菅野和太郎の発言 (本会議)
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○国務大臣(菅野和太郎君) ただいま、佐藤大蔵大臣から、三十五年度の予算の基本になりました今後の経済の見通しについて確固たる信念を申されましたので、私がもうそれ以上つけ加える必要はないと思いますが、なお念のために、神武景気のときと昨年来の日本の経済の動向とが全然違っておるということを、数字的に御説明申し上げたいと思うのであります。
たとえば、稼働率について申し上げますと、神武景気の最低のときが昭和二十九年の九月であったのでありまして、それが、いわゆるピーク、八〇%に達しましたのは、三十一年の九月であります。その稼働率の増加率は二一・一%でありまするが、昨年来の情勢を見ますと、三十三年の九月が稼働率の最低であり、昨年の九月が稼働率のピークでありまして、その稼働率の増加はわずかに五・三%であります。また、物価水準は、二十五年の六月十八日を一〇〇といたしますと、三十二年の四月が一七八・四でありまするが、昨三十四年十二月が一六五でありまして、これによっても、物価が神武景気のように暴騰していないということがおわかりになると思うのであります。なお、物価の変動の先駆である鉄鋼、繊維の関係を見ましても、神武景気のときには非常な暴騰をしたのでありますが、昨年来、鉄鋼、繊維はむしろ下がりぎみなのであります。なお、国際収支について申し上げますと、神武景気のときは、三十一年の後半から経済が拡大したのでありまして、これに随伴いたしまして、三十二年から輸入が急増いたしました。毎月赤字であったのでありまして、上半期だけで四億九千四百万ドルの赤字となっておるのであります。しかるに、昨年の状況を見ますると、毎月黒字でありまして、昨年、年間の黒字が三億四千五百万ドルということに相なっておるのであります。なお、かくのごとき赤字を生みましたのは、輸入が急増した結果でありまして、三十二年の五月では四億五千三百万ドルの輸入を見たのであります。昨三十四年の十二月が一番輸入が多かったのでありますが、それでもわずかに三億七千三百万ドルでありまして、これによって、神武景気の経済事情と昨年来の経済事情とが全然違っておるということを一つ御承知を願いたいと思うのであります。
要するに、経済は非常に平穏に越年しておりまして、このままことしも平穏な数量景気を呈すると考えておるのであります。しかし、お話の通り、過当な設備投資とか、あるいは銀行の貸し出しの要求も相当多いのでありまして、これを決して手放しで見ておるわけにはいきません。従いまして、金融面から、あるいは業者の自主調整によって、こういう景気の過熱を来たさないように、われわれといたしましては、できるだけそういうことを願いたいと思っておるのであります。
次に、貿易・為替の自由化の問題についてお話がありましたが、お話の通り、貿易・為替の自由化をやりますると、これはいろいろ問題が起こってくるのであります。従いまして、貿易・為替の自由化につきましては、去る一月十二日の貿易為替自由化促進閣僚会議におきまして、初めてこの自由化の大方針を決定いたしたのであります。そうして、いよいよこれを具体化するにつきましては、五月末までに各省で具体化について策定してもらうということになっておるのでありますが、申すまでもなく、目標、時期、あるいは所要の対策などについては、慎重にこれをやらなければ、いろいろの方面に影響を及ぼすと思うのでありまして、お話の通り、あるいは農業方面、あるいは労働者方面についても、決して私は影響ないとは考えられない。しかし、自由化ということを手放しでわれわれは実現しようとは考えていないのでありまして、それらに及ぼす影響をできるだけ少なくして、そうして、国民全体の生活向上をせしめるような自由化を実現していく、こう考えておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕