大平正芳の発言 (外務委員会)
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○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、これはアジアの諸国民の日本に対する、対日不信といいますか、そういうものは相当根強く戦後にありましたことは、長谷川委員御指摘のとおりでございまして、日本の国是が変わりまして、平和愛好国としてやるという基本的な国是を確立したことと、またそれに対する国民的確信が裏づけになっておるということ、そして日本人の海外への進出というのは、これはいわゆる経済の進出とか帝国主義的な進出というのではなくて、純粋にその国のために考えて、その国と日本とのコープロスペリティというものを確立していくんだということを、東南アジアの諸国民が理解するような工合に外交は持っていかなければならないと思うのでございますが、ようやくそういった根強い不信というものがだんだん希釈れて参っておることは、私は認めますし、またこういう日本のほんとうの気持を東南アジアの諸国に御理解いただく努力を続けておるわけでございまして、それはようやく明るい見通しに私はなってきていると思うのでございます。ただしかし、それが直ちに今言われたように、定着性を持った移民を今大量的に受けるというところまでまだ熟していないことは非常に遺憾だと思うのでございまして、現にこの間タイのタナット外務大臣が来られたときに、私は、現地の商社の滞在する割当——クォータがありまして、それから、そのターン・オーバーが一年だというようなことでは、とてもどうも仕事にならぬので、一ぺんその制約を取り除いてくれと、そうして日本の商売人というのは、何もタイでもうけていってやろうなんて思ってないのだから、あなたのほうの経済開発にも協力する、そうしてそのようにこの商社員の能力を使ったほうがいいじゃないかと言いましたら、それは移民じゃないですかと言うわけです。いや、とんでもない、移民でないので、ただ一年というようなことで暫定的に腰かけているなんて根性ではとてもだめなんだからということでありましたが、移民でなければ、私は考えますというようなことを言われたので、ちょっと私もまだ定着性の移民を迎えるようなメンタリティにはまだなっていない。したがって、これはあなたがおっしゃるように、もっと日本の真意をわからせて、大いに日本の方々を受け入れようじゃないかという機運を醸成すること、これはアジア外交の根本でございますが、それをひとつ精力的に続けていって、もう少し時期を見ないと、移住というような問題を東南アジアの諸国と話し合っていくというには少し時期が早い。しかし、そういう気持が先方に起こる、日本に対する信頼が起こるように、少なくとも疑惑が一掃されるように持っていくのが、東南アジアの外交の一番基本だと私は心得えております。今のところ、まだ移住を論ずるまでには至っていないということでございます。