽したでありましょうか。
毎年度、防衛関係費は膨大な繰り越しをしていることを見のがしてはならないのであります。社会党を初め世論の非難によって支出を急いだ昨年度におきましても、防衛庁費は百億円に近い繰越金を生じているのであります。また、今回の北海道の秋季演習に見られるように、自衛隊はソ連を刺激する以外に何らの取り柄もないと見られるところに莫大な国費の浪費をやっているのであり、われわれは、政府が血税を支払っている国民の身になって既定経費、なかんずく非生産的経費の削減について、もっと誠意を持ってもらいたいのであります。(拍手)
また、今回の補正予算案の第二の特徴は、外債発行に伴う特別会計予算の補正でありますが、外債を発行することの無意味なことにつきましては、すでに予算委員会、大蔵委員会等において明らかになってきているところであります。佐藤大蔵大臣自身も、現在のアメリカの起債市場は次第に金利高に向っている事実を認めているのであります。今日のように外貨保有がふえているときに、さらに外貨を借りてまで、これを円資金にかえて国内で使用することは、借金を質に置いて金を使うのと同じであります。(拍手)これでは、外国からの借金をふやし、国内では日銀券の発行高をふやすだけでありまして、健全財政の建前から見ても全く矛盾するものであります。われわれは、現在の国内の民間金融の緩和の実情にかんがみて、政府に若干の政策の用意さえあれば、民間資金を活用して、財政融資に必要なる資金の補てんはできるものと判断するものであります。
また、政府は、中小企業関係機関に対して、七十億円の新規融資と、三十億円の繰り上げ融資を認めておりますが、これも現在の中小企業に対する財政措置としてはまことに不十分であります。政府部内の中小企業庁すら、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金の三機関に対しては、昨年度並みの融資をするために、当面百六十億円が必要であると報告しているのでありますが、政府の今回行なった融資増は六十億円にすぎないのであります。
このように、今回の政府補正予算案は、歳出項目の選定においても、また、その財源措置においても、当面国民が期待しているところに何らこたえるところがないのであります。(拍手)
そこで、わが党は、かかる政府案に対して編成がえの動議を提出するものでありますが、われわれが政府に要望する第一点は、政府が不況の事実を認めるべきことであります。政府は、がんとして不況を認めないところから、不況の影響として、財政収入が、計画通り、また予算通りに集まらない事実を、国民に率直に示すことができないのであります。従って、わずかな税外収入をかき集めて、足りないことを万般承知の上で災害予算だけを編成したり、また、国内に余裕ある資金を活用しないで、年六分を上回る高利の外債を発行しようとしております。このように、今回の補正予算編成が全く歪曲されてしまった原因は、政府が不況の事実を認めないところに基因しておるのであります。われわれは、災害対策として政府案の九十億九千八百万円に対して、約二百三十七億六千万円を計上することを要求するものであります。これは、災害対策として施設災害対策費関係、農産物関係、文教関係、厚生労働関係、その他被害全般にわたって明確になっておる当面必要なる経費を集計したものでありまして、このことは、大蔵当局といえども、これを過大であるとは査定できない最小必要限度の経費なのであります。(拍手)しかも、これらの経費は、いずれも昭和二十八年度災害当時並みの特別立法措置並びに特別行政措置に伴って支出すべきものであります。
さらに、一般会計予算補正の第二点としてわれわれが強く要求するものは、失業対策費、不況による農林漁業に対する対策費、中小企業振興についての助成費、国民健康保険における患者負担の軽減、年末手当及び夜勤手当などの所得についての減税、あるいは勤労者実質収入の向上をはかる措置、公務員の年末手当に対して〇・二ヵ月分の増額、さらに、不況対策の実施に伴って生ずるところの地方財政の負担増加に対する本年度の特例としての特別交付金の交付であります。詳しくはお手元に配付してあります議案について参照いただくことにいたします。
このように、災害対策並びに不況対策等を含めて、一般会計予算の歳出増としては、およそ五百二十二億円を計上するものであります。また、特別会計予算の補正につきましては、外債発行をとりやめて、これに伴う予算措置である産業投資特別会計並びに国債整理基金特別会計の補正を取りやめるべきであります。しこうして、新たにとるべき措置としては、財政投融資計画の変更として、資金運用部手持ちの金融債約四百九十三億円を民間金融機関に売却して、財政投融資の原資を調達すべきであります。現在、資金運用部特別会計並びに産業投融資特別会計には若干の余裕金が残っておりますが、これらは、本年度の原資調達計画に穴があいている現在、その補てんに向けらるべきものでありまして、新たなる融資に要する資金は財政と金融の一体化によって調達すべきであります。もとより、この措置をとるためには、日銀公定歩合の再引き下げを必要とすることは言うまでもありません。現に、政府部内、また主要閣僚の中にも、日銀公定歩合の再引き下げを行なって、民間資金を活用し得る道を開くべきであると主張している者があるのであります。岸内閣のように右顧左眄していたのでは、せっかくの民間金融の緩和は、何ら不況打開に役立たないまま、むだに浪費されてしまうのであります。
かくして調達する財政投融資原資の配分は、災害関係についての地方起債、災害関係についての住宅金融公庫の融資増、災害並びに高利債の肩がわりのための農林漁業金融公庫の融資増、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金、日本不動産銀行の四機関に対して、政府案の七十億円融資のほかに、さらに百八十億円を増額して二百五十億円の融資、さらに、電源開発会社等、資金計画にそごを来たしている特殊団体に対して百八十億円の融資、合計四百九十三億円の融資を配分すべきであります。このことは、自由民主党の諸君といえども、本心は、この社会党の組みかえ動議の正しさ、政策としての妥当性は認めているのであると私は思うのであります。(拍手)しかしながら、経済政策の行き詰まりを、独禁法の改正のごとき経済制度の改悪、さらに警職法の改悪によって、国民の正しい世論も弾圧しようとするがごとき岸内閣の手によっては、経済政策はとうてい正しい軌道に戻ることが期待できないのであります。(拍手)
私は、心ある自由民主党の諸君がわれわれの動議に賛成されることを真に期待いたしまして、政府案に対しまして編成がえを求める動議の提案理由の説明を終えるものであります。(拍手)