大野文夫の発言 (建設委員会)
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○説明員(大野文夫君) 静岡県由比町の寺尾地区に起こりました地すべりにつきまして、その経過と対策についての概要を御説明申し上げます。
この由比町の地すべりは地内の中之沢及び寺尾沢の間にあります地区に起こりましたものでありまして、発生の時期は三月の十四日の未明でございます。その地区の地質を申し上げますと第三紀層に属しまして、下部は泥岩と砂岩の互層になっておりまして、上部は礫岩と集塊岩より成っております。そして今回地すべりいたしました頭部におきまして、二列にわたりまして破砕地帯があるというようなところでございまして、この地区は往年から地すべりの地帯でございます。遠くは天明の地震のときにも大崩壊があったというふうな記録も残っております。その後もしばしば地すべりがあったわけでございますが、最近におきましては昭和十六年の七月にかなり大きな地すべりがありまして、死者六名、負傷者十数名というような被害がございました。続いて昭和二十三年の九月アイオン台風によりまして山腹が崩壊いたしまして、国鉄及び東海の国道が七時間余にわたりまして一時途絶をしたというような経過があるわけでございます。
で、今回の地すべりの原因というものにつきましては目下調査中であるのでございますが、一応の誘因と考えられますものは、二月の中旬に静岡地区に小さな地震がありました。発生いたしました前日、十三日に十三ミリ程度の降雨がありました。これがまあ一応の誘因ではないかとただいま考えられておるわけでございます。現況は国鉄、国道及び人家がございますところから水平距離にいたしまして約七百メートル、標高約三百メートルのところを頂点といたしまして、そこから幅二百メートルを底辺といたします高さ百五十メートルの三角形にすべり出したわけでございます。で、従来の他の地区におきます崩壊と違いまして、この滑落の状況は非常に緩慢でありまして、先ほど申しました誘因というものにつきましても、十四日以前から多少ずつすべっていたのではないかというようなことも考えられるのでございます。で、この土砂が下段の地すべり地帯に重量と圧力をかけながら、約二百メートル活動いたしました。隆起やあるいは陥没を伴い、約六ヘクタールにわたりまして、ちょうど地すべりいたしました下で、農林省が昭和二十三年から三十年度までに直轄の治山工事をやっておりまして、また引き続きまして、三十一年から三十五年度、本年度まで県営の治山事業及び地すべり防止事業をやっておりましたが、これらの建造物を非常に大きくこわしたわけでございます。
で、土砂の移動速度につきましては、発生直後におきましては、約二時間にわたりましては、毎時百メートルというような、驚異的な速さでございましたが、その後だんだんおさまりまして、十六日に至りましては中之沢におきましては毎時四十五ミリ、これは匍行の土砂の一番先端をはかっておるのでございますが、中之沢におきまして四十五ミリ、寺尾沢におきまして五百ミリ、十七日におきましては、中之沢におきましては二十ミリ、寺尾沢におきまして二百ミリ、十九日の夜半、この日は雨が相当降りました。十九日の夜半におきましては中之沢におきましては二十三ミリ、寺尾沢におきましては百十ミリ、昨日の早朝、二十二日の朝におきましては、中之沢におきましては二十ミリ、寺尾沢におきましては三十ミリ、だんだん落ちついて参ってきておるのが現況でございます。
なお、先ほど申し上げました農林省の直轄治山工事につきまして御説明申し上げますと、これは先ほども触れましたように、昭和二十三年のアイオン台風によりまして、国道及び国鉄が七時間余にわたりまして途絶されたわけでございます。その当時、GHQから、国鉄幹線の輸送を背任をもって確保しろというような命令がございました。当時地すべり防止事業という本のの予算は林野庁のみにございました、そういうような関係で、二十三年から直轄の工事といたしまして林野庁が所管いたしまして、約工事費といたしまして一億一千万円の経費を投入しておるわけでございます。三十年に至りまして基幹の工事が終わりました関係上これを静岡県に移管いたしまして、その後においては県の補助工事といたしまして、本年まで約三千二百万円の工事をやっておるわけでございます。また御承知のように昭和三十三年に地すべり等防止法が施行されまして、これに伴いまして昭和三十四年の一月にこの地域十八ヘクタールを地すべり防止地区に指定しておるわけでございます。
次に対策について申し上げます。事故が発生いたしまして由比町におきましては、十四日の午前九時に直ちに地元住民に対しまして避難命令を発しております。地元住民七十五世帯三百八十五名に対しまして避難命令を発しまして、その避難先は町の公会堂あるいは親類縁者というようなところに避難を命じました。続きまして十一時に由比町は対策本部を設置いたしまして、緊急の町会を召集いたしまして応急対策につきましての協議を行なっております。同時に静岡県といたしましても直ちに現地に関係者を派遣いたしまして、午後の六時に、県に対策本部を設置いたした次第でございます。本庁といたしましても直らに十六日の晩に係官を現地に派遣いたしまして、引き続きまして地すべりの権威でありまする建設省の土木研究所の谷口博士に調査を依頼いたしまして、十六日に同博士は現地に到着、調査をいたしました。また地質学の権威でありまする東京農業大学の小出博士にも調査を依頼いたしまして、十八日に同博士も現地に見えられまして、十九日は両博士と私どもの担当者であります治山課長が現地で県の責任者と立会いたしまして、応急の対策工事の樹立、検討をいたしたわけでございます。
一方、本庁関係におきましてはいろいろ各省関連する問題もありますので、昨三月二十二日に関係各省の連絡会議の第一回を開催いたしまして、情報の交換、各技術の提供をいたしまして、今後の応急対策及び恒久対策につきましての協議をいたしたような次第でございます。一そこで県の対策本部といたしましては、十四日に自衛隊の富士学校に出動待機を要請しております。そして応急の対策といたしましては、どうしても排土と排水が必要であるというような観点から、十七日に同自衛隊の出動を要請しまして二百九十三名現地に参りまして、直ちに緊急の工事を十七日から開始しております。これが二十三日、本日までかかりまして、自衛隊は一応引き揚げるというような連絡があったわけでございます。
そこで緊急の対策といたしましては、先ほども申し上げましたようにだんだん落ちついては参りますものの、雨が降りました場合におきましてはその保水能力に限度がございますので、早急に排水路にたまりました土を排土して、同時にいろいろ各個所にございます遊水をその地域外に排水するということが、二つの大きな眼目と考えられまして、そのおのおのにつきまして現地で協議したわけでございますが、御承知かと思いますが、その現地に入ります個所が全部部落でございまして、現地に至ります入口が非常に小さいというような関係で、なかなかブルドーザーあるいはダンプというものがそのままでは入り得ないというような関係もあり、一方におきましてまず水を取り除くということに重点をおきまして、この出動いたしました自衛隊に依頼いたしまして、山腹の遊水及びその上流から流れて参ります流水をその地域外に排水するということに重点をおきまして、U字型の鉄板で山の口をとめまして、木皮あるいはビニールパイプ、それからじゃかごというようなものを利用いたしまして、上部の水を区域外に排水するという作業を現在やっておりまして、ほとんど本日をもってその応急の仕事は終わるわけでございます。しかし、これだけにおきましてはなかなかまだ応急としても完全でございませんので、昨日県の方にもまた連絡をいたしまして、どうして毛先ほど申しましたいろいろ工事材料を入れます進入路をあけなくてはなりませんので、町の方と十分に協議をしていただきまして二、三の人家の立ちのきをお願いするというような措置を目下講じているような次第でございます。それと同時に今申し上げましたことによりまして、一応流水路の排土、排水は今後それができますと直らに行なえるわけでございますが、それのみでは不十分でございますので、民家に接続いたしました山腹、これは現在くずれておらないところでございますが、そこもいつくずれるかもしれない危険もありますので、そこにじゃかごを設定いたしまして、応急にその万一くずれました場合にそれをとどめるいわゆる防御壁というものを設置することにしておるわけでございます。県の対策本部といたしましては、今明日中にその設定を終わるわけでございまして、設定を終わりまして直ちにただいま考えておりますような方向で応急の対策工事をしたいと、かように考えておる次第でございます。
次に、恒久工事につきましては、やはり先ほど経過で申しましたように、非常に昔からの地すべり地帯でございますので、ざらにこの地質を十分に精査いたしませんと、この原因も推定の域を脱しないのでございますので、直ちにボーリングその他等によりまして、ボーリングあるいは遊水の試験、土質の方も化学的に試験いたしまして、これはすでにあるいは土質は現地より持ち帰りまして建設省の土木研究所に依頼いたしまして目下分析中でございますが、それとボーリング等によりまする物理的探査によりましてこの地質をより明確に把握いたしまして恒久の対策をやって参りたいと、かように考えております。
以上が従来の経過、それに対する対策でございます。