柏村信雄の発言 (地方行政委員会法務委員会連合審査会)
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○柏村説明員 私から、今次事件の及ぼした各種の影響また今後の対策等につきまして、簡単に御説明申し上げます。
今回の事件は、総選挙を前にして行なわれました三党首立会演説会の席上におきまして、野党第一党の淺沼委員長が演説中に突如暴漢の凶刃に倒れられたということ、しかもこのテロ行為が一般聴衆の面前で公然と行なわれ、その状況がテレビ放送を通じて広く全国の視聴者の目に映じているだけに、全国民に対しましてなまなましい実感をもって深刻な影響を及ぼしているように存ずるのであります。そして今回の事件が、六月の河上代議士の刺傷事件、七月の岸前首相刺傷事件に次いで行なわれました三回目の右翼的人物によるテロであるために、一部には往年の右翼テロ横行時代の再現ではないかと危惧する向きもあり、ひいては右翼に対する取り締まり上の責任として警察に対する批判が強まりますとともに、一般には、この種事件に対してさらに強力な取り締まりを要望する世論が高まっておるのであります。
まず、いわゆる革新陣営に与えました影響でありますが、この事件は革新陣営に対して相当大きなショックを与え、淺沼氏の死に対し政府及び警察に抗議するという大規模な大衆行動が直ちに組まれたのであります。すなわち革新勢力におきましては、事件発生のその日直ちに緊急動員を行なって、抗議の集会、デモを、東京を初め全国十都道府県にわたりまして実施し、約一万五千名がこれに参加したのであります。その後も東京を中心に抗議の大衆行動が組まれ、その間、東京におきましては、一部届け出デモ・コースの路線変更や、いわゆるフランス式デモなどが行なわれ、特に全学連の主流派は無届けの集会、デモを行ない、さらに警察車両の拡声機やガラス等を破壊したり、警察官に対して暴行を加え、首相官邸への突入をはかるなど、過激かつ暴力的な行動にまで出た者もあるのであります。しかしながら全般的に見ますると、指導者の自主統制等によりまして比較的平静に推移いたしたと存じます。
次に右翼陣営に与えた影響でありますが、この事件に対する右翼各団体や右翼分子の評価は、その個々の性格を反映いたしまして、受け取り方にも若干の差異が認められるのであります。その中には、従来の社会党の態度からして当然起こるべきものが起こったとして、山口の行為を是認し、これを英雄視する言動がかなり見受けられますことは厳に注意を要するところであると存じます。またその一部には、その行為を是としながらも、時期的に見ていまだその段階になく、右翼の大衆化にとってマイナスであるから、この際軽挙盲動を惧しむべきだとする団体も見受けられるのであります。なおこの事件の直後、一部行動性の強い右翼が中心となり、山口二矢救援対策本部などを設置する動きが台頭して参っておるのであります。
次に今回の事件が海外に及ぼした影響についてでありますが、すでに御承知の通り、海外諸国に対しましてもきわめて大きな反響を及ぼしているところであり、自由圏、共産圏を問わず、十三日付の各国主要新聞はトップでこれを報道し、一斉に論評を加えている模様であります。そしてこれらによりますと、共産圏諸国のものが今回の事件を目して、事国主義の復活であり、これは池田内閣とアメリカ帝国主義の責任であるとしており、また自由圏のものは、日本の民主主義の基盤の弱さとその前途を憂慮し、あわせて特に極右の暴挙に対する反動としての左翼の暴力化を懸念する論評が中心となっているようであります。いずれにせよ、この事件が列国の対日信用をそこなった点は、きわめて大きいものがあると認められる次第でございます。
次に今後の取り締まりの方針、対策について申し上げます。警察といたしましては、安保問題等をめぐって革新陣営側の大衆行動が激化するに伴い、これに反撃する右翼の行動もまた先鋭化する傾向が見られましたので、これらに対し厳重な取り締まりを行なって参ったのであります。ことに六月河上代議士に対し、さらに七月岸前首相に対する刺傷事件が相次いで起こりましたので、一部狂信的右翼分子によるテロ危険性を考慮し、右翼に対する視察内偵を強化して参ったのであります。ところが、今回三たびこのような不祥事件を起こしましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。
警察といたしましては、この際新たなる決意を持ってこの種事態の未然防止に努力をいたす所存でありますが、その要点を申し上げますと、第一は、今後危険性のある右翼的人物に対する視察警戒をさらにきびしくすることであります。そのために必要な増員措置等もすでに実施いたしておるところでございます。第二は、右翼のテロや暴力の対象となるおそれのある方々に対しましては、警察側から積極的に連絡して、御承諾を得た向きには直接警護をつけるなどして、身辺の護衛を強化いたしたいと存じておるのであります。第三は、今後もこの種集会につきましては、主催者その他関係者と緊密な連絡を十分にとりまして、警戒を厳重にいたしまするとともに、特に選挙期間中につきましては、暴力事案その他の悪質な妨害の未然防止に努めて参りたいと存じております。第四は、このような事件の犯行に用いられますおそれの強い銃砲刀剣類等の所持取り締まりを一そう強化いたしますとともに、たとえば青少年に対しては、未成年者等が刃物を持ち歩くこと等は、とかく傷害事件等を起こしやすいので、学校その他関と係向きと連絡して、少年が刃物等を持ち歩かない運動を全国的に展開いたしたいと考えております。
警察自体といたしましては、とりあえず以上のごとき対策を進めておるのでありますが、かかる暴力事犯は、そのよってきたるところきわめて深刻なるものがあると存じますので、警察日体その職責遂行に邁進することはもちろんでありますが、関係機関とも緊密に連絡して、その防止対策に万全を期しますとともに、広く国民の協力を得て暴力否定の風潮の高揚されることを切望いたしておる次第であります。