志場喜徳郎の発言 (建設委員会)

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○志場説明員 なかなかむずかしい問題でございますが、所得税につきましては、公平という考え方を、何を中心に考えていくかということが根本的だと思うのでございます。所得税の体系が公平でなければならぬということは、アダム・スミス以来の租税の原則の根本でございまして、この根本をはずしますと、納税上の観念がゆるみ、結局公平適正な税務行政が成り立たないということは、申すまでもないことでございますが、その何をもって公平なものと見るかという点につきましては、おっしゃいますように、その当時その当時の社会経済事情ないしは社会通念の変化がございますれば、それに応じて、その中身も変わっていくという性質の点があろうかと思います。おっしゃいましたように、所得税は稼得する源泉においてとらえるということによる課税でございますけれども、これに対しまして、いかに同じ稼得した所得でありましても、それを消費しないでいる限りにおきましては、あまり課税しなくてもいいじゃないかという議論もあるわけでございます。学説といたしましても、いわゆる総合消費税論と申しますか、総合支出税と申しますか、その議論もあるわけでございまして、この一年間における個人の消費した総支出額をもとにして課税するのが、一番公平なあり方であるという議論もあるわけでございます。現に一、二の国におきましては、そういう税体系をとっておるところもございます。その面から申しますと、おっしゃいますように、所得のうち貯蓄された分、これに税をかけなければ公平じゃないのじゃないかという議論はおかしいじゃないかという議論も成り立つかと思うのでございます。ですけれども、総合消費税論というのは、実施面においてなかなかむずかしい問題をはらんでおるのでありまして、今日の税体系におきましては、なかなかその実施に踏み切ることは問題があろうかと思います。そこで税制といたしましては、まず発生の段階でとらえる所得税におきまして、少額なものにつきましてはできるだけ合理的な生活費に食い込まないという配慮を加えて、いわゆる課税最低限という諸控除の制度を設けますと同時に、稼得する金額が大きければそれだけ消費能力が大きいであろうという前提を立てまして、税率の面におきまして累進税率の構造を持つということをもって公平と考えておると思います。なお支出面につきましては、総合消費税論はなかなか実情でむずかしゅうございますので、高級な、奢侈的な、あるいは担税力があると認められるような消費に対しまして、個々に個別消費税でもってこれをカバーいたしまして、同じ所得者の中でもその所得を多くそういった物品の消費に充てる人には間接税の形で多く税を払ってもらう。そういうことによって、所得税に対する一種の補完税のような意味で、個別の消費税をその消費財の性質、消費の態様に応じて課税していくというような税体系をもって考えるべきだと考えられていると思うのでございます。その場合に、今日の所得税におきましては、一般に国民の感覚からいたしまして、これは利子所得であろうと、配当所得であろうと、勤労所得であろうと、事業所得であろうとを問いませず、ともかく今日の所得税は負担としてまだかなり重いという感覚がどうしてもぬぐい去ることができないものがあると思います。そういう状態を前提として考えました場合に、この所得がいかなる源泉からのどういう種類の所得であるかということにつきましては、やはりかなりの神経を使わなければならないという面が残って参ると思います。そうしました場合に、社会通念等から考えますと、利子、配当なりあるいは不動産の貸付による所得は、今日におきましてもなお資産所得として把握されておるものであろうと思うのであります。従いまして、これに対しましては現在でもいわゆる資産所得の合算という制度がございまして、税率を高めるという考え方を持っておりますが、これは今申しましたように、所得税の負担が一般に高いと認められている現状におきましては、やはり各所得間の担税力の差異というものに対する一般の通念がそういうふうになっているのだろう、これは否定できないのじゃないかというふうに思うわけであります。ただその場合に、先ほど申しましたように、課税最低限の制度がありますと同じように、やはり利子だからあらゆる利子は担税力があるというふうに見ることにつきましては問題があるわけでございまして、郵便貯金につきましては元本が五十万円であるという限度もございますし、これを非課税といたします。また今回、国民貯蓄組合法にかえまして所得税法自体で少額貯蓄に対する非課税制度というものを新たに導入いたしまして、元本五十万円までの利子についてはこれを非課税にするという措置を講じまして、その間、中小所得者を中心とするそういった利子所得につきましては、軽減、免除をはかっておることによって、バランスをとると申しますか、これによってバランスをくずすことはない、こういうふうに考えておるわけでございます。
 なお別に、今日における経済情勢からいたしまして、資本蓄積が必要であるということも否定できません。これは今おっしゃいましたような将来の国づくり、金づくりの点から申しましても、やはり大きく伸びるためには必要でございますので、特に租税特別措置法によりまして軽減を講じておりますが、利子につきましては分離課税とし、なお従来の一割の源泉課税の税率を五%に引き下げる、こういうことにいたしておるわけでございます。今日租税特別措置というものがいろいろと批判の向きもございますが、それによる減収額、平年度約二千億円と言われておりますけれども、その約半額に当たる千億近くの金額というものは、実は利子、配当に対する特別措置に基づく減収でございます。さようなことを考えて参りますと、この理論といえども、公平という考え方からいたしまして、利子配当というものをすべて非課税にするのがかえって公平であるということにはなかなかいきにくいということを考えますと同時に、しかし、今日の状態における経済情勢というものを考えまして、今申しました程度の特別措置を講じていく。これでこの両面の考え方に対しましてまあ妥当な考慮を払っておる、こういうことが言えるのじゃないかと考えております。決して形式的な負担公平論というものが、しゃくし定木的に、千古不滅に、中身が変わらずにあるというふうには考えませんが、今日の一般所得税がかなり負担が重いということが感ぜられている現状におきましては、現行制度が一応限界的なぎりぎりのものとして維持されていく根拠があると見ることができるのじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

発言情報

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発言者: 志場喜徳郎

speaker_id: 16902

日付: 1963-03-08

院: 衆議院

会議名: 建設委員会