中島巖の発言 (内閣委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○衆議院議員(中島巖君) ただいま議題となりました首都建設問題調査会設置法案につきまして、その提案理由及び法律案の概要について御説明申し上げます。
 東京都への過度の人口集中は急激な人口膨脹となり、すでに一千万人を突破し、人口は世界最大の大都市となりました。このため交通難、住宅難、水不足などの過大都市の弊害が如実に現われて、わが国の首都としての政治、経済、文化、教育の中心機能が麻痺し、今や動脈硬化寸前の状態に陥っております。政府はこれに対処して、高速道路や地下鉄の建設及び鉄道の複々線化などを行なっております。国会周辺は言うに及ばず、東京都全域にわたって掘り返し工事が行なわれております。全世界のどこの都市にこのような大都市全域にわたって大模規な工事を行なっているところがありましょうか。行き詰った後に行なう後進性の工事は、ギャップが多ければ多い程困難を伴ない、莫大な工事費を必要とするものであります。のみならず、これらの土木工事は東京都の動脈硬化をさらに高進させ、動きのとれないところまで追い込む危険性さえあるのであります。その理由は、現在の諸施設が東京都の現況と将来の展望との見通しの上に立っての全体計画でないこと、その場のがれの施設を個々に行なっている現状だからであります。
 都市機能の基本的な問題について、東京都と世界の著名都市と比較してみますと、第一点に人口増加の問題を取り上げてみます。ロンドンは一九五一年から五六年の五カ年間に三百三十四万八千人から三百二十七万二千人と七万六千人の減少であります。ニューヨークでは一九五〇年に七百八十九万二千人であったのが、一九六〇年は七百八十万六千人と十カ年間に八千六百人減少しております。パリが一九四七年に二百七十二万五千人が一九五四年に二百八十五万人、すなわち七カ年間の人口増加が十二万五千人となります。年間の平均人口増は一万八千人となっております。また、世界で最も人口の増加している上海ですら一九三五年三百五十五万九千人が一九五〇年五百四十万七千人と、十五年間に百八十四万八千人の増であります。東京都の人口増は一九五一年に六百四十五万三千人、一九六〇年九百十六万七千人とこの十カ年間に二百七十一万四千人増加しています。この人口増加の状態は現在も続いております。
 第二点、道路面積について申し上げます。東京都の道路面積は一〇%であります。ワシントン四三%、ニューヨーク三五%、ベルリン二六%、世界の著名都市の内で最も少ないロンドンですら二三%であります。
 第三点、公園面積の比較であります。一九六〇年度調査で見ますと東京都は一人当たり一平方メートルであります。ワシントンが四十五・二平方メートル、ニューヨーク十一・九平方メートル、最も少ないといわれているロンドンで九・二平方メートル、パリ八・九平方メートルとなっております。
 以上が都市機能の基本的問題としての人口の推移、道路面積、公園面積の三点について申し上げたのであります。この三点から考えましても、東京都は都市機能の基本的諸条件の絶対量が不足していることがわかると思うのであります。これらの諸条件の絶対量不足が、今や東京都を動脈硬化寸前に追い込んだのであります。このことは何人といえども否定することができないと思います。
 これに対して政府はいかなる抱負と施策があるのかといいますと、前四十国会の論議を通じて明らかになりましたことは、政府は首都問題については首都圏整備委員会が当たっておるので新たに首都問題の調査機関設置の必要はないということであります。
 首都圏整備法が昭和三十一年に成立し、首都圏整備委員会が発足して十数年になりますが、東京都に対していかなる実績を残し、また、いかなる計画を持っているのかと申しますと、首都圏整備委員会は昭和三十一年に昭和三十二年を当初として昭和四十一年に至る首都圏整備の白書を発表しております。これによりますと、首都圏整備計画の前提条件である人口増加と交通問題の見通しについてみますと、人口計画目標として昭和五十年の市街地適正人口千百六十万人、衛星都市の新定着人口二百七十万人となっております。しかし、すでに本年度において東京都だけで一千万人を突破しておるのであります。交通量につきましても、都内国鉄八路線、私鉄十五路線について、昭和四十一年の既成市街地路線別交通需要の推定と実績の比較として最も混雑する一時間の最大通過人員表を発表していますが、これも現在全路線とも四十一年推定交通量を三〇%前後も上回っております。このように首都整備計画の基本となる条件の見通しが、大幅に狂っています。このことは東京都への激しい人口集中で計画の根底がゆらいでしまったと見るべきであります。
 首都圏整備委員会は単なる調査会でなく、行政委員会であり、当然現状計画に引きずられて、せいぜい現状の改良計画にとどまらざるを得ないのであります。その実例として、東京都の過度人口集中の防止のため、昭和三十四年、首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律を制定いたしました。また、昭和三十六年には、学園都市建設構想の試案を発表したり、あるいは官庁都市建設の試案を発表しております。前に申し上げましたように、東京都の将来の見通しに根本的な狂いのある上に、東京都の現態をそのままとしてわずかにその一部の脳溢血的部分を周辺都市に瀉血しようという改良主義計画程度を出ることができないものであります。
 このような首都圏整備委員会に首都整備に藉口して、東京都を今日の事態に追い込み、なおかつ目をおおわんとしている政府の態度は許せないものがあります。以上の実情にかんがみまして、行き詰まっている東京都百年の大計を一日もおろそかにすべきでない。また、一行政委員会にゆだねるべきではないと考えます。学識経験者や政治家により、より広く、より高い視野から根本解決の方針を決定すべきであります。
 以上が、本法案の提案理由の説明であります。
 次に、本法案の内容について申し上げます。東京都の都市機能が麻痺している現在、わが国の政治、経済、文化、教育の中心にふさわしい首都を建設するため、これに関する重要事項を検討するのを目的として内閣に調査会を設置する。この調査会は二カ年以内に結論を得て、調査審議事項を内閣を通じて国会に報告すること。
 調査会は関係大臣、国会議員、学識経験者等五十名をもって組織し、会長は総理大臣が当たること。調査会の事務処理のため事務局を置くこととし、所要の事務局員を置くこと、などが主たる骨子であります。
 東京都が各般にわたり行き詰まり、今後さらに人口が増加せんとする現状にかんがみて、この根本対策樹立のために、本法案をすみやかに御審議の上、御可決あらん事をお願いいたしまして、本法案の提案理由及び内容の説明を終わることといたします。

発言情報

speech_id: 104314889X02419630613_003

発言者: 中島巖

speaker_id: 20970

日付: 1963-06-13

院: 参議院

会議名: 内閣委員会