小平忠の発言 (予算委員会)
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○小平(忠)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十九年度予算案三案につきまして、政府案並びに社会党提出の動議に反対し、民生社会党提出の動議について賛成の趣旨を明らかにせんとするものであります。(拍手)
私が政府案に反対する第一の理由は、政府案が依然として失敗のあと歴然たる所得倍増計画に準拠して編成されている点であります。
なるほど、政府案編成の前提として、明年度の経済成長率は実質七%と想定して、本年度の実質八・二%よりも低目に押えております。消費者物価の上昇がとどまるところを知らず、かつまた、国際収支の均衡がすこぶる不安定である現在、このような経済見通しに立つことは当然でありましょう。ところが、実際の経済の動きはどうでありましょうか。
まず、去る十二月十六日預金準備率の引き上げが金融機関に指示され、いわゆる窓口規制が始められました。この金融引き締めは、金融機関の融資の資金量の引き締めであり、また窓口において融資先を選別するという形をとっておりますが、この引き締めと並行して、中小企業の倒産の増加、不渡り手形の激増となっております。政府は、池田総理をはじめとして、不健全経常や思惑がそれらの原因であると申しておられますが、もう一つの現象として見のがすことができないのは、手形サイトの長期化であります。私の手元に中小企業金融公庫の調査した資料がありますが、これによれば、百二十日以上の手形を発行していた親企業の数は、三年前の昭和三十六年の五月には全体の二六%であったのが、昨年九月には何とこれが五二%となり、年末に向かってさらに激増しております。最近公正取引委員会がついに手形サイトの調査に乗り出しましたが、この点は金融引き締めの影響を下請けの中小企業に転嫁せんとする大企業の常套手段なのであります。しかも、政府は一-三月を予定していた窓口規制を四-六月に延長するようすでに内定しております。したがって、大企業の金融操作として、中小企業圧迫はますます過酷になりましょう。
一方、大企業の設備投資活動を見ますと、鉄鋼業を例にとりますと、昨年秋より再び大手大会社の設備投資競争が再開されております。一時中止していた八幡、富士の増設工要は再開され、住友、川鉄は増資を済ませて高炉増設に踏み切っております。昨年より鉱工業生産も経済成長も低く見積もるという政府の方針に反して、鉄鋼の生産過剰体制の出現は目に見えております。どこに一体金融引き締めが行なわれているのかと思われるのが大企業の現状なのであります。
いまや、昨年末からの金融引き締めで確かに銀行貸し出しは抑制されておりますが、生産は依然として高水準にあります。したがって、輸入は増加の一途にあります。金融引き締めの効果は確かに中小企業に波及しておりますが、金融引き締めがどれだけ国際収支の改善に役立ったか、また、今後役立つかどうかは、きわめて疑わしいのであります。いまや生産過剰、供給過剰、そこで企業収益が低下し、そこから脱出するために生産を増加して再び輸入をふやすという悪循環がわが国経済の体質にしみ込んで、三十九年には再びそれが発熱、発病しかけております。したがって、政府の経済見通しとは関係なしに経済の悪循環が深刻化しつつあります。
このような情勢の推移に備えるかまえも準備も政府の予算編成には何ら発見し得ないのであります。
私が政府案に反対する第二の理由は、一月二十一日の総理の施政方針演説では、高度福祉国家の実現という高い目標を掲げられました。ところが、予算編成上にあらわれた福祉とは、要するに物価高に対する事後処理にすぎないのであります。
政府が二千億減税と称する税制改正の内容は、国税において差し引き八百三十六億円の減税、地方税においては差し引き三百三十八億円の減税、合計千百七十四億円の減税にすぎません。しかも、減税案の中心となっている所得税減税六百四十九億円の内容は、扶養家族四人の給与所得者については、年収約四十七万一千円までを免税にするものであります。この年収四十七万一千円という水準は、実は大蔵省が三十八年度における国民の標準家計支出規模であるとして税制調査会に正式に意見を提出しているところであります。政府みずから三十九年度には消費者物価が四・二%上昇すると見込んでいるのでありますから、三十九年度の標準家計水準はこの金額を当然に上回るものであります。すなわち、今回政府が制定せんとする所得税の免税点では、家計支出は必ず赤字にならざるを得ないことを政府自身が認めているのであります。
また、歳出面において見ますると、生活保護基準の一三%引き上げ、失対労務者の日給の四十三円九十銭の引き上げなどは、いずれも三十八年度中の消費者物価の値上がりについての物価手当にも当たらない金額なのであります。
また、住宅対策について見まするならば、公営住宅建設六万四千五百戸、住宅金融公庫住宅が十三万戸、公団住宅三万六千戸、合計二十三万戸の建設予定になっておりまして、公営住宅の占める割合は三分の一強にすぎません。いま、東京都の調査によりますならば、住宅困窮者の五一%が都営住宅すなわち公営住宅を希望しているのでありまして、住宅政策の中心は公営住宅建設でなければならないことはすでに天下周知の事実であるにもかかわらず、政府案は依然としてこの点を、無視とは言えませんが、はなはだしく軽視しておるのであります。
このように、政府案の編成を検討いたしてまいりますと、国民の日常生活の保障と、その水準引き上げに全く通り一ぺんの予算増額を計上しているにすぎないのであります。わが国の政治通念といたしましても、これをもって国民福祉を増進するものとは断じて認められないのであります。
さらに、農林漁業対策費、中小企業対策費など、いわゆる経済格差是正対策予算につきまして、私は各論的な詳細についてはここでは省略いたしますが、どうしてもここに触れておかなければならないことは、政府は予算案と並行して特定産業振興臨時措置法案をすでに提案済みであることであります。
この法案は、石油化学、自動車などの三つの産業及び政府が政令で指定する産業については、企業の合併、資本の集中を促進せしめ、かつ同一産業内部の企業の共同行為を大幅に許容しようという新しい経済秩序法でありまして、政府が今後の開放経済に対処する産業体制についての基本方策であります。私どもも、今後の国際競争力強化のために大企業間においても企業合同や共同行為の必要を認めますが、これは大企業の私的独占と高利潤を保障するためではありません。さらに、大企業をしてより大きく社会的責任、公共的利益へ奉仕してもらうためにその必要を認めるものであります。ところが、政府案は、格差是正予算については若干の予算増額が行なわれているだけで、政策の質的な大前進はありません。政策の質的大前進は大企業のための特振法案において果たされようとしているところに、政府の格差の是正予算の隠された本質があると思うのであります。
さて、しからば、政府案をいかに改善したらよいか。これについては、すでにわが党の組み替え動議も提出されておりますので、私はこれを繰り返し説明し紹介する重複を省略させていただきます。
私が政府並びに自民党の各位に申し上げたいことは、国民福祉予算編成は、予算編成の財政技術や人気取りのムードで終始してはならない、勇断をもって福祉増進の政策重点をつくれということであります。私は、この政策重点として、国民健康保険の世帯員に対する七割給付を四十年度までの二年間で完了すること、公営住宅建設を年間三十万戸に増加すること、この二点を国民福祉増進の当面の突破口とするよう政府と自民党の各位に強く要望するものであります。
なお、社会党案につきましては、はたして昭和三十九年度という限定された年次における政策主張とは考えられませんので、残念ながら反対いたします。
以上、政府案、社会党案に反対、民社党案に賛成いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)