川上為治の発言 (本会議)
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○川上為治君 ただいま議題となりました炭鉱災害防止に関する決議案につきまして、関係各派を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、決議案を朗読します。
炭鉱災害防止に関する決議
近時、大規模の炭鉱災害が相次いで発生し、これにより多数の犠牲者を出していることは、人命尊重の精神よりみてきわめて遺憾とするところである。
よって政府は、速やかに次の施策を講じ、もって炭鉱災害の防止及び遺家族の援護に万全を期すべきである。
一、石炭産業安定政策の確立
二、鉱山保安監督行政の強化
三、鉱業法、鉱山保安法の抜本的改正
四、保安施設改善困難な炭鉱の休廃山に伴う諸対策の確立
五、遺家族に対する完全援護並びに補償制度の再検討
六、炭鉱の保安設備改善のための長期低利資金の確保等政府の援助
右決議する。
以上が決議案の内容であります。
最近、大規模の炭鉱災害が相次いで発生し、多くの尊い犠牲を出しておりますことは、人命尊重の精神に照らしまして、まことに遺憾にたえないところであります。昨年二月、北炭夕張におけるガス爆発事故によって四十二名、九月には豊州炭鉱の水没によって六十七名の死亡者を出したことは、いまだ記憶に新しいところでありますが、さらに今年に入って、三月九日には、福岡県田川郡の上清炭鉱におきまして、坑内火災事故により七十二名の死者を出し、引き続き三月十六日には、八幡市の大辻炭鉱において、上清と同じく、コンプレッサー室からの出火によって、またもや二十六名の犠牲者を出すという大惨事が連続して、跡を断たないのであります。相次ぐ炭鉱の大災害の頻発は、人道上の問題として世論を大きく動かし、今や重大な社会問題となっているのであります。豊州炭鉱の場合も、上清炭鉱の場合も、いずれも空前の惨事と呼ばれたのでありますが・絶後とは決して言い切れないところに大きな問題があり、全国の炭鉱で働く労働者は、明日はわが身のことかと、死の恐怖と不安におびえているのが実情であります。
私どもは、最近、院議をもって、上清炭鉱及び大辻炭鉱の災害現地に派遣され、災害の実情をつぶさに調査して参ったのでありますが、昨今の炭鉱保安の状況は、きわめて憂慮すべき危険な状態に置かれていると感じてきたのであります。今までも、大きな事故の起こるたびに、災害防止対策の確立が叫ばれておりながら、十分な保安対策も取り上げられておらず、石炭鉱業の急速な合理化が要請されてきた昨年来は、災害による犠牲者の数が、かえって増加する傾向に転じてきたことは、憂慮にたえません。今日の状態において、なお、その場限りの対策をもって当面を糊塗するならば・今後も大きな災害が続々と発生するのを避けられないことは明らかであります。従いまして、今後再びかかる惨事を繰り返すことのないよう、国会及び政府は、今こそ炭鉱災害絶滅のため、重大な決意を固むべきときであると信じ、ここに本決議案を提出した次第であります。
次に、決議案の内容につきまして御説明申し上げます。
まず、第一の石炭産業安定政策の確立についてでございます。最近における炭鉱の大災害頻発の原因をさかのぼって考えれば、やはり、今日、石炭鉱業の置かれている経済環境にその根本的原因が求められると思うのであります。現在石炭鉱業が、重油等、競合燃料の進出によって、きわめて苦しい立場に追い込まれ、急速な炭価引き下げと合理化を要請される余り、保安の面にも相当のしわ寄せが行なわれていることは避けられない事実であります。炭鉱合理化の促進が今日の経済事情から見て必要であることは、今さら申すまでもありませんが、これとともに、政府は総合エネルギー対策を確立し、石炭需給の安定、石炭技術の革新等、さらに強力な対策を講じ、石炭鉱業の安定をはかることが、炭鉱災害防止の基本であると考えるのであります。
第二の鉱山保安監督行政の強化につきましては、近ごろ、炭鉱において合理化を急ぐ余り、保安の面がおろそかにされがちなように考えられますので、鉱山保安関係法令の運用につきましては、一段と厳正を期すべきであり、法令違反に対しましては、罰則の適用をきびしくするとともに、悪質な者に対しましては業務停止命令の発動をも考慮すべきであると考えます。さらに、保安監督体制を強化するため、監督官の権限強化、待遇の改善、人員の増加、監督機構の整備、保安関係予算の充実をはかるべきであります。また、一部の中小炭鉱では、経営者と従業員の間に、独特の前時代的な考え方と人間関係が残っており、これが、人命を軽んじ、災害発生の下地を作っていることは、世論もしばしば指摘しているところであります。特に、近ごろ問題になっておりますように、監督官の検査を炭鉱側が暴力によって妨害し、保安監督行政の執行を困難ならしめているがごときは、みずからを危地に追い込んでいるものでありまして、全く論外のことと言わなければなりません。(拍手)政府は、かかる事態のよって来たる原因として、中小炭鉱をめぐる社会的背景を徹底的に究明して根本的対策を講ずるとともに、その他の一般炭鉱におきましても、経営者初め、関係者に、人命尊重の精神と保安思想をさらに徹底せしむる必要があると思うのであります。
第三の、鉱業法、鉱山保安法の抜本的改正につきましては、鉱業法による鉱業権賦与のあり方、施業案認可のあり方等について再検討するとともに、不適格な鉱業権者に対しましては、鉱業権取り消し等の徹底的措置をとるべきであり、鉱山保安法につきましては、技術的基準の強化改善、罰則の強化等をはかるべきであります。
第四の保安施設改善困難な炭鉱の休廃山に伴う諸対策の確立につきましては、今後、特に中小炭鉱における災害発生を防止するためには、保安施設を改善させる見込みのないような弱小な炭鉱、あるいは改善の意思のない不良炭鉱に休廃止を命ずることが必要でありますが、これら炭鉱を休廃止させた場合の離職者対策、鉱害対策等の諸対策が十分でないため、なかなか閉山を命じられないのが実情であります。よって、これらの対策を確立し、保安関係法令の厳正な執行を可能ならしめるような社会的背景を作っていくことが肝要であると考えるのであります。
第五の遺家族に対する完全援護と補償制度の再検討につきましては、災害により、一瞬にして一家の生活の支柱を失った犠牲者の家族の方は、その日から悲惨な生活苦に追いやられるお気の毒な状態にあることにかんがみまして、労災保険の給付率の引き上げ、就職のあっせん等、援護策を充実する必要があると思うのであります。
第六の中小炭鉱の保安設備のための低利資金の確保等、政府の援助につきましては、現在の炭況のもとにおきましては、大手の炭鉱においてすら、設備改善の資金が枯渇している状況であり、なかんずく、中小炭鉱においては、なかなか保安設備改善の資金にまで手の回らない実情でありますので、政府におきましては、特に中小炭鉱に対しましては、保安設備改善のための低利資金の確保、特定施設に対する補助等の措置を講ずべきであります。
以上が決議案の内容でありますが、政府におきましては、この決議の趣旨に基づき、現在、重大な社会問題、人道問題となっております炭鉱災害に対しまして、これが根絶をはかるため、最大の努力を傾注されるよう強く要望する次第であります。
最後に、不幸にもこれまで炭鉱災害によりまして不慮の死を遂げられました犠牲者の方々の霊に対しまして、衷心より御冥福を祈って、本決議案の趣旨説明を終わります。(拍手)