村尾重雄の発言 (本会議)
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○村尾重雄君 私は、民主社会党を代表して、ただいま提案になりました船員保険法と失業保険及び職業安定法の一部を改正する法律案について反対するものであります。以下反対理由の趣旨を申し述べたいと思います。
今日、わが国における社会保障の課題は、すみやかに医療保障制度、所得保障制度の二大支柱を完備して、全国民がひとしく社会保障の恩恵に浴するということであります。しかるに医療保障については、三十五年度に一応皆保険が達成される段階となり、所得保障については、国民年金法の制定により、昨年末より福祉年金が実施され、三十六年度より拠出年金の発足を見るに至っているのであります。これはわが国の社会保障制度にとって一大変革期に逢着したものであると言わねばなりません。かかるときにおいて社会保障の内容を改善し、改正するということは、将来の社会保障制度を律する布石となるものでありますから、その取り扱いはきわめて重要であり、慎重を期さなければならないのであります。すなわち、社会保障制度確立のために社会保障の前進を目途として取り扱わなければなりません。
こうした観点に立って、今回の法律改正案を見ますと、特に船員保険法、失業保険法においては、給付内容の引き上げ、保険料率の引き上げ、国庫負担の引き下げということになっているのであります。これは保険財政は黒字であるから国庫負担を引き下げてもいいという考え方に基づいているのであります。保険財政の観点から保険行政を見れば当然なことであると思うのであります。しかし、わが国の社会保障の中核をなしている社会保険が、いたずらに保険主義によって律せられるということであれば、社会保障の前進はあり得ないのであります。従来政府により一貫してとられてきた官僚的な保険主義的考え方は、社会保障の重要な今日の段階においては清算されなければならないと思うのであります。従って、国庫負担を引き下げる場合は、単に財政的な余裕という面からだけではなく、給付内容の向上、被保険者負担の軽減という保険内容の充実の面から判断されなければならないのでありまして、今回の船員保険、失業保険の改正が、いずれも国庫負担を無計画に軽減したことは、われわれが本改正案に反対する第一の理由であります。特に失業保険法改正につきましては、政府官僚の提案によるものでなく、与党議員の提案でありまして、政策的な指向を持たす、官僚的な考え方を持って立案されたことは、大いに反省をしなければならないことだと思うのであります。
第二の理由といたしまして、船員保険法の改正についてでありますが、政府案の内容は、保険料率の引き上げ、失業保険給付に関する国庫負担の軽減、年金給付の改善等であります。保険料率につきましては、疾病給付等の短期給付部門を引き下げ、長期給付部門を引き上げております。短期給付に関する料率の引き下げにつきましては、去る二十六国会において船員保険の審議の際に、一部負担制度を廃止すべきであるという附帯決議が付されているのであります。この事項に手をつけず政府が提案したことは、国会軽視もはなはだしいといわなければなりません。さらに同附帯決議には、標準報酬の最高及び最低の引き上げが付されており、これをまた取り上げられておらないことは、われわれの強く反対する理由であります。船員保険法の失業保険部門におきましては、その適用の大部分が汽船船員であり、船員の陸上と異なる特殊な事情、あるいは海運界の不況下にある現状を考えた場合、失業保険の国庫負担を単に財源との関連で引き下げるということは、全く政策に基一づいたものでないということが指摘できると思うのであります。
次に、失業保険法の改正についてでありますが、本法案は、保険料率を千分の二引き下げる、国庫負担を三分の一から四分の一に引き下げる、日雇失業者の待期、通算期日を短縮する等をその内容としているのでありますが、御承知の通り、今日の岸内閣が公約している中に、雇用の増大をうたっているのであります。これが実際やれるかどうかは別問題として、わが国経済の見通しは今日きわめて明るい方向を指向しているのであります。従って、こうした観点に立って失業対策を見た場合、その問題として取り上げられるのは、失業保険財政の黒字はますます拡大するということであります。かかる見通しに立てば、失業保険給付の金額の増額と、給付期間の延長が、今日行なわねばならぬ最大の課題であると思うのであります。
今日わが国の労働者は、経済の二重構造のもとにあって、低賃金にあえいでいる者はきわめて多いのであります。しかも、失業対策の対象となる者は、特にこうした低所得の労働者であります。彼らは毎日の生活すら困難を来たしているし、まして一たん失業した場合には、その生活のすべては失業保険にゆだねねばならないのであります。その際の失業保険の給付金が賃金の百分の六十であるということは、きわめて残酷な措置であるといわねばなりません。今日の疾病や失業が個人の責任に基づくものでなく、社会の責任によるものであることは周知のところであり、そこにまた、社会保障が推進されてきたゆえんがあるのであります。従って、失業保険の保険給付が、個人の最低生活を維持し得る金額でなければならないことは当然のことであります。ここに社会保障の一環としての失業保険の意義があると思うのであります。それを保険料率を引き下げたということで、改善案であるとしていることは、あまりにも無策に過ぎるといわねばなりません。失業保険の内容を改善する場合、考えねばならないことは、現在職についている人に対して、十の負担の軽減を行なうことより、その人が失業したときに、一をよけいに与えてやることが最も必要であるのであります。(拍手)
さらに給付期間につきましては、失業してなるべく短い失業期間で再就職ができれば、これは理想的だと思うのでありますが、逆に再就労の日まで給付が受けられるというのも、また理想的だと思うのであります。前者は雇用対策の問題として考えた場合であり、後者は失業対策の問題としてとらえた場合であります。従って、雇用対策が着々進行されている際においてはともかく、生産年令人口の急増を伴っている今日においては、とうてい期待し得ざるところでありまして、おのずから失業対策に重点が置かれ、失業保険給付期間の延長が取り上げられなければならないというのが、今日の急務であると思うのであります。こうした観点に立って、今日最も必要な施策が何ら講ぜられず、これが単に時限立法であれ、将来の社会保障制度の整備に多くの支障をもたらすものであるということを考えた場合、われわれは反対せざるを得ないのであります。
以上をもって、船員保険法の一部を改正する法律案、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に関し、反対の意を表し、討論を終わります。(拍手)