大来佐武郎の発言 (社会労働委員会)

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○政府委員(大来佐武郎君) 第一の御質問の点で、総生産と貿易でございますが、十年倍増、経済規模は倍になるという場合に、大体輸出貿易として九十三億ドル程度のものが必要だろう。そのためには年率一割、大体年一割平均で輸出が伸びれば、ほぼその程度の輸出に到達する。それが日本の経済の、二倍の経済規模をまかなうに足る輸入をしていくことが可能になるというような計算になっておるわけでございます。日本の場合には、貿易というのは、購買力といたしましては、総需要の中の約一割でございますけれども、日本の経済の性格から申しますと、原材料を買わなければ産業が動きませんので、そういう意味では外貨が不足するということは、日本の経済活動、経済成長自体を制約する重大な要因になって参るわけでございますから、この輸出をできるだけ伸ばしていくという政策は、短期的にも、長期的にも、日本の経済の性格からいって必要だろうと考えておるわけでございます。しかし、総需要という立場から見・ますと、国民消費、国内の投資、行政支出というふうな大きな部分を占めるということは当然でございます。そういう意味で投資の拡大とともに、国内の内需も並行して増大して参ることが必要だ。それが参りませんと、やはり供給と需要のアンバランス、先ほど藤田先生の御指摘になりましたような問題が出て参るわけでございますから、ある場合には、これは時期的に投資が非常に急速に伸びるときもあろうかと思いますが、またある別の時期には消費の方が投資よりよけい伸びる。こういう形が交互にいく形で長期的にバランスをとる必要があると存ずるわけでございます。
 第二の生活保障の点でありますが、これは計画の中に、いろいろな社会保障の考え方が出ておりますが、一つには労働力をできるだけ、非常に極端にいえば救済的な社会保障支出がなくてやれるような社会というものが一番望ましいのだけれども、それは現実に母子家族とか、不具者とか、いろいろ労働力の劣った人たちがおりますので、全部正常な職業におって、正常な収入を得て、一人前の生活ができる経済状態にあることが一番望ましいわけですが、必ずしもそうもいかない。その面はできるだけ社会保障、生活保護で救済して参るということが一つと、それから貧困と病気の悪循環ということが厚生省の調査等にもよく出て参ります。できるだけ医療保障の面を充実することは、これは非常に生産的な社会保障である。つまり貧困化と疾病の悪循環を断ち切る。そういう意味で医療保障の充実ということを考えなければいかぬということが倍増計画の社会保障の方に述べられておるわけでございます。全体といたしまして、社会保障の一つの基本的な条件というのは、相当なスピードで成長する経済、常に雇用の機会が増大し、常に賃金水準が上昇し得るような成長力のある経済を維持していく、それがやはり基本的な社会保障政策であるということが、一方でこの倍増計画の基礎になっておると思うのでございますが、同時に、今のような形で労働力の不完全な人たちに対する救済、特に医療の充実によりまして、健康な労働力の再生産を可能にする。それが同時に貧困化の原因に対して大きな防壁になるというようなことが大体倍増計画で出ております線かと存じます。
 階層別の点につきましては、これも非常に論議の多い点でございまして、統計から見ます限りにおきましては、大体最近の推移といたしましては、上中下と分けてみますと、下は割合に上がっておる。いわゆる従来の低賃金層というところの賃金は相当急速に上がりまして、同時にそういう面では、労働力不足が御承知の通りいろいろな形で現われておるわけでございますが、中と上の関係は必ずしも現状では縮まっておらないという状況でございます。これはまあ大企業と中企業との関係で、将来一つの問題点だと思うのでございますが、やはりこの点につきましても、税制が一つの重要な階層間の格差の是正の手段だと存じますし、すでに欧米諸国も広く税制を通ずる所得の再配分をやっているわけでございます。日本の場合は、この点が、一つは戦争によりまして、激しいインフレーションによって、あらゆる労働が一度生活給に落ち込んだ、その生活給から今度はだんだんと職務なり、技能なり、責任に応じた賃金の体系にだんだん変わってきた。その過程におきましては、一応表面的に、統計的に見ましても、格差が拡大する格好をとるわけでございますが、これはある意味では、この戦後のインフレーションと最低生活水準にほとんど大部分の国民が落ち込んだということから、一面から言えば、所得の格差が過度に縮小したという面もあったかと思うのでございまして、その面が経済の復興に伴ってある程度復活して参る点がございます。しかし、これは早晩、今度は逆に上下の差を縮めるような税制、その他の財政政策で一般の水準が上がって参りますと、この格差を縮小する方向にいかなければならない。一面におきまして、労働需給バランスからいきまして、下の方が押し上げられるだろう。同時に、最低賃金制度等によって制度的にも押し上げられるということを期待しておるわけでございますが、さらに上層と中層との格差という問題については、主として税制等によって将来の対策が必要になって参るかと考えておるわけでございます。そのほか、この社会保障がもちろん最低層につきまして所得再分配効果を起こすということは当然でございます。
 概略御説明申し上げました。

発言情報

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発言者: 大来佐武郎

speaker_id: 17223

日付: 1961-05-11

院: 参議院

会議名: 社会労働委員会