椿繁夫の発言 (本会議)
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○椿繁夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として外交、経済問題を中心に、政府の所信をただしたいと思います。
まず初めに、日本の平和と繁栄のために、外交の基本的な方向と、これに対する総理の姿勢についてお伺いをいたします。
池田内閣が成立したころは、戦後最も評判の悪かった岸内閣のあとだっただけに、いわゆる低姿勢を看板にして、中国問題などでも前向きの姿勢をとらんばかりの様子が見えたのであります。これは、一つには、池田総理自身が外交政策について自信を持っていなかった上に、新しくできたケネディ政権の方向について疑心暗鬼の点があったからでありましょう。ところが、アメリカのキューバ侵略という事件が起きて、自民党と池田内閣は、やっと安心されたようであります。つまり、ケネディも反共の点ではアイクと全く変わりがないことがはっきりしたからであります。こうして、その後池田内閣は、ベルリン問題等の世界情勢の急激な変化と党内の突き上げなどから、急ピッチでアメリカ追随の外交に変わり、六月の日米会談以来は、全くそのレールに乗って、アメリカのアジアにおける反共軍事体制の立て直しにやっきになり、その姿は、まさにアジアにおける反共の闘士といった感が見られるのであります。そして最近の東南アジア旅行では、自由主義陣営に属する国々ではきわめてあいそがよく、中立主義諸国には、これをたしなめるような態度に出られたことは、周知の事実であります。
そこで、まず伺いたいのは、日本がアメリカに追随し、中立を否定しておるため、国連において、軍縮交渉機関が、従来の十カ国に中立色の濃い八カ国を加えて新たにでき上がったのに、日本がその参加を拒絶されたことであります。これは、世界で最初にして最大の原爆被害国であるとともに、世界でただ一つの戦争放棄の憲法を持つ日本が、世界の平和のために果たさなければならない光栄ある任務を拒絶されたことであります。(拍手)このことについて総理の所見をまず伺いたいと思います。
また、これと関連して伺いたいことは、池田内閣と自民党は、さきの国会で、わが党の提出いたしました完全軍縮の決議案に反対して、これを握りつぶしたのでありますが、今度の東南アジア旅行で、インドのネール首相を初め各国との共同声明では、「完全軍縮に関する協定を締結することの重要性を確認した」と書かれていることについてであります。これは今度の旅行の最大の成果でありまして、総理はぜひこれを推進していただきたいのでありますが、池田内閣及び自民党は、今後わが党が完全軍縮の決議案を提案いたしました場合に、率先して賛成する御意思があるかどうかということであります。(拍手)
平和はひとりでやってくるものではありません。今日、一国の平和は世界の平和とつながっており、特に近隣諸国の国際環境を積極的によくしていく以外に、その国の平和はないと思います。われわれの中立主義はこの立場に立っておるのであって、最も現実的な政策であると信じておるのであります。ところが、池田内閣は、このわが国をめぐる国際環境をよくしていく平和のための努力をどれだけ行なったでありましょうか。事実は全くその逆であります。ことごとく平和の方向に反し、アジアの緊張を激化させる方向に進んでおるのであります。中国敵視政策を捨てず、日中国交回復を阻害し、日ソ平和条約を結ぼうとする真剣な努力を少しもいたしておりません。また、日韓会談を強行して、ますますアジアの緊張を激化させ、ラオス、ベトナム等の戦争の火種を消す努力もいたしておりません。これをわれわれは、日米軍事同盟体制あるいは安保体制の強化と呼んでおるのであります。
総理は、国連の中国代表権問題について、日本が重要事項指定方式をとったことは、以前のたな上げ方式に比べて前向きの姿勢であると強弁しておられるのでありますが、この方式こそ、実は最も私は実質的なたな上げ方式にほかならないと思います。(拍手)それは三分の二の多数の議決を必要とするからであります。これは前向きでも何でもない、単に引き延ばしの戦術に変わったにすぎないのではありませんか。しかも、岡崎演説は、幾ら読み返してみても、重要事項に指定した後、どのように解決せねばならないかについては、全く不明であって、中国代表権が中国と台湾政府のいずれにあるのか、全くわからないのであります。外交は言葉の巧みさにあるのではなく、中身のある、国の進路をはっきり示したものでなければならないと思うのであります。何べんも聞くことでありますが、一体、政府は、中国の代表権が中国と台湾の国民政府のどちらにあるのか、明確にお答えを願いたいと思います。また、政府、自民党の中には、台湾独立を支持して二つの中国政策をとろうとする者もあるようでありますが、総理は、これを支持するお考えがあるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
以上のように、政府は、中国問題については足踏みしながら、対韓国交渉には非常な熱意を示しておられます。一体、対韓国交渉はどこまで進んでおるのか、これからのスケジュールは一体どうなっておるのか、明らかにしていただきたいと思います。近く財産請求権及び借款問題について妥結し、あとは、なしくずし的に国交正常化をはかるというようなことが伝えられていますが、このような重大なことを国会の承認を得ることなく行なうつもりであるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。われわれは、韓国のみと国交樹立を行なおうとする政府の方針は、南北朝鮮の分裂、これを固定化し、ますますアジアの緊張を高め、日本、韓国、台湾を連ねるNEATOの結成をねらうものとして反対いたしております。(拍手)また、その相手とする韓国政府は、クーデターでできた軍事政権であるばかりでなく、自分に反対する政党人、言論人を片っ端から極刑に処した極反動のおそるべきファッショ政権であります。池田内閣や自民党のいう自由民主主義陣営とは、どういう自由やどういう民主主義のある国を望んでおられるのか、隣国の非合法手段による政権に対し明確なる態度を示し得ないところに、国内における右翼クーデターの勢力を温存することになるのであって、まことに理解に苦しむところであります。(拍手)かかる軍事政権を相手に日韓会談を進めることは即時打ち切って、南北が統一され、民主的方法によって選ばれた政府と懸案の諸問題について交渉を再開すべきであると思いますが、政府の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
いま一つ、今年度の外交として重要なことは、国内の輸出振興策と関連した経済外交の面でございます。EECの目ざましい躍進は、アメリカにも動揺を与え、昨年暮れから保護貿易か自由貿易かの論争がアメリカに起こっており、ケネディ大統領の一般教書は、アメリカ経済がEECに接近する方向を示したものであります。これはEECとアメリカの新たな結合を意味する動きで、そうなった場合、はたしてわが国がこうした世界経済の新たな潮流についていけるのか、日本の輸出市場は一体どうなるのか、世界経済の中で孤立していくのではなかろうか、こういう心配が各方面から出ておるのであります。さらに、一方、わが国の今年度の貿易の赤字は、対米輸出の不振に大きな原因があったのであり、政府がせっかく日米箱根会談で友好ムードを作り上げたはずなのに、当のアメリカは、二週間もたたないうちに、これを裏切るようなAIDの肥料入札の締め出しや綿製品輸入関税の引き上げなどの冷厳な措置によって報いておるのであります。自民党内でも、何のための箱根会談かと皮肉る人さえいるのであります。池田総理が突然アジア外交を言い出したのも、一面ではこうした八方ふさがりの窮状打開のために東南アジアの市場に目をつけたことにあると思われますが、東南アジアは各国とも慢性的なドル不足に悩んでおり、商品流通の上でも有無相通ずる関係になく、日本に対する警戒心、大東亜共栄圏的な恐怖感もぬぐい去られてはおりません。総理は、以上のように大きな世界経済の動向に対して、どう対処されようとしておるのか、この機会に伺いたいのであります。今年度四十七億ドルの輸出をどう達成しようとしておるのか。特に、この際行き詰まった貿易を解決するためにも、日中日ソなどの共産圏との貿易拡大のため政府間協定まで踏み切る意思はないのか、明らかにせられたい。これらの国こそ、日本の重化学工業製品の大きな市場となり、日本が伸びていく最も合理的な道とお考えにならないのか。以上のような経済外交の点についての総理の確たる御方針を承りたいと思います。
次に、経済問題について政府の見解をただしたいと思います。ことしは池田内閣にとっては、高度成長計画の第二年目でありますが、国際収支の逆調、金詰まり、株の暴落、企業の倒産、経済界は深刻な混乱の中に新年を迎えました。ことしは、三月ごろを一つのピークとして、その後も、輸出の伸び悩みを中心に、わが国経済は深刻な、なべ底景気を続けるだろうという見方が、政財界を通じて言われているのであります。しかも、こうした経済情勢は、今日突如として起きたものではありません。このことあるのを、われわれは強く昨年の通常国会の初頭において指摘し、警告したのでありましたが、総理は手放しの楽観論で耳をかそうともされず、ついに今日の事態を生んだのでありまして、総理の責任はまことに重大であると言わなければなりません。(拍手)過日の施政方針において、国民の協力を呼びかけておられますが、その前に、まず総理自身が、一ぺんかぶとを脱いで国民にわび、改悛の情をお示しになってはいかがでございましょう。御見解をただしたいところであります。
ここで私は、少しく高度成長政策の持つ資本主義的な性格について触れてみたいと思います。たとえば国際収支の悪化にしても、これは起こるべくして起こったのであって、昭和二十八年、三十二年と、ほぼ四年週期の循環を示しているところに問題があろうと思います。そこに実は日本経済の巧妙な資本蓄積の秘密のかぎが隠されているのであります。総理は、一昨年の総選挙のテレビ討論の際、「今ここにある三個の卵をすぐ分けるより、六個にふやしてから分配したほうが国民のためになる」と、言葉巧みに話しかけられたのでありますが、確かに経済は成長して卵はふえたかもしれませんが、やっと分配するようになったころには経済危機が到来して、お家芸の引き締めをやり、分配はお預け、賃上げはがまんしてくれ、生活も耐乏だということになっておるのであります。こうして資本はますます蓄積され、二重構造は拡大され、生産力は世界一流だが消費生活は三流という、不思議な日本経済の生態ができ上がるのであります。高度成長政策は、まさに二重構造の拡大と高蓄積の別名にほかなりません。このように、高度成長政策のほんとうの罪悪は、巧妙なやり口で弱い者をいじめ、生産と分配のアンバランスを初め、社会のあらゆる面に二重構造の拡大を作り出すことにあると思いますが、総理の見解をお伺いしたいのであります。
以上のことからも、現在の経済危機の真犯人は、政府の高度成長政策にあおられた大企業の設備競争にあることは明らかであります。ところが、これに対する政府の政策は、大企業の投資抑制にはあまり効果がなくて、逆に、罪もない中小企業に打撃を与えるような、一般的な金融引き締め政策をとり、一方では賃金のストップや国民の消費抑制と貯蓄を呼びかけておるのであります。そこで私たちは、大企業の設備投資をねらい撃ちに削減する直接規制を行なって、二重投資、過剰投資を抑制することが、問題解決の基本であると考えますが、所見を伺いたいと思います。
この五年間に民間設備投資のほうは年率三一%も伸びておるのに、個人消費のほうは年率わずか八%しか伸びておらず、また労働者に対する分配率の低下も明らかな数字になっております。消費物価の高騰と相待ちまして、その生活は実質的に低下いたしております。今次春闘における労働者の大幅賃上げの要求は、全く正当なものだと言わなければなりません。われわれはむしろ労働者農民その他の勤労者の所得を大幅に引き上げて、社会保障の拡充と相待って、国内の市場を積極的に拡大すべきだと思いますが、政府の見解をただしたいのであります。
次に、政府は、三十七年度の輸出の見通しを四十七億ドル、輸入を四十八億ドルと見込んで、総合収支で年度末一億ドルの赤字という見通しでありますが、本年度の四十一億ドルが昨年に比べて四・六%しか伸びていないのに、来年度四十七億ドルと一五%も大幅に伸ばし得るかということは、すべての経済専門家、識者の一致して疑問とされておるところであります。特に世界経済が地域ブロック化し、アメリカのドル防衛は当分続く情勢にある現在、はたしてこの目標が達成できるでしょうか。輸出先を、わかっておりますれば、地域別に、品種別に、できるだけ明らかにされることを要求いたします。
次に、国際収支の悪化と関連して、政府がさきに決定した本年十月までに九〇%という貿易自由化計画は、大幅に繰り延べるべきだと思いますが、政府の所見を承りたいと思います。国際収支の改善が最大の問題となっておるとき、輸入の増大に拍車をかけるような貿易自由化は、明らかに自殺行為と言わなければなりません。さらに、この自由化を目前に控えているため、政府は思い切って大企業の設備投資の削減に踏み切れず、そのしわを、投資総額の中でわずかな比重しか占めていない中小企業の投資削減や国民消費の抑制など、効果の少ない政策が露骨にとられておると思うのであります。
次に、三十七年度予算案を見ますと、三十六年度に比べて二四・四%の膨張予算で、経済の成長率を五・四%に制御したのに比べて著しく矛盾しておることは、だれの目にも明らかなところであります。また、財政投融資の規模も前年度に比べて一五・七%の増加となり、経済情勢の変化に応じた予算とはとうてい申されないのであります。その内容からいっても、今度の予算は高度成長政策の結果生じたいろいろな不均衡是正を中心とすべきであるのに、この考慮を全く欠き、逆に参議院選挙目当ての政策の乱発が見られます。また、リバイバル調の恩給のべースアップ、旧地主補償が頭をもたげるなど、圧力団体にかき回された放漫総花予算であって、赤信号の出た日本経済に対する何らの反省が見受けられないのであります。(拍手)さらに、大さわぎされた減税も、年間総増加財源に比べてわずかに九・五%であって、物価の上昇を補てんすることもできず、減税の名に値しないものと言わなければなりません。しかも、減税の規模が小さいだけでなく、設備投資抑制の大目標からいって、当然削除すべき租税特別措置に何ら手がつけられていないことは、政府がだれの犠牲によって景気調整をやろうとしているかを端的に示すものであって、きわめて遺憾にたえないところであります。
さらに、三十七年度予算に関連して、特に旧地主に対する農地補償について一言触れておきたいと思います。この問題に関しては、すでに二十八年の最高裁の判決において、解放当時の農地買上げの価格は妥当であったと国家の意思は定まっているのであります。だから、政府も農地補償は行ないませんということを今日まで言明を繰り返してきたのであります。ところが今回、わずかではございますけれども、二十億の旧地主だけを特別に対象とする補償が組まれておるのであります。(「社会保障だよ、困窮者の」と呼ぶ者あり)そこで、今出ておりますように、社会保障の一環だと体裁のいいことをおっしゃるでしょうが、一般困窮者の中から特に旧地主だけを引き出して救済の対象にしようとすることがわからない。このことを政府は明らかにしていただきたいと思うのであります。そこで伺いますが、自民党の政策を拝見いたしますと、ちょっと頭を出しておいて、この次には調査会の答申を待って地主補償を行なう、そのための財源として農地転用税を創設するやにうかがわれるのでございますが、政府にその考えはありますか。もう一つ伺いたいことは、この二十億を頭だけ出しておいて、来年度さらにこれをワクを広げるというようなお考えがあるかどうかということを伺っておきたいのであります。総理の衆議院での御答弁を拝聴いたしますと、憲法の問題については調査会の答申を待ってということでありますが、この旧地主補償の問題についても、被買収農地問題調査会設置法というのがあって、調査会がすでに設けられておる。その答申が何らなされていないときに、今年度二十億の特別ワクを設定するということは、多くの国民の理解できないところであります。(拍手)この点を明らかにされることを強く望んで、私の質問を終わります。(拍手)御清聴を感謝いたします。
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕