藤田藤太郎の発言 (本会議)

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○藤田藤太郎君 私は、ただいま議題となりました失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党を代表して、反対の態度を表明するものであります。
 まず第一は失業保険の意義であります。労働者が社会生活の中の一員として、自分の持つ労働力を物の生産を通じて社会に貢献をする、この労働者が、いずれの社会においても、自己の都合以外によって社会に貢献する場所から離れ、すなわち失職したとき、失職を通じて生活の道が断たれたときには、国が政治施策として、次の働く場所を作り、また次の労働につくまでは、国や社会がその労働者の生活維持に責任を持つという建前でなくてはならないと思うのであります。生産手段の機械化やオートメーション化は、それが人間の生活向上につながる限り推進する必要があるでしょう。しかし、生産力をつかむ者の意思のみによって、自己の利益のみによってこれが推し進められる限り、国民生活の向上もあり得ないし、国の経済的繁栄もあり得ないのであります。社会保障は富の再配分でありましょう。しかし、これは国家の経済的繁栄につながるのです。これが忘れられて政治が行なわれているところに根本の問題があります。日本の基幹産業、大企業に対する政治の保護は、数限りありません。勤労国民の零細な貯蓄や社会保険の積立金から長期低利の融資を受けております。いまだに租税特別措置法によって一千億に達する免税措置が行なわれているではありませんか。日本経済発展のための当然の社会保障推進でなければならないのに、名ばかりの社会保障に終わっているのであります。直接、生産に関係する労働者の再生産のための失業保険の改善充実は、当然のことと言わざるを得ません。日本国憲法は、第二十七条で、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」、第二十五条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と明記しているのであります。このような人間社会生活の原則は、ひとり日本のみならず、世界各国が完全雇用や最低生活保障の最低賃金制を競って実施しており、また国政の第一義として努力していることは、言うを待たないのであります。日本においては、本来、社会保障制度の一つとして実施すべきものを、失業保険法として昭和二十二年に立法され、今日に至っておりますが、法自身に多くの検討を加える問題を持っているのであります。
 その一つは、中心が労使の相互扶助にゆだねられ、保険経済のみを気にかけて運営してきたということであります。多くの失業者が出た場合においても、きめられた保険給付以外に振り向こうとせず時を過ごしてきました。保険財政中心主義は、長期失職した人がどのような生活状態にあるやの配慮を怠り、国は失業者の就労対策についても実効をあげておらず、また生活面においても保護をしていないということであります。
 その二は、労働者五人未満雇用事業所に失業保険を適用していないことであります。三十三年より五人未満事業所は任意適用になっておりますが、政府の概算推計によっても、五人未満事業所に二百四十万人も働いていて、適用になっているのは十四万六千人、全体の一〇%にも達していないのであります。本来、法の発足にあたって、五人未満事業所の労働者を除外したところに問題があるのであります。同じ労働者で、五人未満事業所に働いているために、社会保険制度よりはずされ、なおまた失業保険よりはずされていることは理解できないところであります。永年わが社会党が、一切の被用者社会保険に、五人未満事業所に働いている労働者に適用することを主張してきましたが、しかし政府はこれに反対してきました。その反対理由に、保険経済が赤字になるというのであります。保険料の徴収を、賃金報酬に一定の率を乗じて保険料をきめることになっておりますから、賃金報酬が安いから保険料が安い。また、政府は中小零細企業の保護育成を怠りながら、その企業の不安定、雇用が不安定であるから支出増になるというのであります。それこそ全く逆でありまして、政府は、企業を育てると同時に、そこに働く労働者の所得を高めて、その労働者の生活を守るのを第一義とし、そうして段階的に高めていく過程においても、低所得者には特別の給付の面で保護していく、これこそが失業保障の建前でなくてはならないのであります。
 その三は、長期の失業者に対する保護であります。社会主義国やニュージーランドにおいては、再就職するまで失業手当を支給する仕組みになっておりますが、その他の工業国においては時限給付であります。しかし、完全雇用政策がとられ、それらの国の失業者は職場転換よりくる摩擦失業者であります。日本のように、一度失職すると働く職場がほとんどの人には見つからないのとは大きな差異があります。景気のよいときですら、失業をした人の再就職率は、九カ月もして五〇%に達していないのであります。また失業者統計には表われてこない不完全就労者、潜在失業者は、七百万人を数えております。この人たちは年々増加していきますし、最低きりきりの生存を続けているのであります。この方々を保護しなくてはなりません。長期の失業者には失職中の生活の保護をしなくてはなりません。さしあたり、保険財政のよいときに、再就職の場を作るまでの給付期間の延長を考えるべきだと思うのであります。
 その四は、日雇労働者の問題であります。日雇労働者が失職したときは、その月において通算五日、継続三日以上失業した場合のみ保険金を支給することになっております。しかし、日雇労働者は仕事の面で事業効果を上げるように要求され、働いておりますが、賃金は安いのであります。一般地域の賃金の八〇%から九〇%に緊急失業対策法できめられております。これも、賃金は労使対等の立場できめるという労働基準法の原則よりはずれて、当局の一方的決定になっているのであります。平均三百二十四円でありますから、一カ月中に二十日間働いたとしても六千六百八十円にしかなりません。失業して夫婦で働きたいとしても、適格審査で妻ははずされております。このような状態にあるのに、その月の失業通算五日、継続三日以上にならないと失業手当がもらえないとは、あまりにも酷な仕打ちと言わざるを得ません。なおまた、失業保険金の額でありますが、ニカ月間に二十八日の印紙を張らなければ保険金がもらえない、それも一級、二級と分かれていて、日給二百八十円以上の人二百円、それ以下の人は百四十円であります。一日この保険金で生活せよというところに無理があり、家族の生活を守ることはできません。日雇労働者の保険給付の待期期間の撤廃と、保険金の引き上げを直ちにしなくてはなりません。給付内容改善の例でありますが、アメリカでは、三年前、多量に失業者が出たとき、大統領命令で、失業手当二十六週を二十九週に増給する措置をとったことを思い起こすのであります。失業保障の本来の姿は、失業者の救済である限り、これが労働者の生活につながる限り、他を見てわが国を振り返り、政治の貧困を嘆くものであります。
 第二の問題は失業雇用問題であります。一たび失業した多くの人が再就職していないという現状は、失業者の累積が高まるばかりであります。それのみか、一週に一時間以上働いた者は、その労働者がどんな生活をしているかも調査せず、失業者でないというのに至っては、何おか言わんやであります。雇用関係を見ても、使用者は安い賃金で多く働かしたい、この思想より抜け切っておりません。人を雇用するのには、どれだけの賃金を出せば労働者の生活の維持ができるか、これが雇用する者の原則でなければなりません。労働者を人たるに値する憲法に明記した精神で雇用関係を持ち、人権尊重の風習や規律を作り上げねばなりません。最近の雇用関係の調査によりますと、毎月勤労統計において雇用傾向は伸びていると言っておりますが、内容はどうかといいますと、正常な雇用関係から離れて、臨時工、社外工として雇用関係を結んでいるのが非常に多く一なっております。雇用の伸びとの関係を言うと、七〇%、八〇%はこのような不安定な雇用状態に押し込められ、所得の面から言うと、基準法六条に違反して賃金の中間搾取が行なわれているのであります。政府は、失業者の実態把握の調査機構を確立し、労働者が勤労によって人生を全うするという完全雇用政策の積極的な推進をやるべきであります。
 第三の問題は、現制度の保険経済の問題であります。累積した黒字は、本法案が改正されましても、三十五年三月現在においても七百六十億円の黒字が出るということであります。なお、三十五年度は百二十億円の黒字が見込まれております。保険経済がこのような状態にあるからといって、五人未満事業所の労働者や長期失業者、日雇労働者が困っているのに、国家負担を三分の一より四分の一に切り下げ、保険料率は二%引き下げによって事を処すのであります。このような能のない考え方は、失業保障の意義を考えても政治家としてとるべきでないと思うのであります。今日こそ保険給付の内容改善に目を向けて、失業者救済の大道を踏むかまえでなくてはなりません。使用者はともかくとして、労働者の考えは、負担の軽減はよいとしても、それより先に、失業した人の生活をみんなが分かち合って助けていこう、守っていこうという気持で一ぱいであります。被保険者、労働者がこの考え方であるのに、政府は社会保障に支出増だからとの理由でこの改正案を押し切ろうとしています。なお、本法案が改正されますと、国庫負担分は三十四年度分から三分の一より四分の一に減少され、保険料は三十五年度分より減少することになります。法改正の意思は、同時に、要するに、国家支出、保険料の減少であります。この法案が三十四年提出したから、国家支出だけは三十四年度より措置するが、保険料は一カ年多く取る、法によっているからやむを得ないと政府は言うのであります。このような片手落ちな措置は前代未聞であります。無理が通れば道理引っ込むと言いますが、当然三十五年度より実施するのなら、保険料徴収とあわせて国家負担も三十五年度より減少さす建前でなくてはなりません。政府与党は数が多数であるから、論理の一貫しないこのような措置を強引に押し切ったのであります。これは船員保険の失業保険改正にも言えることであります。政府与党の反省を強く求める次第であります。
 わが社会党は、以上申し述べました五人未満事業所の適用であるとか、長期失業者の救済であるとか、日雇労働者の給付改善を行なうこと等を含めて、今日こそ失業保険の充実をはかるべきであると考える立場より、本法案に反対の意思を明らかにするものであります。(拍手)
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発言情報

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発言者: 藤田藤太郎

speaker_id: 34120

日付: 1960-03-30

院: 参議院

会議名: 本会議