岸信介の発言 (日米安全保障条約等特別委員会)

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○国務大臣(岸信介君) 十九日から二十日にかけまして——正確に言えば、二十日の未明に会期延長されたのちにおいて安保に関する採決をいかなる意味においてやったかという点でございます。この点に関して世論の中におきましても、疑問を持つ者が少なくないことも御指摘の通りであります。特に会期延長というものは、慎重審議の期間を持っために会期を延長したのじゃないか。そうするというと、慎重審議のために会期が延長された以上は、これに対して慎重審議を重ねて、他日に本案の採決をしたならばいいじゃないかというのが、常識的の世論の根拠になっております。これを一挙にやったことは、あまりに強行すぎたじゃないか。法律的には有効であろうけれども、実際に妥当を欠いておる。われわれがどうも納得できないところであるというのが、その考え方であります。
 この二つの案件を本会議においてどういうふうに扱うかという問題と、それからその前提となる本案を委員会においてどういうふうに扱うかという問題があるわけであります。先ほどもお答え申し上げたように、この問題に関しての審議は、特別委員会における審議だけでも百余日、百数十時間をかけての審議で、ほとんどいまだかつてない未曽有の審議が続いている。しかして、その内容を見まするというと、同じ質問が繰り返されておるにすぎなくて、名を慎重審議にかって、事実は審議を引き延ばして、そうして与党の望むような安保条約の成立を阻止するという一つの戦術として慎重審議が言われておったというような、委員会における審議状況であったことは、これは委員その他関係する人たちがひとしく認めている事態でございます。従って、すでに質疑の打ち切りの前日あたりから、野党の質問は、いろいろの計画があるようにも伝えられておりますけれども、事実上質問が打ち切りにふさわしいような事態が数回現われておったというのが現状でございます。そこで、当日これの打ち切りをし、そうして採決をしたということは、委員会としては、私は当然の処置であったと思います。しこうして、その際にある種の混乱があったことも事実であります。これは、しかしながら、社会党が従来自分たちの意見の違う案に対して、その採決について常にとっておるところの行動と同一であるにすぎなかったのでございます。しからば、これを本会議においてどうして同時に決定したかという問題につきましては、当日、議長は、この二つの案件について、まず会期の延長を各党が、内府に反対するか賛成するかは別として、正常に本会議を開いてこれの議決をするならば、本案の採決は他日に延ばそうと、これを分離しようという提案をされたのであります。わが自民党におきましては、これに同意をいたしました。しかし、野党はついにそれを同意しなかった。すなわち、一方において、慎重審議を唱えながら、慎重審議に必要な会期の延長にすら、身をもっても、暴力をもっても、これを阻止するというのが野党の意思であって、決して慎重審議を尽くすという意思のないことは、これをもっても明瞭であった、当時においては……。
 それからさらに、この安保条約に対する最初から野党の考えは、先ほど青木委員の御指摘のように、これはいろいろな機会において公然と、いかなることがあっても、合法、引合法を問わずこれを阻止するのだということは、あらゆる機会において公言されておったことでございます。そうしてその一部がこれらの状況に現われたということは、事実上きわめて明らかであります。しかして、当品の状況を見まして、慎重審議をする根低となる会期延長に、あれほどの妨害、先ほど来のお話のような、不当なる、不法なる行為でもってこれが妨げられ、国会政治としては望ましくない警官を導入して、秩序を維持し、廊下をあけなければならぬというふうな事態が生じて、そうして、しかも、議長はなおその上にけがをするというような事態すら、いまだかつてない事態すら起こっておる。こういう事態のもとにおいて、そうして野党の意思ははっきりしておる。慎重審議する意思もないし、また実質的に言って、慎重審議ということはただ議事の引き延ばしにすぎないということが事実上の審議において明らかになっておるという状況のもとに、また将来、本案を別に審議採決しても、必ず同様な方法によってこれを阻止するだろうということがきわめて明瞭な見通しがつき、その場合においては再び警官を入れるのでなければ本案の採決ができないであろうということは、あのときの状況から見るというとだれもが当然それであろう。そうして警官を入れるということは、これはやむを得ぬ手段ではあるけれども、今、青木委員のお話のように、たび重ねてこれをやることは決して望ましいことではない。こういう見地から考えますというと、どうしてもこれを成立させよう、私は、成立させることが国のためであり、国民のためであるという信念に立つ与党としては、あの状況において、また野党の意思がかくのごとく明瞭なる場合におきまして、これを同時に採決して、そうしてそういう事態を繰り返すことがないように、警官を入れるということを繰り返すことのないように処置するということは、当時の状況からいってはまことにやむを得なかったことである。かように考えます。

発言情報

speech_id: 103414961X00419600609_017

発言者: 岸信介

speaker_id: 6788

日付: 1960-06-09

院: 参議院

会議名: 日米安全保障条約等特別委員会