河村弘の発言 (社会労働委員会)

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○河村参考人 私は、ただいま御紹介のありました日本歯科医師会の河村でございます。ただいま医師会長の武見先生から、今日までのいろいろな形におきまする状態の御説明がありました。私は歯科の立場におきまする今日までの、またかような立場に至りました経過、こういうようなことについての面をお話し申し上げたいと思います。
 御承知のごとく、本年の四月一日をもちまして、先ほどお話しのごとく、国民皆保険というものが実施せられるということになっておるのでございまするが、日本の国民であれば、必ず各種の健康保険のいずれかに包括されるようなことになるのであります。これは大へん重大なことであります。国民が病気になる、またけがをするとなれば、必ず社会保険医療によってこれをなおしますということに相なりまして、この社会保険というものがいいのか悪いかということは、よって全国民の健康が左右されるということに影響を持ってくるわけでございます。
 かような現状でございまして、さらに保険経済が常に今までは優先して考えられていましたために、実に多くの矛盾が起こってきておったのであります。最低の資材、経費をもって最大の効果を求める、また労働力回復を重視するねらいということによりまして、平等な福祉がすべての国民に平等に与えられない結果を生じておるのであります。これが皆保険下における基本理念でございまするが、国民が平等な福祉を与えられるようにいたさねばならないのであります。
  〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
かように社会保険という医療が、国民生活に重大なる影響を及ぼすときになりました現在において、私どもは現行の社会保険医療制度に見られるところの欠陥と非合理性を是正いたしまして、そうして国民医療の真の正しい姿を守り、近代医学の進歩に沿い得るところの良心的なる医療ができ得るようにいたさねばならないのであります。しかるに現状はいかがでございましょう。われわれは再三再四これらに対してわれわれの要望を当局に出したのでございます。しかるに当局におきましては、これらに対して何らの誠意を示ておらない。こういう状態におきまして国民皆保険に突入するということは、全く国民の健康、福祉を犠牲にするといってもあえて過言ではないと思うのであります。
 要望につきましては皆様に文書をもってお配りしてございます。一点単価の引き上げ、歯科の立場におきますところの補綴の点数の是正、社会保険歯科医療の内容の改善、事務の簡素化と地域差の撤廃、こういうような四点を指摘いたしまして、特に今日まで要望あるいは陳情におきまして、また各地区における決議をもって当局に訴えておるわけであります。
 単価の問題は、診療費の問題につきまして詳しく申し上げることは、時間がございませんので、後ほど御質問がありました場合にかえたいと思いますが、この件に対して特に御考慮をいただきたいということは、歯科医のいろいろな面におきまする経済状態というものは、一般の社会情勢とは若干異なるものがございまして、歯科医師の人件費というものはほかの勤労者に見られないところの上昇を示しておるのであります。これは歯科医が非常に少ないということが最大の原因ではございますが、かくのごとく人件費の大幅の上昇ということが、経費の大きい支出の要素と変わってきております。またその他歯科の機械、資材というものも予想以上の暴騰を示しております。特に近代歯科医療に欠かせないところのレントゲンの撮影装置、またさらに最近に至りましてはタービンによる高速度切削機械、こういうものも出て参ったのでありますが、今日の一般の歯科医におきましては、こういうものを直ちに購入するということがなかなか容易ではないのであります。全くこれは歯科医療経常の困難を示しておるということでございます。そこで診療報酬の現状では医療機械の整備強化ということはむずかしくなる。現在のままでは陳腐化した設備でやっているような次第でありまして、これでは適正なる医療は国民に与えられないということになるわけであります。
 なお低単価のために私的医療機関によりましては、生活の必要上全く労働過重をしいられまして、十一時間から十三時間、あるいはそれ以上に及ぶところの稼働を余儀なくされる、これでなければ経営が立っていかない、かような実情でございまして、疲労こんぱい、ここにおいて何らの進歩の姿が見られないような状態である。
 また歯科におきまする特殊な事情といたしまして、補綴に関する不合理の面もございます。これはあとでゆっくりと申し上げたいと思うのであります。
 いずれにいたしましても現政府におきまして、御承知のごとく国家経済の成長に伴うところの国民所得の倍増計画というものを特に打ち立てられまして、その実現の態勢に入っておられるようでありますが、適正なる医療というものが行なわれるには、やはり適正なる医療費というものが支払われなければならないということがはっきりおわかりになることと思うのであります。そこですみやかに国民所得倍増に見合うところの方途を決定いたしまして、単価の引き上げを決定いたさなければならない。繰り返して申しますれば、国家経済は伸びておる、国民の所得は増加する、労働賃金は年々とベース・アップされていく、なぜわれわれ医療担当者だけが取り残されなければならないのか。低い単価や制限されましたるところのワク内の診療に耐えて不満を忍びつつも今日に及んだ次第であります。しかしながら私どもは知性と学識と技術というものを利用して、国民の健康保持のために身も心もすり減らす気持を持って今日まで続けて参ったのであります。しかも私どもが要求いたしましたものはまことに遠慮深い最低の線を出した。しかもこれら私どもの要望は私利私欲にかられた、大それた要求では決してないのでございまして、国民の健康保持に要する大事な栄養源であるにすぎない。また医療の本質ということから考えてみますると、先ほど武見先生からとくとお話がございましたが、一面から考えまして医師と患者とはかたいつながりがある。なおそう、頼もう、これはいささか古いかもしれませんけれども、そこに人間愛と信頼感というものがなければならないのであります。しかもわれわれはその上に医学技術の進歩に応じたところで、常にみずからを磨き高めていくようなことになっておるわけであります。しかも先ほど来お話しのごとく、保険者の圧迫で押しつぶされたような形におきまして、まことにスズメの涙ほどの医療費の値上げにすぎないと思うのであります。これに対してまことに不遜きわまる反対をしている。私ども全一国三万の歯科医師は、常にこの切実なる声を体しまして、全国的なる形において盛り上がる力をもってこの要望の貫徹を期している。しかしてここに国民の正しい医療を守り、新しい医学の進歩と国民生活とを結ぶところのいわゆる社会的使命を果たさなければならない。しかるに今日この状態ではこれはとうていでき得ない、こういう結論のもとに、すでに御承知のごとく総辞退を含む実力態勢をとるもやむを得ない、かようなことに相なったわけでありまして、すでにその面についての指令が全国的に発せられまして、今日の事態に入ったわけでございます。
 なおここでつけ加えて申し上げておきたいことは、現時点におきましては、私どもは単なる賃上げ的な経済闘争ということより、さらに進みまして医療制度の抜本的改革、厚生行政の革新的改革、さらに健保法の全体系的改正、こういうようなものに十分なる目安をつけない限りは、いかなる形においてこれを一時的なる方途によって償おうと思っても、これは決してできない、私どもは長期戦の形をもってあくまでもこの態勢を持して、真の姿の日本の医療、国民の福祉のために戦わなければならないことを決意しておるわけなんです。かような意味におきまして、特に厚生当局並びに政府に対して大なる反省を促したい。かような意味におきまして今日の状態に立ち至ったわけでありますので、十分なる御了察を得たいと思います。これをもって私の今日の経過説明を終わります。

発言情報

speech_id: 103804410X00519610216_014

発言者: 河村弘

speaker_id: 16798

日付: 1961-02-16

院: 衆議院

会議名: 社会労働委員会