岸信介の発言 (本会議)
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○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
第一の、国際情勢をどういうふうに判断しておるか、いわゆる雪解け論というものをどういうふうに考えておるかということであります。われわれが大事なことは、国際情勢を分析する場合に、希望と現実とを混同してはならぬということであります。(拍手)私どもが世界の平和を願い、また、国際間の、東西両陣営の間の緊張を緩和したいというその念願、希望ということと、現在どういう状態に国際間があるかというこの現実とは、決して混同してはならないのであります。(拍手)昨年来、東西両陣営の巨頭の間の往復が盛んにありまして、東西両陣営の間において解決のできなかった問題を、話し合いの形において解決しようという努力が払われるようになっていることは、私ども、国際緊張緩和の上から非常に望ましいことであります。ぜひそれを成功せしめなければならぬと思います。しかしながら、現在、そういう問題が円満に話し合いがいって解決できるというような国際情勢、現実の情勢であるかどうかということは、これはまた、おのずから別の問題であります。すでに御承知の通り、ベルリンの問題にいたしましても、両陣営の主張は、一歩もお互いに譲っておりません。また、軍縮の問題や核兵器の問題につきましても、長い間会議が行なわれておりますが、その前途も、必ずしも非常に楽観し得るような簡単な状態ではないと私は思います。(拍手)しかし、われわれがそれに向かって努力し、それのりっぱな結果を生むようにわれわれが協力すべきことは、これは当然でございます。(拍手)こういう見地に立って国際情勢を判断してみますると、何といっても、今日の東西両陣営の対立は、共産主義の陣営においては、共産主義の国がしっかりとした団結を持っており、これに対して、自由主義の国々も強固な団結のもとに、両陣営が話し合いをしてその間の問題を解決していこうというこの情勢に対処して、自由主義の国が、理想を同じくし、進路を同じくしておる国々の間において、いろいろな地域的な安全保障の体制をとり、また協力して、おのおのの平和を守るということは、国際の現実からいって、それを廃止しなければならぬというような情勢にはまだまだきておらないのであります。(拍手)われわれは、将来、国連において安全と平和を守るところの機構ができて、それに安んじて自国の安全をまかし得るというような事態がくることを望みますけれども、しかし、それができますまでの間は、やはり、自国の安全を現実に即して守るということが、政治家の国民に対する当然の義務であると信じております。(拍手)
軍縮問題に関して、フルシチョフ首相が、昨年、完全軍縮提案を国連においてなされ、その目標が、いわゆる軍縮交渉の究極の目的であって、ぜひ完全軍縮が世界にできることを、われわれも望んでおるものであります。しかしながら、軍縮の問題は、その目標ではなくして、——目標はだれも異存ないのです。ただ、目標に達する道程として、いかにして軍縮を行なうか、その間における均衡のとれた力をどういうふうにしていくか、あるいは管理制度をどういうふうにして、そうして違反の起こらないようにこれをしていくかという問題が解決されない限り、軍縮の問題は解決できないというのが、従来からわれわれが経験したところであります。従って、私は、これを単にフルシチョフ首相の宣伝であるとかなんとかとは申しませんが、はたしてこの軍縮ができるかどうかということは、従来ソ連が軍縮の会議において示しておるような態度と違って、現実に均衡のとれた軍縮、また有効なる管理制度というものに対して、従来の主張を捨てて、実際の実行できる案を提案されることが、この軍縮問題においてソ連に期待したいところであります。(拍手)
また、一月十四日のソ連最高会議において通常兵力の三分の一の削減が発表されて、これが直ちに軍縮への誠意の表明としていろいろいわれておりますが、私は、必ずしもこれを手放しで歓迎ばかりはできぬと思う。なぜなれば、フルシチョフ首相が、その同じ演説の中で、ソ連の国防兵力は著しい程度においてロケット及び核兵器に切りかえられておる、また、ここに提案した兵員の削減案はソ連の火力を少しもそこなうものではないという演説をしているところから見ましても、私は、それが直ちに軍縮に対する具体的の誠意を示すものとは言えないと思うのであります。
また、軍縮と自衛隊や米軍基地との関係について御質問がありましたが、将来、軍縮が、重要な国の間——今行なわれておる十ヵ国会議においてその成案を得、各国がこれに従って軍縮を行なうということができるならば、われわれは、当然その軍縮計画に積極的に参加して、それに基づいた必要な国内における措置をとることは、これは当然にやらなければならぬと思う。しかしながら、それができるまでの間、各国がおのおのその国力と国情に応じて自衛の措置をとるということは、国民の安全をはかる政治の目標から言えば、私は当然やらなければならぬことであると思う。(拍手)決して矛盾するものではございません。
それから、新安保条約の締結は、ソ連や中共の関係が非常に悪化するという問題でございます。この安保条約の内容は、御検討いただけばはっきりしているように、国連の憲章に違反したような侵略行為が行なわれない限り、この新安保条約の防衛に関する規定は発動しないのであります。従って、その意味は、われわれのこの独立と平和を守るところの防衛的の性質のものでございまして、いかなる国をもいわゆる仮想敵国としておるものでないことは、この条文をごらんになれば、きわめて明瞭でございます。(拍手)これに対して、従来、ソ連や中共から、安保条約反対のいろいろな声明や、あるいは最近のごとき覚書等によりまして、日本国内に国論の分裂を策するがごとき行動が行なわれていることは、私ども非常に遺憾とするところであります。(拍手)言うまでもなく、独立国がいかなる外交方針をとるか、その国がいかなる方法によって安全保障の道をとるかということは、独立国として、その国民が自主的に決定すべき問題でありまして、他国の干渉や脅迫によってこれを変えるべき性質のものではないと私は確信しております。(拍手)いわんや、ソ連が従来そういう態度に出られ、また、今回、グロムイコの覚書によって、従来、国際法上、日ソ間に約束されたところの領土の返還の問題に関する約束を一方的に変更するとかいうことは、私は、際条約の観念として許すべからざることであると思うのであります。(拍手)もとより、自主的な立場から安保条約を調印する場合におきまして、そういう理不尽な抗議がソ連からなされるということは、私どもは予想しておらなかったのでありますが、あくまでも、日本としては、自主的立場でこの安保条約を進めていくことが必要であると私は考えております。(拍手)
また、東南アジアに対して、何らか安保条約の調印が脅威を与えておるとか、あるいは危惧を与えておるというふうな御意見でありましたが、東南アジアにおける経済開発に対して日本が積極的に協力するということは、東南アジア諸国がいずれも希望しておることでありまして、決してこの安保条約ができたことによって危惧を与えるような事実はないのでありまして、最近の東南アジア諸国におきましては、いろいろの点において、むしろ最近の中共政府の行動に対して、いろいろな危惧を持っておるというのが現状であります。(拍手)私どもは、あくまでも自由主義の立場で、これらの国の繁栄のために今後も積極的に協力をするつもりであります。
また、ソ連との間の漁業問題や貿易の問題は、われわれは、安保条約とは何ら関係のない問題でありまして、漁業協定に基づくところの漁獲高の問題は、あくまでも科学的基礎によってこれを進め、また、日ソの間の貿易を進めることによって日ソの友好関係を進め、両国の繁栄に資するということは、私どもが一貫して考えておることでありますから、これはもちろん今後も進めていかなければならぬと思います。
また、従来もしばしば論ぜられておることでありますが、社会党とわれわれの外交政策の違いは、われわれは、あくまでも自由主義の立場を堅持して自由主義の国々と提携をし、また、日米が真の協力関係によって日本の繁栄と安全をはかっていくという基本の方針をとっております。これに対して、いわゆる積極的中立政策をとれという社会党の主張でありますが、私どもは、最近のインドの事情をごらん下さってもわかるように、いわゆる中立政策なるものが、実際その国の安全とその国の繁栄をはかっていく上から見ますと、現実的に望ましい政策でないということは、きわめて明瞭であります。(拍手)
次に、安保条約の批准の前に国会を解散しろという御意見でございます。この点に関しましては従来もしばしば論ぜられておることでございますが、われわれが調印をいたしました新安保条約は、現在あるところの安保条約の体制を基本として、これが成立以来、国民も不満とし、また、各方面から批判を受けておったような不平等性を改めて、真の日米協力によるところの対等性を持とうということでございます。また、最近行なわれましたところの選挙におきましても、しばしば、この問題を題目として、社会党方面はこれらに反対の議論をあげられ、われわれは、これをあくまでも貫くという意味において選挙も行なわれておりまして、今日解散して国民にさらに意見を問わなければならない事態とは私は考えておりません。(拍手)
最後に、世界平和に対する私の信念をお尋ねになりましたが、これは、私がしばしば申し上げているように、われわれは絶対に戦争を避けなければならない。われわれ自身が戦争に巻き込まれることがないと同様に、世界のどこにも戦争のないような平和の事態を作り上げなければならない。そのためには、われわれは、国連を中心として、世界の平和を進めるようなあらゆる協力をしていかなければならない。しかし、もちろん、そのわれわれが平和を願うということと、先ほど申し上げましたように、国際の現実というものとを混同してはならないのでありまして、われわれは、責任ある政治家として、やはり、現在の現実に即して日本の安全と国民の平和とを守ることについて、それに必要な手段を講ずるということは、世界の平和をわれわれが念願しておることと少しも矛盾するところではなくて、むしろ、そうすることが正しいと私は信じております。(拍手)
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