中村順造の発言 (本会議)

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○中村順造君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました海運関係二法案に関しまして、総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。
 本案は、ただいまの趣旨説明によりますと、海運業を基幹産業と認め、極度に悪化した企業内容と企業間の過当競争を是正し、企業再建のため、条件として海運企業に一定の集約併合を行なわしめ、五カ年間日本開発銀行の利子を猶予するものであり、さらにまた、外航船舶の建造に要する借入金の利率を引き下げ、利子補給期間を延長することを内容としたものであります。
 今日、わが国海運業は、戦後計画造船を中心とした船腹増強によりまして、戦前保有量をこえる七百九十五万総トンを有する世界第五位の海運国に復活するに至りました。しかし、船腹増強即海運企業の発展を意味するものではなく、問題は、むしろ敗戦後、連合国の占領政策によって、日本海運企業が五千億円に上る喪失船舶の補償を打ち切られた上に、脆弱な経営基盤に立ち、造船疑獄まで引き起こしながら無理に船腹増強を行ない、背伸びした海運政策がとられたことであります。さらに加えて、国際的な海運動向の変化、新興国、特に東南アジア諸国の自国船主義の強化、便宜置籍船及び専用船の増加、アメリカのドル防衛によるシップ・アメリカン政策の強行などにより、日本海運企業は依然として弱体のまま低迷を続けておる現状でありますが、その実体は、池田総理の言われる高度経済成長の年、昭和三十六年度において、外航船舶の運賃収支は四億五千六百万ドルという空前の支払い超過を来たし、また昭和三十六年度末の資本構成におきましては、総資本五千一百六十九億円のうち、他人資本四千八十三億円で、償却不足累計八百二十九億円、約定延滞額八百三十億円という劣悪な条件下にあるのが日本海運企業の現状であります。
 こうした日本海運企業の現状を前提にいたしまして、まず池田総理にお尋ねをいたしますが、日本の海運企業が、劣悪な資本構成と高金利の条件下で、経営規模と運営の適正化をはかる意図で、利子の猶予と金融機関中心主義の企業集約を行ない、日本海運企業の再建をはかろうとしておりますが、むしろ問題は、こうした単なる国内対策より、海運を根本的にささえる貿易構造の基本的欠陥を改めなければならないのであります。特に、海運と密接な関係にある日本の貿易が、外交的に最も弱い立場にある対アメリカ貿易に依存することがきわめて高いところに、わが国海運不況の原因があるのでありまして、しかも常に輸入制限に脅かされるような一方的貿易構造を転換して、バランスのとれた貿易構造とするため、ココム制限を撤廃し、ソ連、中共等、対共産圏貿易及びアジア・アフリカ圏貿易の積極的な発展をはかるお考えがあるかどうか、御所見を承りたいと存じます。
 さらにまた、昨年七月、政府機関である運輸省が出した海運白書には、「日本海運を外から妨げようとする要因は、昭和三十六年を通じて漸次その性格をはっきりと現わしてきた。その一つは、伝統的な海運企業活動の自由に対する米国政府の干渉であり、他の一つは極端な自国貨自国船主義の台頭である」、このように指摘をしておりますが、このことは、特に北米航路等におけるアメリカ船の圧迫、日本船の積み取り比率が昭和三十四年四九%、昭和三十五年五五%、昭和三十六年三九%と低下をしたことは、バイ・アメリカン、シップ・アメリカン政策から発したものでありまして、海運における平等互恵の原則や海洋自由の原則を侵害しているボナー法の改正にも関係のあることを、盟外船の跳梁とともに強く指摘をしております。しかもその対策の急を告げており、欧州におきましては十カ国の運輸担当閣僚は、昭和三十七年三月と五月の二回にわたりましてロンドンに会合して、米国政府の措置に対する欧州海運国としての対策を協議していることも報告しております。この際、政府は、末端の政府機関が指摘するまでもなく、日本海運を積極的に再建するため、対米従属的な外交を捨てて、自主独立の積極的な外交を推進すると同時に、最近、綿製品規制等に見られるような強引なアメリカの一方的政策を改める意味からも、是は是、非は非として、経済外交をあらゆる面で強化するお考えがあるかどうか。本日は外務大臣が欠席しておりますので、あえて政府の方針について総理の御所見を承りたいと存じます。
 次に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、本案の集約併合が、金融機関中心に進められ、大体六つのオペレーター中心に集約化される傾向にありますが、この場合、オペレーターと、オーナーの関係、弱小オーナーの救済等の深刻な問題をいかに処理するのか。さらにまた、金融機関中心の集約化は、他人資本に依存する海運業界の現状から、本案は、海運企業の再建というより、むしろ債権の保全と金融系列産業の拡大にまで発展をし、過当競争排除の目的による集約化は、逆に六つの熾烈な競争に発展するといった、全く目的に反した結果を招来することが考えられますが、金融系列産業との関連による海運企業集約化について、その御見解を承りたいと存じます。
 続いて通産大臣にお尋ねをいたしますが、先ほど海運白書について申し上げましたように、日本海運企業発展を阻害する二つの要因の一つである自国貨自国船主義についてであります。今や諸外国は、程度に大小の差はありますが、国際収支の改善、自国の貿易保護、新興諸国のナショナリズム、特にアメリカのドル防衛等の理由から、政府みずからの自国貨自国船積みを強制する傾向は、海運業界の多年にわたる公正にして自由な民間企業活動に対し政府の強権的介入であり、その一例は、昭和三十六年十月、富士製鉄、日産自動車の輸出入銀行借款物資について、輸出入銀行は、その船積み運賃のうち、米船によって輸送するものについてのみ融資を行なう方針を出しました。その後におきましても、このほか東京電力、プリンス自動車、関西電力、第十二次綿花借款等、いずれも米国は、あらゆる手段を尽くして自国船優先を促進しようとしており、このようなことは、本来自由であるはずの国際海運活動を政治権力の介入によって阻害するものであります。また、このような現実に直面しながら、なおかつ、日本は、その上、便宜置籍船や専用船の大最出現により、自由な海運市場はますます圧迫され、わが国海運企業は根底からその地位をゆすぶられつつある現状であります。自国貨自国船主義並びに便宜置籍船及び専用船について、日本は早急にその対策を講ずる必要があると考えられますが、日本にその用意があるかどうか。通産大臣のお答えを願います。
 最後に、若干の問題点について、具体的に運輸大臣にお尋ねをいたします。わが国海運企業の現状は、単なる利子のたな上げや企業の集約合併のみで解決するような、なまやさしい性質のものではありません。すでに私は、総理、大蔵、通産の各大臣にお尋ねをいたしましたように、内に貿易構造の転換、外に強力な自主独立的な経済外交を推進すると同時に、日本海運企業特有の船質の改善、適正な造船計画、さらには、海運同盟、運賃同盟の抜本的な対策の樹立、また、海運市況安定のための運航調整と、航路別、企業別の調整、あるいは計画造船の結果生じたオペレーターとオーナーとの関係における系列排除の問題、内航船と外航船との関係、港湾対策、海運労働者の雇用対策など、運輸大臣の所管にかかわる問題で早急に解決を迫られておるものは山積をしております。これらの問題は、いずれあらためて委員会において審議するといたしましても、大臣は、去る十九日、衆議院における本案質疑の際、わが党の久保三郎君ほかの質問に答えられまして、海運企業の集約化、盟外船の問題、またシップ・アメリカン、バイ・アメリカン政策に対する努力を含めて、きわめて楽観的な答弁をされ、特に、アメリカにおける海洋自由の原則侵犯の思想が緩和され、順次好転しつつあると言われました。その表現においても、「外交交渉は、すぐ、できものの皮をはぐようなわけにはいきません」と、全くわけのわからない前提はあるにいたしましても、幾分の効果をあげたとまで言明されておりますが、一体いかなる効果をこの面においてあげられましたのか、具体的にお示しを願いたいと存じます。
 さらにまた、わが国海運の発展を阻害する運賃同盟に対する干渉、自国貨自国船主義の排除は、単なる形式的外交交渉では、わが国海運の権益を守ることは不可能であります。政府はこの際、よろしく防衛的対策として海上運送法を改正すべしとの意見に対し、政府もまた、このことの必要性を認めながら、経済協力機構加盟問題の経緯などから、これを見合わせた事実に対しまして、大臣は、それはやはり、「それを出すことによっていろいろな各国の反感その他がありますので」、という、これまた答弁をされておるのであります。対米海運問題一つをとりましても、シップ・アメリカンに見るボナー法、バイ・アメリカンに見るウェーバー条項などのある現在、日本海運企業再建という重大責任のある主管大臣たる運輸大臣のこの卑屈なものの考え方が、外に軟弱外交、屈辱外交となり、わが国海運企業再建はまさに百年河清を待つのたとえのとおりで、この際は、断固として厳然たる自主独立の態度を堅持し、改めるべきは改め、もって海洋自由の原則に立つわが国海運の権益を守るべきだと思いますが、この際、運輸大臣の明確な御答弁を願います。
 以上、本案をめぐる基本的問題点につきまして若干の質問をいたしましたが、結論的に、本案は、わが国海運企業再建整備にはまことにほど遠く、むしろ五年後さらに起こるであろう混乱を予想し、最後に、本案の強行によりまして、海運資本家は初年度百十八億円の利子たな上げ資金を獲得し得ることになりますので、きわめて現実離れのした集約合併を促進するでありましょうが、結果的に、海運関係労働者、特に陸上勤務者に大きな犠牲をしいることは、火を見るよりも明らかであります。これに対する対策は何ら本案に明示されていないのでありまして、きわめて冷酷非情、片手落ちの法案であることを指摘いたしまして、との点を含めて、あらためて委員会等で具体的に審議をすることといたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 104315254X01119630227_009

発言者: 中村順造

speaker_id: 23728

日付: 1963-02-27

院: 参議院

会議名: 本会議