田中幾三郎の発言 (地方行政委員会法務委員会連合審査会)
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○田中(幾)委員 総理大臣に伺います。この事件を単なる殺人事件と解釈してはならない。淺沼氏の場合は、あれはこつ然として起こった事件でありますが、殺された委員長は政治的にも非常に地位の高い人でありますから、事件は重大でありました。この事件は女中が殺されたのでありますけれども、事件は単なる殺人事件ではありません。ただいま申し上げましたように、右翼の団体が何回かの抗議を申し込んで、右翼というものがすでに動いておるという背景と、その動きの中でこの事件が起こったのでありますから、これは単なる殺人事件ではありません。やはり私はテロにつながったところの事件と思うのであります。しかも総理大臣は、前の淺沼氏の事件のときの連合審査会において、十月の二十四日に答弁をされて、「今回の事件の結果にかんがみまして、お話しの通り、抜本的の緊急な措置を講じていきたいと考えております。」「総理としては、二度とこういうことのないように全力を尽くさなければならぬ。そうしてこれを防止することが私の務めであると考えた次第であります。」こう申されておるのであります。私は、こういうことを申される以上は、総理は非常な決意を持って、具体的にこの対策を講じなければならなかったと思う。この右翼の台頭は、一つは左翼に対する勢力の対決であります。しかし、左翼の団体行動については、破防法があって、団体活動としての規制をこの破防法によってやっておるのであります。しかし、右翼はそう多くの集団を持たなくても、テロという一つの武器のもとにこれは活動しておるのでありますから、左翼の団体活動とは私は違うと思うのであります。愛国党でも、これは三十人かそこいらの党員しかありません。しかし、これは党員の人数によって右翼の勢力が伸びるのでなくして、統率するところの代表者の勢力というものが非常に影響を及ぼすのです。二・二六事件を見ましても、五・一五事件を見ましても、北一輝氏、西田税氏、大川周明氏など、必ずしも党員を持っていなかった。自分の個人の勢力があれだけの影響力を及ぼして、青年将校を動かして、日本の右翼革命をやったのでありますから、私は、左翼の団体を取り締まる考えをもっては、右翼の勢力を取り締まることは、なかなかむずかしいのじゃないかと思うのであります。左翼の団体なら、団体を規制して解散させればよろしいが、右翼の方は、団体をかりに解散いたしましたとしても、その勢力は、空気のごとく、そこに見えなくても残っておるのです。ですから、この勢力を何とか現実に動かないような対策を講ずるということが、右翼に対する将来の対策であると私は思うのです。
また、資金源についても、いろいろ論じられておりますけれども、検察庁が調べて初めてある右翼団体の経理がわかったわけなんです。もしあれをやらなければ、経理は何もわからなかったわけでしょう。政治資金規正法が悪いのじゃないかと私は思うのです。あれは窓口を通って届け出さえすれば、あとは何らの監査はないのです。いかにしてこれが集められたものであるか、いかにこれが使われたものであるかという監査がない。窓口があって監査がない。国家の財政でも、御承知のように会計検査院があって、監査する。会社にも監査役がおって、会社の経理を監査をする。ですから、やはり資金源についても、ただ届け出をさせる――うそであってもなくても届け出さえすればそれで通っていくのですから、もっとそういうものを監査するという、たとえば政治資金規正法の中に第三者の監査の方法を設けて厳重にこれを監査していくということでもやるとか、何とか具体的に施策の上に表わしてこなければ、国民の思想がよくなればこういうことがおさまるのだとかいうようなことでは、この右翼の勢力というものを抑圧することはできないと思うのでありまして、この嶋中事件が単なる殺人でないということに対して、総理はいかに責任を感じられておるか、またその対策について、ただ言葉だけでなしに、具体的にどういうような制度なり法律を作ってやっていこうという――これは今ここであなたに詳しく聞こうとは思いませんけれども、この前もそう言って何らできていないのでありますから、単なるヒントでもよろしいから、もっと具体的なあなたのお考えを今の責任の問題と同時にお伺いいたしたいと存ずるのであります。