小倉謙の発言 (地方行政委員会法務委員会連合審査会)
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○小倉説明員 淺沼社会党委員長が不慮の死を遂げられましたことにつきましては、直接首都治安の責任にある者としてまことに遺憾に存じております。つつしんで哀悼の意を表する次第であります。
本事案の概要につきましては、ただいま国家公安委員長の御説明の通りでありますが、私から若干の点について補足説明をいたしたいと存じます。
まず当日の主催者である東京都選挙管理委員会側と警察側との事前の打ち合わせについてであります。十月五日に丸の内警察署次長、警備課長その他と、都選管事務局長、選挙課長らとの間にこの打ち合わせが行なわれております。その際選管側から、警備は相当数お願いしたいが、会場内に制服で入られては困るという話があり、警察側としましても、当然のことでありますが、私服員を場内には派遣するということを伝えました。さらに選管側が、会場の整理には階下に十一名、階上に三名、合わせて十四名ぐらいで当たりたいというような話がございましたが、警察側では、会場の状況等にかんがみまして、最低六十名ぐらいはほしいという話をいたしました。そのほか会場内の整理については記者席――これは階下の一番前列の方であります。記者席のうしろの通路のところに整理員を一名ずつ配置して、そこから前へ一般の入場者を立ち入らせないこと。それから第一次的にはヤジの制止など場内の整理は主催者側が行なうこと。主催者側の手に負えないときには警察が出ること。そういうようなことを申し合わせまして、さらに当日午前中会場において、これらの事項を署長と事務局長の間で再確認をいたしております。
次に事前の情報といたしましては、十月十日に大日本愛国党の赤尾総裁が東京都選挙管理委員会を訪れまして、選挙管理委員会が三党首のみの演説会を主催するのは選挙違反である、これは事前運動であって、公明選挙を擁護するという選挙管理委員会の任務に反するものだというような抗議をいたしました。また十一日には、同人が警視庁を訪れまして、三党首大演説会は東京都選挙管理委員会みずからが選挙の事前運動を行なうものであるから、これを取り締まられたいというような要望をし、また会場へ党員を動員するというようなことを申しておりました。そのような事実がありましたので、演説会当日は愛国党員を中心に相当活発な演説妨害やいやがらせ行為が行なわれることが予想されたのであります。そこで事前に愛国党員に対しましては厳重な警告を与え、注意を促すとともに、当日特に警察といたしましても厳重な警戒態勢を行なったようなわけであります。しかしながら犯人山口二矢その他の直接行動に関する事前の情報はなかったのであります。
次は警備態勢でありますが、以上のような動向に対処しまして、丸の内警察署長は正午ごろ、現場の警備本部を内幸町巡査派出所に設け、制服警察官九十七名、私服警察官六十二名、計百五十九名をもって警戒に当たったのであります。会場内には私服の警察官五十七名が当たったのでありますが、演壇に向かって左側にたむろする愛国党員その他の者に対しまして重点的に配備いたしましたほか、場内の要所に適宜な配置をいたしたのであります。
一方場外の警備は、丸の内署制服部隊及び機動隊の一部をもってこれに充てました。なお機動隊の一部を日比谷公会堂の地階に待機させまして、不測の事態に備えたのであります。なお、主催者側の都の選管及びNHKの整理員は、先ほど申し上げましたような状況で、当日は五十九名が入口及び場内の整理に当たっておったのであります。
次に事件の概要についてでありますが、すでに国家公安委員長の御説明の通りでありますが、西尾民社党委員長に続きまして淺沼社会党委員長が演説を開始されましたのは午後二時四十五分ごろであります。愛国党員やその他の者のヤジは西尾委員長のときにも増して一段と激しくなりまして、二時四十七分ごろには二階からビラをまいて演説の妨害を行なったので、ビラをまいた者二名を検挙いたしたのであります。次いで二時五十二分ごろには愛国党員中の一名が演壇に向かって右側から壇上にかけ上がり、淺沼氏の方に向かってビラをまいたので、演壇付近の警備配置についていた私服警察官三名がこれを直ちに逮捕いたしたのであります。その後も場内のヤジは一そう激しさを加え、その間、丸の内警察署長は、演壇に向かって左側の一団の愛国党員の中で最も激しくヤジっておりました党員の一名を部下とともに検挙するなどのこともありましたが、午後三時ごろになりまして、主催者側はついに淺沼委員長に演説の中断を申し入れ、場内で喧騒をきわめている者に対しまして静粛にされたい旨の場内放送を行なうに至ったのであります。淺沼委員長の演説が再開されて間もない三時五分ごろ、演壇に向かって右側から一人の男がやにわに演壇にかけ上がり、脱兎のごとき勢いで隠し持っていた短刀のさやを払いながら、演壇中央部で演説中の淺沼委員長にかけ寄り、体当りをするような姿勢でその左胸部を突き刺したのであります。演壇の周辺で警戒に当たっておりました警察官は、当時騒然たる雰囲気の中で愛国党員その他の警戒を要する言動をなす者に対し、注意、警戒をしておりましたことなどから、犯人の行動開始の発見が一瞬おくれたのでありますが、時を移さず飛び出して犯行を制止しようとしたのであります。しかし、遺憾ながら間一髪の危機を救うことができず、折り重なって犯人を逮捕し凶器を取り上げたのであります。なお、この逮捕にあたりまして警察官三名が凶器により切り傷を受けました。
捜査の状況でありますが、犯行の直後現場において犯人を逮捕し、身柄を警視庁に引致し、直ちに取り調べを開始するとともに、捜索差し押え許可状の発付を得まして、同日午後十一時ころから翌十三日午前一時ごろまでの間に、被疑者の自宅、全アジア反共青年連盟など六カ所の捜索を行ない、メモ、ノートなど二十六種類、九十点を押収したのであります。さらに十月十三日捜査第四課の応援を得て、公安第二課と丸の内警察署との合同特別捜査本部を設置し、現在本格的な捜査に当たっております。
犯人の山口二矢は、昭和十八年二月生まれ、本年十七才の少年であり、事件当時大東文化大学中国文学科の学生でありました。同人の自供によれば、昨年五月の参議院議員選挙の際、大日本愛国党総裁の選挙演説を聞いて、その主張に共鳴し、昨年五月十日同党に入党、同党本部宿舎に起居するようになったのでありますが、その間、同党員として活発な活動を行ない、公務執行妨害、傷害、器物毀棄などの容疑で前後十数回にわたって検挙されております。その後、本年春ごろから同党内における感情的なもつれや、同党の運動について批判的となったことなどから、たまたま本年五月末脱党した他の二名の者に引き続いて同党を脱党し、その後七月一日に結成された全アジア反共青年連盟に加わっていたのでありますが、同連盟の事務所にも最近は出入りしておらなかったようであります。
さらに同人が本件を敢行する動機につきましては、警職法闘争、勤評闘争、安保闘争など、一連の大衆行動を通じ、これに強い反発と憤りを感じ、大日本愛国党のように左翼のデモ、集会などに対するなぐり込み、ビラまき等の消極的運動では日本の赤化を防止することができないと信ずるようになり、結局は左翼の指導者を一人一殺によって葬る以外には他に手段がないと意を決するに至った模様であります。
そして本年の夏ごろから日教組小林委員長、共産党野坂議長とともに社会党淺沼委員長をねらうようになったのであります。そして事件当日、たまたま新聞紙上で三党首の演説会のあることを知り、かねてねらっていた淺沼委員長をこの機会に倒そうと決意し、午後二時ごろ中野区本町通二丁目の自宅を出て日比谷に向かい、午後三時少し前に会場に到着し、受付において入場券を入手して場内に入り、機をうかがって犯行に及んだと申し述べております。
捜査本部においては、現場における目撃者等により事件の裏づけ捜査を行なう一方、参考人の任意出頭を求めて事情の聴取を行ないました。一方、犯人と深い関係にあると認められる者の取り調べや関係場所の捜索を行なったのであります。現在のところ、被疑者は単独犯行を主張しておりますが、なお厳重にその背後関係などを究明中であります。
以上、事件の概要の補足説明を申し上げた次第でございます。