椎名悦三郎の発言 (商工委員会)

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○国務大臣(椎名悦三郎君) このたびの第二次池田内閣の出現にあたりまして、はからずも通産大臣を拝命いたしました。不敏不才でございますが、皆様の御鞭撻と御支持、御協力によりまして、誤りなきを期したいと考えております。
 この際、通産政策に対する私の考え方を申し上げたいと思います。
 通商産業政策の重点につきまして御説明申し上げますが、皆様御承知のように、わが国の経済は、戦争直後の荒廃からみごとに立ち直り、特にここ数年の間は諸外国にもその例を見ないまでにまことにめざましい成長発展をとげてまいりました。しかもこの間国際収支は黒字基調を続け、物価の上昇もきわめてわずかでありまして、かくのごとく健在な姿において順調な経済成長をみることができましたことは、まことに御同慶にたえません。しかしながら、わが国の経済の水準は、欧米の先進国に比較いたしますと、いまだはるかに及ばないのでありまして、さらに一段と国民経済の高度成長を実現することが必要であることは申し上げるまでもないところであります。政府において今後の政策の指針とすべく所得倍増計画の立案を検討しつつありますのもこの趣旨にほかならないのであります。
 日本経済は、現在貿易自由化の急速な推進をはかるという課題に当面しておりますが、貿易の自由化も世界の自由経済体制の進展に即応してわが国経済を今後一そう拡大いたすための前提であるとともに、企業の合理化意欲を刺激してその体質改善を促し、今後の経済発展の基礎固めをなすものであり、わが国経済の高度成長を実現するための手段でもあると存じます。政府といたしましては、この円滑な推進をはかるべく、貿易為替自由化計画大綱を決定いたしておるのでありますが、今後この線に沿って、内外の諸情勢の推移に十分考慮を払いつつ自由化に伴って惹起されるであろうところの諸問題を経済成長の阻害要因とならないよう解決するための対策の確立と相まちまして、手順よくこれを推進して参りたいと存じます。
 このように、私といたしましては、日本経済の当面の課題は、貿易自由化を円滑に推進しつつ経済の高度成長を実現することにあると存ずるのでございますが、今後通商産業政策を進めるにあたりましては、この課題の達成に施策の重点をおきまして、所要の対策を強力に推進して参る所存でございます。
 施策の第一は、企業の体質の改善、産業技術の振興などにより、産業の国際競争力を培養することなかんずく機械工業を中心とする重化学工業を急速に育成いたしまして、わが国の産業構造を重化学工業化の方向に誘導することにあると存じます。
 わが国の経済の高度成長を先導するものは、申し上げるまでもなく、鉱工業部門であります。先般経済審議会より答申をみました所得倍増計画におきましても、今後十年間にわが国の経済規模を二倍の水準にまで高めるためには、鉱工業部門は三倍に近い成長をはからなければならないこととされておるのであります。しかして、鉱工業部門のうちにおきましても、今後の国内の需要の動向と世界貿易の趨勢からいたしまして機械工業を中心とする重化学工業に特に大きな成長が期待されているのであります。
 他方、鉱工業生産の大幅な上昇に伴って増大する輸入需要をまかなうためには相当の輸出の伸長を実現することが必要であり、所得倍増計画におきましても、四十五年度における輸出は三十五年度の二・二倍に当たる九十三億ドルを期待しているのであります。しかしながら、従来のわが国輸出の大宗をなしております軽工業品や船舶の伸びは必ずしも楽観を許さないのでありまして、重化学工業品中心の方向に向かっている世界の貿易市場の動向に適合すべき重機械等の輸出の伸長に大きな期待をかけざるを得ないのであります。
 このようにいたしまして、生産構造、輸出構造とともに、機械工業を中心とする重化学工業化を達成することは、経済の高度成長を実現するための鍵と申すべきでありますが、これらの産業の国際競争力の現状をみますると、設備が老朽化し、技術が立ちおくれ、生産体制も整備されておらないことなどのため、いかんながら、欧米諸国の産業にははなはだ立ちおくれている状態にあるのであります。今後世界の貿易市場をめぐる国際競争が一そう激化いたしますとともに、貿易自由化の実施を控え、この課題の達成は決して容易なものとは考えられないのでありまして、これが達成のために必要な対策を積極的に推進することを今後の通商産業政策の中核といたしますとともに、財政、金融等の部面においても強力な支援を期待いたす次第でございます。
 重点の第二は、輸出の振興と経済協力の推進であります。
 先ほども申し上げましたように、経済の成長を実現するためには、輸出の伸長は不可欠の前提であります。しかしながら輸出の伸長は、世界各国の貿易競争が、ますます激化いたしますとともに、世界の貿易構造が変化しつつあることからいたしまして、その達成は決して容易ではありません。特に最近相次いで発表された米国の一連のドル防衛措置は、直接特需収入及びICA資金による輸出の減少を招きますとともに、米国の輸出促進のための努力が一そう強められることにより第三国市場においてわが国の輸出との競合が激しくなることは明らかであります。これらの事態により、わが国の国際収支の動向に決定的な影響があるものとは考えられませんが、決して楽観を許さないものがあるのでありまして、この際かかる新情勢に対処いたしまして、輸出の振興に必要な施策につきましては、今後とも一そうの拡充強化に努める所存でございます。
 かかる見地に立ちまして、最近において問題となっております輸銀資金確保の問題につきましても積極的な方針でこれに臨む所存でございます。すなわち日本輸出入銀行の資金需要につきましては、最近におけるプラント輸出の伸長、大口の特別案件の進捗等からいたしまして著しく増大いたし、このため今国会に提出いたしております本年度補正予算案におきましても百二十五億円の追加出資を行なうことといたしました。これにより本年度最小限八百五十億円の貸出規模が確保されるものと期待いたしておりますが、今後とも輸銀融資の需要は増大の一途をたどるものと思われますので、この際所要資金の確保につき抜本的な対策を講ずる必要があるものと考えます。
 なお融資条件につきましては、補正予算案の策定にあたり、輸入金融、投資金融に関する貸付金利の引き上げなど一部改訂が行なわれることとなったのでありますが、輸出金融の金利についてはプラント類の輸出の現状にかんがみ、さしあたりこれを現行水準に据置くことといたしたのであります。
 また輸出所得控除制度につきましては、税制改正の一環として、一部には本制度の廃止ないし大幅な縮小を主張する意見もあるやにきいておりますが、この制度は従来から輸出の振興に多大の寄与をなしており、かつその恩恵があまねく中小企業に均研する意味におきましても、今後ともその存続をはかりたいと考えております。
 次に、経済協力の問題についてでありますが、低開発国に対する開発の援助は、先進工業国としてのわが国の責務でもあり、我が国にとっても輸出の増大、輸入原料の確保等の面で重要な意義を有しているものでありまして、今後大いにその促進に努める所存であります。
 このため、政府といたしましてはさきに不成立に終わりました海外経済協力基金法案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律案の二法案を今特別国会に提出いたし、その早期成立を期することといたした次第でありますが、今後とも、従来から行なわれてきた民間海外投資、延べ払い条件の緩和等をさらに積極的に促進いたしますとともに、最近の国際情勢に即応して、国力の許す限り、直接借款方針を推進する等積極的な施策を講ずることといたしたいと存じます。
 重点の第三は、中小企業の振興であります。
 所得格差の是正は経済成長と並んで経済政策の基本的な目標であります。わが国経済において中小企業は生産、輸出等の諸般の面において重要な役割を占めており、政府としても従来よりその振興には大いに努力して参ったのでありますが、いまだ大企業に比して生産性や賃金等その水準が著しく低いのが現状であります。今後は貿易の自由化の進行に伴って国際競争もますます激化することが予想されますので、その一そうの近代化合理化を推進し、競争に打ち勝ち得る実力を培養するとともに、進んで経済の高度成長実現の過程において中小企業の地位の向上発展をはかるため、中小企業の振興のための施策を強力に推進して参る所存であります。
 かかる見地から補正予算案におきましても、商工組合中央金庫に対する出資金を二十億円増加し、その貸付規模を拡大するとともに、中小企業金融公庫、国民金融公庫とともに、その貸出金利の引き下げを実現することといたした次第でございますが、今後とも政府関係金融機関の強化充実、税負担の軽減、設備近代化補助金の拡充、信用補完制度の充実をはかるとともに、心々にして過当競争に陥りがちな中小企業の組織化、共同化の推進や、診断指導制度の充実、商工会の運営の強化拡充、中小企業業種別振興法の積極的運用など従来の施策を一そう強力に推進し、さらに中小企業のための団地の造成など新しい施策も積極的に講じて参る所存であります。
 重点の第四は、産業立地問題の解決をはかるとともに、後進地域の開発を促進することであります。
 今後日本経済を大きく仲ばしてゆくためには、国として産業の立地条件を積極的に整備してゆくことが必要でありまするので、所得倍増計画実現のための重要な方策として、産業立地条件の整備を積極的に推進して参る所存であります。しかしてこれが推進にあたっては、従来の大工業地帯は工場が集中して行き詰まっておるので、新しい工業地帯を造成する必要があるとともに、地域間に存するはなはだしい所得格差を是正することが国民経済全体の均衡ある発展を実現するために必要でございますので、低開発地域の開発に十分力を入れて所要の対策を推進することといたしたいと存じます。
 最後に、電力、石炭、石油等のエネルギー問題について一言いたしたいと存じます。低廉なエネルギーを豊富に供給することは経済発展のために不可欠の前提でありますので、かかる見地に立って総合的な長期エネルギー政策を確立し、各種のエネルギー供給産業に対して適切な対策を講じて参る所存でございます。
 特に石炭鉱業に関しましては、エネルギー消費の変革に伴って著しい苦境に立っており、その打開が急がれますので、今後一そう近代化、合理化を推進するとともに関係各省と協力して炭鉱離職者に対する援護措置を積極的に進める方針でございます。
 なお、最近石炭鉱山の災害が和次いで起こりましたことは、まことに遺憾にたえません。すでに発生した災害の事後処置を急ぎますとともに、原因を十分に調査し今後の災害発生防止に万全を期したいと存じております。
 以上通商産業政策の重点項目について私の所信を申し述べた次第でございますが、御承知の通り、通商産業省の任務といたしますところは、きわめて広範な分野にわたっており、わが国経済の発展をはかる上においてきわめて重要な諸問題が数多く存するのでございます。私はなはだ微力ではございますが、皆様の御協力を得て、この重要な使命を果たすため十分努力いたしたいと存ずる次第でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 椎名悦三郎

speaker_id: 20886

日付: 1960-12-19

院: 参議院

会議名: 商工委員会