樋口勝の発言 (法務委員会)

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○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) ただいま御質問のございました法廷内外における最近のできごとでございますが、御承知のように、昭和二十五、六年から七、八年、九年ぐらいにかけまして、お尋ねのような、相当法廷の内外にわたりまして乱れました状態がおりおり現われたということは、御承知の通りでございますが、今のお尋ねの趣旨が、さような過去は一応おきまして、ごく最近における類似の顕著な事例というような御趣旨に承りましたので、一応手元に集めました資料に基づきまして、最近の事例のうち、また特に顕著な事例を御報告いたしたいと、かように存じます。これもまた、御承知のように、昭和三十年、三十一年、三十二年、この間は法廷の内外が、いろいろな原因もございましょうが、比較的静穏でございまして、特に混乱状態が起きまして、裁判の執務の上に障害を生ずるというような事例がほとんど希有になっておったわけでございますが、三十三年から本年にかけまして、過去におけるとやや類似の混乱状態が見られるようになってきているわけでございます。本年になりましてから、本年の一月からごく最近の十月、十一月、現在にわたります期間におきまして、東京を初め、各地におきます、主として地方裁判所でございますが、その法廷内外における乱れた状況というようなことを、事例別に一応集めますと、顕著なものとしては約三十近く、二十数件見られるわけでございます。
 まず、一般に通じまする大体の形と申しますると、あるいは勾留理由の開示の際、あるいはまた審理に入りました際に、開廷前に相当な数の組合員その他の傍聴者が、裁判所の構内に集団して参りまして、傍聴券の発付状況、発付の方法等についてそこに混乱が起きる、それからまた、それに関連しまして、構内あるいはその付近においていわゆるデモ的な行動に出る、また、法廷が始まりましてからは、裁判官の発言あるいは証人の尋問に対しまして、種々ばり雑言に類するような言を発するというようなことが、すべての事件に大体共通した態様でございますが、そのうち顕著な例と考えられますものを二、三拾いまして簡単に御報告いたしますると、昭和三十四年の三月二十日、静岡地方裁判所におきまするいわゆる安西郵便局事件と称せられている被告人七名の事件の第一回公判の際でございますが、開廷前に全逓の労組員約六十名が法廷付近でジグザグ行進を行ない、傍聴券の交付に際し、郵便局側のいぬがいるから、傍聴券を全部組合員に渡せというようなことを口に叫んで喧騒をきわめ、また、傍聴券の増発を求めた。これはもちろん許されなかっわけでございますが、さらに開廷中に及びまして、特別弁護人の申請の一部が却下され、また、被告人は裁判官、検察官の自己紹介を要求したが拒絶された。また、起訴状朗読に入りまして、被告人、傍聴人の怒声で喧騒をきわめたため、朗読が聞きとれず、弁護人は朗読前の段階に戻すような申し立ても行なわれた。また、傍聴中の検察事務官につきまして、被告人らに圧力を加えるものとしてその退廷を要求したため、その検察事務官は任意退廷をした。その後休憩中検察官と傍聴人との間に紛争を生じ、再開後、弁護人側から、審理は円滑に進行できない状態であるから閉廷されたいという申し出があって、結局その日は審理に入ることが不可能になりまして閉廷をした。
 次に、福岡地方のいわゆる国鉄志免炭鉱事件の第一回勾留理由開示の際の状態でございますが、国鉄労組行動隊約三百名を先頭に、支援労組員約二千名がジグザグデモを行ないながら正門から来庁いたしましたので、拡声機を通じましてデモ隊に自粛方を呼びかけましたが、労組員らは制止を聞き入れませんで、前庭において約十五分間にわたってデモを行ないました。開廷後、弁護団側から、被疑者六名に対する勾留理由開示の併合請求がございまして、裁判長はこの併合請求を却下いたしまして、被疑者一名に対する理由の朗読に入りましたが、弁護団側は、裁判の公正を欠くというような理由で裁判長及び陪席裁判官に対する忌避申し立てを前後六回に及んでいたし、また、異議申し立て四回をいたしております。で、これらの却下決定に対しましては、公判進行に違法性があるというような理由で即時抗告を、これまた前後六回に及んで申し立てをいたしておるようでございます。さようなことで午前中は過ぎまして、午後、開廷後、裁判長はさきの弁護団側の併合請求を一応いれまして、すでに勾留理由開示の済みました被疑者一名を除く、他の五名を入廷させました上で勾留理由の開示をいたしましたが、この間、法廷内の被疑者、傍聴人席から公判中に「そうだ」などと、弁護人あるいは他の被疑者らの発言の際にその発言を支持して、やゆ嘲笑の意味を含めたような不当の言動に出る者がありまして、特に、先ほど申し上げた忌避申し立ての際には一時騒然となりましたが、いずれもそのつど裁判長または警備員の注意によって、公判進行を阻害するような現実の事態は発生いたしませんでしたが、法廷の内容は相当喧騒をきわめたということになっております。
 それから、秋田地方の全林野の合川事件と称せられるものでございますが、これは第一回公判の模様でございまして、八月の二十七日に行われましたが、抽せんによりまして傍聴券を発行いたしましたところ、これはあらゆる場合にさような方法をとっておるわけでございますが、傍聴人はその方法について最初不満を述べ、また、警備員との間にも若干の紛争を起こしたわけでございます。で、法廷におきましては、傍聴人があるいは拍手、あるいは声援をもちまして被告人を迎え、裁判長の再三の注意によってようやく静まりましたが、人定質問に先立ちまして、弁護団側から、営林局、警察庁、検察庁に対し事前に傍聴券を交付したのではないか、あるいはまた、傍聴者の中に私服警官や検察庁職員が公務として入っている。あるいはまた、それらの傍聴は違法性があるというような、いろいろな質疑、これに対する応答が重ねられまして、次いで起訴状朗読後、弁護団の起訴状朗読に対する釈明を相当時間にわたって弁護団から求めまして、罪状認否に入らぬままに閉廷をいたしました。なお、法廷外におきましては、約五百名の労組員が……。

発言情報

speech_id: 103315206X00519591211_024

発言者: 樋口勝

speaker_id: 15424

日付: 1959-12-11

院: 参議院

会議名: 法務委員会