井手以誠の発言 (建設委員会)
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○衆議院議員(井手以誠君) 井手以誠でございます。
有明海開発促進法案について提案の理由を御説明申し上げます。
九州の中央部に深く湾入している有明海は、最大干潮時には海岸から遠く六・七キロまで干潟地となる広大な浅海でありますので、その湾口部を締め切り、水位を下げ、第二線の干拓堤防を築きますと、一挙に五万三千ヘクタールの新しい国土が造成されるのであります。ここに三万八千ヘクタールの干拓農業を展開し、埋蔵量四十億トンと推定される海底炭田を開発するとともに、この石炭と背後地の資源を組み合わせて臨海工業地帯を形成振興すれば、九州地域経済の停滞性と後進性を打開して、有業人口三十五万、年間四千二百億円の総生産を上げ、百万人をこえる人口を収容し得ることになるのでありまして、この有明海地域の総合開発は、狭い国土に、四十七番目の有明県を作り出そうとする世紀の大開発事業であります。すなわち、この総合開発によって、
一、肥沃な干拓地三万八千ヘクタールに農家の二、三男、漁場を失う漁業者等二万戸を入植させ、水田酪農を取り入れた高度の農業経営によって、年間二百億円の農業生産と所得の増大が期待されます。これによって九州農業の低い就業構造を引き上げ、過剰農村人口を緩和することができるのであります。
二、推定埋蔵炭量四十億トン、通産省調査による有明海東部の可採炭量は十六億トン、うち七十%は粘結炭という豊富貴重な地下資源を開発すれば、従業員数三万九千、年間出炭一千二十万トン、生産額五百数十億円に上り、これによって老衰化した筑豊、唐津・北松炭田の将来に備え、またほとんど輸入に依存する原料炭五百万トンをおおむね自給して巨額の外貨節約となります。最近鉱害をめぐって干拓計画と石炭開発の利害対立が伝えられております。もちろん個々の築堤干拓地には当然予想されるところでありますが、一時に行なう大干拓には鉱業用地を保留し、充填技術の採用、鉱害予防の措置を講ずれば、その多くは克服され、進んで干拓地の随所に堅坑を容易に開さくすることができ、坑道延長の宿命的難問題は同時に解決するという一大利便を得ることになります。もとより企業家の利潤評価よりも雇用、所得等広く国民経済的立場に立って判断すべきであり、地下資源は国民のものであります。従って、未開発炭田の開発は電源開発株式会社のごとき公けの機関によるべきでありましょう。
三、相当面積の臨海工業地帯を造成、淡水化する干潮諸河川、内水湖の豊富な用水と、石炭を初め、背後地の資源を活用して重化学工業、肥料、窯業、火力発電、食料品加工、臨海関連工業等を振興すれば、就業人員十一万六千、その年生産三千五百億円の巨額を見込まれるのであります。従来九州の経済は原料工業に偏在している上、その設備は老朽化し、生産の成長は鈍化するとともに、狭隘な産業構造の外郭性、辺境性、後進性から社会的人口の滞留圧迫が加重されておりますので、地域経済を若がえらし、厚みをつけ、地域格差を是正して均衡ある成長と雇用の改善をはからねばなりません。
四、いわゆる台風常襲地帯にある有明海地域は、洪水と満潮が重複して年平均七十二億円の大被害を受け、現在防災改修改良工事は五百億円を計画されておりますが、大締め切りによって水位を二・五メートル低下すれば、海岸堤防二百十五キロメートル、十河川を含む干潮地域十二万ヘクタールの保全効果は六百億円、既耕地の排水改良は八十億円の効果を見込まれます。
五、流域三千ヘクタールに及ぶ九州第一の大河、筑後川は年平均流量二十七億トンに上っておりますが、その利用度はわずか九億トンにすぎず、貴重な水資源は、大半未利用度のまま放流され、一方北九州、福岡地方における工業用水、都市用水の需要は最近急増し、中下流の農業用水はますます不足を来たしているので、これら用水の確保は切実な問題となっております。従って筑後川の治水、利水を調整開発することは、当面の急務であり、その利便と経済効果は莫大なものがありましょう。
六、一面締め切り築堤によって直接に漁場を失う人々には真に気の毒に堪えません。この沿岸漁業はきわめて集約的、停滞的で、所得が低いため、局面打開を迫られている窮境にあり、また半農半漁の立場もありますので、干拓への優先入植、第二次、第三次産業への吸収または淡水漁業、外海漁業拡大等によって解決をはかることが必要でありましょう。
以上のように、優に一県に相当する事業効果が見込まれるとともに、財政面からの経済効果は、少なくとも堤防保全、排水改良に六百八十億円、土地造成に二千億円その他二十億円を加え、二千七百億円を期待され、一方これに要する経費は締切堤防八百四十億円、干拓堤防八百五十億円、地区内工事百三十億円、補償費三百五十億円、計二千百七十億円の見込みで、面接の経済効果よりも五百三十億円下回るのでありますから、この大事業は十分採算ベースに乗るものと推定されるのであります。この国土を守り、国土を開く大事業に自衛隊を活用すれば、工事費は大幅の節減をみるのでありましょう。
すでに九州地方開発促進法による審議会に有明部会が設けられたほか、各方面で調査研究を進められておりますが、調査だけで十数億円を要する世紀の大事業を行なうのに、今日の調査は年間三千数百万円の小規模にすぎず、統一性を欠いております。すなわち有明海開発の緊急かつ重要性にかんがみ、有明海開発促進法を制定し総合的大がかりな調査を進め、早急に開発基本計画を決定、引き続き開発公団を設立して事業を実施推進しようとするものであります。
次に法案の概要を申し上げますと、
一、内閣総理大臣は有明海及びその周辺の地域の開発に関する調査について、その地域、行政機関、内容の基本計画を立案し、九州地方開発審議会の議を経て決定すること。
二、内閣総理大臣は毎年調査の結果をまとめて認否を推進するが、事業の緊要性と愛知用水事業が本年度完工し、機械化公団の事業も著しく進捗している事情をも考慮して、この法律施行後五年以内(調査期間は三年)に開発基本計画を立案決定するよう努めねばならないこと。
三、開発基本計画は内閣総理大臣が指定する区域における締め切り提防、土地の造成、土地及び水面の利用、用水の利用、これらに関連する諸施設の整備その他総合的な計画の基本を定めること。
四、政府は開発基本計画を実施するために必要な資金の確保をはかること。
五、政府は事業の実施により失業した者の就業、生活再建または環境整備のため特別の措置を講ずるとともに、失業した漁民を造成された土地に優先入植させるよう努めること。
六、開発基本計画に基づく事業を実施するため別の法案によって有明海開発公団を設置すること。
以上がおもなる内容であります。ここに有明海開発公団法案要綱を添え御提案申し上げますので、何とぞ著しい効果が約束されるわが国随一の、この国土開発計画に格別の御理解を賜わり、本法律案をすみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。