栗山良夫の発言 (本会議)
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○栗山良夫君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました輸出入取引法の一部改正案につきまして、非常に強い不満を表明するものであります。そこで、わが党が不満とする理由をあげ、首相以下関係閣僚の反省を促しながら、その所信をただしたいと思うのであります。
まず第一に、本案は貿易の自由化に名をかりた独占禁止法の間接的骨抜き法であるということであります。現行の独占禁止法案は、申すまでもなく、戦時中の経済統制の弊害を除去し、また経済力の過度集中を排除して、日本経済を民主化する、言いかえれば、官僚及び大資本の経済支配の弊を改める目的のために、連合軍の指導によってきたものであります。しかも、今日といえども、その必要性、重要性はいささかも後退をいたしていないのであります。国際的経済慣行は、国際通貨基金やガット等の動きが示しておりまする通りに、独占排除の建前でありまして、一九五八年のガット総会におけるカルテル非難決議など、その事実を物語っているわけであります。ところが、わが国の現行の貿易・為替政策は、戦後の経済に残された最大唯一の統制経済であることは、万人これを認めるところでありまするが、このたび自由化に名をかりて、本改正案によるカルテル行為を容認強化して、経済独占の強化を許しつつ、一方、政府はカルテル行為に対する認可権を握り、個々の経済行為に対する官僚統制の強加温存を策するものであるといわなければならぬのであります。かくて二重構造に悩むわが国の産業経済に一段と苦悩を加重するものでありまして、中小企業や農林水産業及び多くの勤労者の受ける犠牲は、はかり知れざるものがあるのであります。春秋の筆法をもっていたしますれば、暴力の追放を口にする総理大臣が、姿なき暴力を国民経済の上に加えるものであるといわなけれぱならぬのであります。その点に対し、首相及び経済企画庁長官の明快な答弁を求めます。
第二に、本法により独占禁止法が間接的に骨抜きになることに対し、公正取引委員会及び首相の見解をただすものであります。昭和二十二年独占禁止法制定以来、執拠に政府に圧力をかけ続けて参りました大資本の本法骨抜き運動に対しまして、貿易の自由化は巧みにそのチャンスを与えたものというべきでありましょう。昭和二十七年独占禁止法の第一回の改正に成功しながら、自来なおあきたらず、三回にわたって法の改正を行ない、あまつさえ、さらに三十及び三十一国会に改正提案を試みて失敗、審議未了、廃案となっているのであります。この経過より見れば、本改正案の提出は、貿易の自由化のために偶発的に起きた問題ではなく、政府と大資本とが虎視たんたんとしてねらっていたそのチャンスに貿易自由化が利用されたにすぎないのであります。独禁法の番人であるところの公正取引委員会は、この明白なる事実に対し、法の番人としての権威を保持するのか、政府の召使となるのか、財界のしもべとなり下がるのか、重要な関頭に立っているわけであります。公正取引委員長がこうべをたれるべき相手は、憲法であり、独占禁止法でなければなりません。この経済秩序維持に関する最高責任者として、公正取引委員長は、その権威を守るために、本議場を通じて国民にその信念を表明せられるべきであると思うのであります。なお、かかる政策の遂行は、欧米先進国に対し、通商上非常な悪影響を与えるものと考えられるのであります。ガット三十五条の援用、対日商品に対する高関税、輸入品のボイコット、MSA協定やココムの制限などの通商上の差別制度の撤廃交渉に非常な不利益を来たすのではないか。首相及び外相の率直なる答弁を求めるものであります。
第三に、政府は、わが国経済の国際的地位をどのように理解されているかという点であります。政府の経済的動向を注視しておりますると、神武景気、岩戸景気と称して、若干の好景気に目を奪われているありさまは、まさにわが国経済が欧米先進国と同格的の地位を確立しているかのごとき錯覚に陥っているのではないかと憂えるのであります。たとえば欧米先進国に比較いたしまして、一人当たり国民所得の低さ、賃金、雇用その他の労働諸条件の貧しさ、技術革新のおくれ、中小企業と大企業との質量両面よりする格差の拡大、農水産業の生産性の低さ、資源の乏しさ等々、数字をあげる時間的余裕を持ちませんが、何人もこの事実を否定し得る人はないはずであります。若干の大企業や、その系列企業の繁栄に目を奪われて、労働基準法すら守り得ないで骨身を削っている多数国民の存することを忘れることは許されないのであります。わが国経済は、このような分析からいたしますれば、欧米先進国に比較して多分に後進性を内包するいわば中進国的地位にあると申すべきでありましょう。政府の認識のほどを伺うものであります。また従って、貿易政策自体も欧米先進国とはおのずから異なった主体的立場をとるべきであると思います。十九世紀の後半、当時の後進国ドイツが、先進国イギリスの自由貿易政策に追従せず、自国産業保護の政策をとった故知に学ぶまでもなく、国際的にも、国内的にも、自主性のある独自の政策、スケジュールを必要とするのであります。かくて国内に残る後進性の強い部分を先進国並みに引き上げる努力が何ものにも優先してとらるべきであります。国内の諸事情を無視して外国の要請に無準備のまま即応するがごときは、厳に戒しむべきであります。ことに、新日米安保条約に規定をいたしました日米経済提携の実体がかくのごときものであるといたしますならば、国民の失望は想像を越えるものがありましょう。首相及び企画庁長官の所信を伺いたいのであります。
第四に、本法案提出のおもな理由を、自由化に伴う過当競争の激化に備えることとしておりまするが、このような消極的な施策では弊害のみが多く、実効をあげ得ないということであります。今日、日本経済に過当競争の悩みがあり、自由化によってさらにその悩みが加重せられるであろうその最大の理由は、生産の増強拡大に伴う内外を通じての有効需要の開拓に対してとるべき施策が欠けているところにあるのであります。特に、経済ブロックを有しないわが国が、みずから求めて中国を初め共産圏貿易を遮断して、市場を縮めて顧みるところなく、また自由化によりますます後進国貿易を後退せしめる等、弾力性を欠く態度は国民の理解し得ないところであります。特に欧米先進国に対し、中進国日本としては、ガット三十五条の援用、先ほど申し上げました対日商品に対する高関税、輸入品のボイコット等の差別制度の撤廃を強力に迫るべきでありましょう。と同時に、共産圏貿易を制限しておりまするMSA協定、ココムの制限等の撤廃につきましても、同様に努力をいたすべきであります。要するに、過当競争の排除は、本法による消極的なカルテル政策によるべきではなく、内外に広く有効需要を求める積極的かつ強力なる施策を展開すべきであると思うのであります。首相、通産及び経済企画庁長官等の関係閣僚の責任ある答弁を求めるものであります。
第五に、政府の強行しようとする貿易の自由化は、まだ正式に発表いたしませんが、三カ年九〇%というのであります。外部より求められるままに、その輪郭を示したにすぎないのであります。何ら具体的なスケジュールを持たない突然かつ無準備の行政として、本年一月以来世論の激しい非難を受けているのであります。申すまでもなく、貿易の自由化は、本来、資本主義の合理性を貫くものでありまするから、均斉のとれた経済力の強大なる国が利益をし、しからざるものが不利益をこうむることは、理の当然であります。だからこそ、その理論の上に立ってわが国の中進国的経済の実情を確認しながら、互恵平等の原則に立って国際交易を発展させること、言いかえれば、この線で貿易の自由化を進めることは、わが日本社会党も賛成をいたしておるのであります。しかるに、この重要な問題についてその認識を欠き、慎重な配慮なく、無計画に自由化に暴走することによって、中小企業や日本農業等に深刻な打撃を与えることは、私どもの断じて容認し得ないところであります。一部大資本繁栄の明日は約束されるかもしれませんが、結局、国民経済に不安と動揺を与えるからであります。
そこで、若干の点に触れて具体的にお尋ねをいたしますので、大蔵、通産、農林の各閣僚より順次御答弁を願います。
(一)政府がすでに明らかにした自由化実施の輪郭、すなわち三カ年九〇%の自由化計画は、無理をしてでもそのまま実行に移す所存であるかどうかということ、また、自由化をしない一〇%とはいかなる品目であるかという点であります。
(二)石炭、石油、非鉄金属、一部工作機械、車両、新興化学製品、農水産物等、企業の体質改善に努めましても、なお三カ年間にはとうてい国際競争力を保持し得ないとされておりまするものについても、自由化を強行するのか、あるいはまた、一部取りやめることがあり得るのか。また、強行するとすればその場合、犠牲産業に対する保護政策は一体どうなるのか。特に中小企業の近代化を通じての国際競争力確保のための具体策はどうなるのか。
(三)現在輸入禁止品目でありまする不要不急品、奢侈品の輸入許可にあたりまして、外貨予定五百万ドルに対し、七千五百件、七千万ドルに及ぶものすごい競争でありまするが、今後輸入業者のワク拡張運動に屈してこれを拡大することは絶対にないかどうか。また、明治以来の宗教的な伝統にもなっておりまする舶来品崇拝思想の一掃に対する施策は一体どうなっているのか。国産品愛用運動はどうして展開を一するのか。なお、この種の品目の中には、特定物資同様に不当利得を予見せられるものがありまするが、これに対していかなる措置をとろうとしておるのか。
(四)特定物資、たとえばバナナ、パイ罐、時計等、あるいはまた、特定物資ではありませんが、いわゆるマル特扱いとなっておりまする韓国ノリ、雑豆等、現に不当利得を生じておるものに対する具体的な措置は一体どうするのか。輸入禁止立法を行なう用意ありと報道せられておりますが、真偽のほどを伺いたいのであります。
(五)結局、自由化に伴う劣位産業の保護は、関税制度によるべきであると思いますが、一体どうするおつもりであるのか。現行の関税制度は明治四十三年の分類そのままで、九百四十余品目となっており、はなはだ不十分であります。アメリカの三千五百、スイスの五千九百等に比較いたしますれば、きめのこまかい保護関税は行ない得ないのではないか。また、五八年の実績によりまするというと、輸入総額に対する関税額の比率は、イタリアの三五・六%、イギリスの二九・六%に比較いたしまして、日本は最低三・六%であります。欧米先進国に対して最低なのであります。かくて、貿易政策の推進上、関税制度の改正は焦眉の急を要する問題でありまするが、その用意ありゃいなや。また、用意ありとすれば、今国会に提出を約束し得るかどうか。この点であります。
(六)農林大臣は衆議院において農林漁業者には不利益を来たさないことを確信すると述べられましたが、世論、特に農林水産業の当事者は、大豆の例のごとく甚大なる不利益をこうむるものとして政府に迫っているのであります。自由化をすれば現実に不利益をこうむる農林水産業に不利益を与えない具体策とは、一体どういうものでありますか。農林水産業については自由化をしないと理解してよろしいのか。
以上六点にわたり、歯に衣を着せない率直な答弁を求めるものであります。