岸信介の発言 (本会議)

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○国務大臣(岸信介君) 最近、私がアメリカをたずねてアイゼンハワー大統領と会見して、国際情勢の分析をいたしたのでありますが、国際情勢に対する認識が、この会見によって私が異なったかどうかという御質問であります。言うまでもなく、今日、国際の情勢が、話し合いによって問題を解決していこう、国際的緊張を緩和しようという努力があらゆる面において行なわれていることは、これは非常に望ましい、歓迎すべきことであります。しかしながら、一方、ベルリンの問題をとらえてみても、あるいはアジアの各地域におけるいろいろな問題を考えましても、局地的に武力をさえ用いるような事態、紛争が今日起こりそうな情勢もまた起こっているような点もあるのでありまして、問題は、現実とこの希望とはやはり混同してはならないのでありまして、われわれは、一面において、そういう国際緊張緩和のために根強い努力を続けるとともに、やはり現実に即してわれわれの安全と平和を守るところの体制をとっていく必要がある、それには、共産圏というものは、かたい団結のもとに立っておるので、自由主義国もやはり十分な協力と強固なお互いの団結をはかっていく必要がある、かように私は終始考えておるのでありまして、アイゼンハワー大統領の国際的認識もまた同様な見地に立っておるのであります。
 また、この安保条約は、将来防衛力の増強になりはしないかという点についての御質問でありますが、新安保条約によってわれわれは防衛力を増強する義務を負うのではございませんで、われわれは、日本の防衛力については、自主的に、日本の憲法の範囲内において、国力と国情に応じてこれを漸増していくという防衛の根本方針を将来も堅持していくのでありまして、この点は新条約によって何らの変更を受けるものではないのであります。(拍手)
 また、新安保条約に調印することは、世界の軍縮と逆行するのじゃないかという御質問であります。私どもは、軍縮の問題に関しましては、すでに国連を通じてこれが実現するように努力をいたして参っております。いわゆる十カ国会議におけるところの話し合いも行なわれておることは、御承知の通りであります。ただ、私どもは、一日も早く、各国の承認するような、均衡のとれた、しかも、十分有効な管理制度のもとにこの軍縮が最後の結論に達することを願いますが、しかしながら、それまでの間、どの国といえども、軍縮の声だけで決してすべての国が防衛を廃棄しておるのではございませんことは、御承知の通りであります。従って、その範囲内において、われわれが国力と国情に応じて自衛力を持ち、また、日本の安全をはかるのに、日本と同じような政治・経済の基盤に立っておる国と協力してやっていくということは、今日まだ国連の安全保障機構が完備しておらない時代におきましては、これは必要にしてやむを得ないものであると私は考えております。
 次に、事前協議の問題でありますが、言うまでもなく、この交換公文において、一定の事項を日米間の事前協議の主題とするということを定めておりまして、この協議が成立するためには、両方の合意が必要でございます。協議の途中において、われわれがこれに同意する場合もあれば、また、反対をする場合もあるのであります。反対をした場合は、合意が成立しないのであります。しこうして、問題は、アメリカが日本の意思に反して行動をしないということは、交渉の途中において十分に両当事者の間に了解があったことであります。しかし、この点について不明瞭であるという疑いもあったのでありますが、今回の私のアイゼンハワー大統領との会談におきまして、その点を明瞭にしたのであります。もちろん、これは、本質におきましては、事前協議とするということを定めました交換公文そのものの解釈の問題であります。従いまして、これによって従来論議されておったところの不安は私は一掃されたものだと信じております。(拍手)
 次に、私や藤山外相のとっておるところの自由世界との連携において、われわれが提携を強化して日本の繁栄と平和をはかっていくという考え方は、それは外交の基調としては安易な考え方であって、むしろ、中立の政策をとって、冷戦不介入、どの陣営にも結びを持たないということが望ましいじゃないかというお話であります。われわれは、もちろん、自由世界に立っておりまして、自由世界との政治的、経済的あるいは防衛的な意味の提携を強化していくことが日本の繁栄と平和に必要であるという考えに立っておるのでありますが、これが安易であるかどうかということは、むしろ、水谷君のおあげになっておるような世界の情勢から考えてみまして、いわゆる中立政策をとるというようなことによってその国の安全が保たれると考えることの方が、私は、現実問題として、むしろ安易な考え方であろうと思う。(拍手)そういうような国際情勢ではないのであります。従いまして、われわれは、われわれのとっておる外交が、過去においても日本の安全と繁栄に貢献しておるし、寄与しておるし、将来においてもこれは間違いでないという確信に立っております。
 安保条約を段階的に解消するということが民主社会党の御主張であります。それについてのいろいろな内容的の御提案、御指示もあったようでありますが、しかし、私どもは、この安保条約によって日本がアメリカと協力して日本の安全を守っていくということが、現在の情勢においては最も時宜に適しているものであるという見解に立っております。たとえば、今おあげになりました中の一、二を申しますと、米韓、米比のような、一年の予告でいつでも廃止できるようにしておいたらいいじゃないかというような意見は、こういう、お互いが信頼と理解の上に立って真の協力をしていくということであるならば、むしろ、私どもは、一定の安定した期間を持つことが望ましいのであって、そういう点は、米韓、米比と日米の関係はおのずから違った関係に立っておる、こういうふうに考えております。(拍手)こういうような意味におきまして、今日におきましては、私どもは、段階的に解消しようという見解をとっておらないのであります。
 次に、新安保条約に対するソ連の抗議の点についての御質問であります。これは、言うまでもなく、私どもは、先ほどもお答えを申し上げましたように、日本がどういう外交政策をとるか、また、安全保障体制としてどういうものをとるかということは、日本国民みずからが自主的にきめる問題であって、他から干渉を受くべき性質のものではない。(拍手)また、ソ連が、日ソの間に正当に結ばれた国際条約である日ソ共同宣言のうちの歯舞、色丹に関するこの条項を、外国軍隊が撤退するという新たな条件を付して、一方的にこれを変更しようとすることは私どもは、国際条約の性質からいって、許すべからざることである、こういう観点に立っております。(拍手)そういう理不尽なことを言ってくるのに対して口実を与えたではないかという御質問でありますが、私ども、理不尽なことを言うのは、これは言葉通り理不尽なのですから、口実も何も、そういう間違った横車を押すということに対しましては、やはり、正しい国際的正義と信義の上に立って、あくまでも抗議していくことが当然であると思います。(拍手)
 また、漁業問題については、御承知の通り、これは漁業協定によって、年々科学的根拠によってその漁獲数量を両方の委員が話し合ってきめるということになっておるのでありまして、この協定の趣旨に基づいて、わが方から委員を出しまして、モスクワにおいて会議をしていくのであります、その態度は少しも変わっておりません。また、日ソ平和条約の問題につきましては、言うまでもなく、領土問題に関して従来両国の意見の相違のために平和条約が結ばれないのであります。私は、今日の状況においても、遺憾ながら、まだ領土問題について両国の意見が一致するとは思いません。最近、歯舞、色丹についてすらああいう抗議が申し出されることでありますから、われわれが主張しておる国後、択捉、あるいは社会党の諸君は、さらにそれに樺太や千島全体の領土の返還を求めておられるのでありまして、そういう見地から申すならば、決してソ連がそれに応ずるような情勢ではございませんので、平和条約はまだ締結に至らない段階であると思います。(拍手)
 次に、予算の編成権の問題についての御質問であります。言うまでもなく、予算の編成につきましては、政府が責任を持って編成をして国会に提案すべきことになっておるということは、御指摘の通りであります。ただ、問題は、政党が従来国民に公約しておったり、あるいは選挙の際に国民に向かって約束をしたような政策をいかにして予算に組み入れるかということは、やはり、政府としても、政党内閣として当然考えなければならないことであります。従って、政党との間において十分編成の途上において話し合いをしていくということは、これは当然であります。その途中において、あるいは日数がよけいかかったとか、いろんな議論が一部中間的に報告されて、いろいろな疑惑を与えた点があることは遺憾でありまして、これらの点については将来十分考えていかなければならぬと思いますが、本質としては今申したような関係に立つことは十分御了承願いたいと思います。
 補正予算につきましては、もちろん、必要やむを得ないものは、そのつど補正を出して、そうしてやっていかなければならぬことは、政府の責任であると思います。今回提案いたしております第三次補正予算も、全く必要やむを得ないところのものに対して、必要の限度において補正を出したものであります。
 それから、議会主義についての御質問であります。議会政治、民主政治というものは、言うまでもなく、十分に案件の審議を尽くすべきものである、本会議あるいは委員会等において十分に審議を尽くすべきものであって、その審議の結果は、多数決によってこれをきめるということが、私は議会主義の根底であると思います。従いまして、議案の審議は十分に尽くしていくことは当然であります。やらなければならぬ。しかしながら、水谷君も言われたように、審議権を放棄するということは、議員としての職責を尽くさないことでありまして、そういうことをしないということを言明されたことは、きわめて力強く感じたところであります。(拍手)私どもは、今申すように、審議は十分尽くすということを申しております。また、水谷君は、審議権を放棄することはないということを言明されておるのでありまして、従って、私は、単独審議というような事態は絶対に起こり得ないと考えております。(拍手)
 また、解散の問題につきましては、従来しばしば論ぜられておるのでありまして、いろいろな御意見もございますが、私もしばしば明瞭にお答えを申し上げておりますように、今日の段階において解散する意思は持っておらないということを重ねて申し上げておきます。
 その他の点につきましては、各大臣よりお答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 103405254X00419600202_013

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1960-02-02

院: 衆議院

会議名: 本会議