田口助太郎の発言 (オリンピック準備促進特別委員会)

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○参考人(田口助太郎君) お答えいたします。
 映画というものは、かければ幾らでもかかります。劇映画の場合でも、まあ一千万くらいから何億とかける映画、外国にいけば何十億もかける映画というようなものがあります。したがって、映画は、予算面から見ると制限がないというような性格の商品であります。あるいは、芸術といいましょうか。したがって、ある程度の限界は当然守らなければならない。
 しかし、日本の国民に出して、あるいは私たちがいままで記録映画をずっと見まして、「民族の祭典」が最高である。その後ずいぶんできておりますけれども、あれが最高である。これは、私自身ばかりでなく、監督以下全部が、今度の映画をつくるについて見まして、そして全員一致の意見で、いままでずっと幾つもつくられたけれども、あれが最高である。あれがつくられてから二十八年、あらゆる科学技術は進歩しておりますし、芸術も相当いろいろな方面に発展しておる。それが二十八年後に少しも古さを感じないし、りっぱな映画である。しかし、日本も映画国としては世界に一、二を争う技術を持っておる国でありますので、映画技術的には決して「民族の祭典」に劣るようなものをつくりたくない。あれ以上のものをつくりたいという考えでスタッフ一同ががんばっております。しかし、そういう「民族の祭典」を上回るものということになりますと、なかなか現在の——あの当時は、国が予算をおかまいなしでやりましたので、相当現在の金に直せばかかったと思います。いま、あれほどはかけられないのですが、一番問題になるのは、私たちは、予算が少ないために、リハーサルが一回きりできなかった。選手強化というものは数年前からやっておりましたけれども、私たち映画をつくる側も選手と同様に強化しなければならないと思います。選手が新しい世界記録をつくるために、人類の持つ、人間の持つ最高のエネルギーを出すと同様に、われわれ映画人自身も、あの瞬間は選手に負けない技術と精神力を爆発させなければならない、そのためには訓練期間が非常に少なかった。昨年の国際スポーツ大会に技術的テストをやりました。それに基づいていろいろ反省をいたしました。しかし、それの完成後は、予算の都合上ストップ、全員解散というような状況でありまして、ほんとうにわれわれが動き出したのは、二月になって、事務局を入れて二十名くらいとなり、七月になってそれが五名ふえた、八月一日、十六名ふえた、この九月に二十名ふやす、九月十五日に三十八名ふやす、それから本番時になりまして、十月一日から百八十六名を動員する、こういう計画でやっております。したがいまして、ほんとうの意味の訓練期間というものは、大部分が十五日間の訓練であの映画をつくると言わなければならぬ、これでは、なかなか人件費その他がオーバーであるというようなことで、私は、会長の立場とすれば、一日も早く訓練をしたい。最高時には三百人の人間を出すのでありますから、これらのチームワークとか技術というようなものの準備に相当万全を期するために、予算があれば、もっと早く選手強化と同じくらいにやってみたかったと考えております。予算面としては、もうここまで来ては、あまり期待できませんが、しかし、われわれは、予算があれば、一カ月でも期間を早めて、十月一日と言わず、半月でも一カ月でも早く全員集合してもらって訓練をしたいというのが私の希望であります。
 もう一つ大きく心配されるのは、現在でも、監督と責任者である私とがいろいろ議論をし、今後本番時になってくると、相当大きくけんかをしなければならないであろうと覚悟しておりますのは、フィルムの問題であります。
 フィルムは、現在予算では十万三千メーターでございまして、仕上がった作品から見ますと、二十三倍であります。ニュース映画は大体十倍ぐらいの損耗率でありますが、二十三倍というような、よけいとるというようなことで、十万三千メーターの予算でやっている。したがって、普通の映画づくりの常識から見ますと、非常に多いというような感じを受けられると思いますし、またわれわれも、二十三倍あればというふうに考えておりました。しかし、これを競技別に割ってみたり、それから機械台数で割ってみたりしますと、非常に少ないということが言えると思います。
 たとえば、今度準備いたしました機械は、アイモと申しまして、よく議会などでも手持ちでやっている機械でございます。これが、ピーク時は三日間でございますが、四十六台出ます。これは、全部ニュース七社から借り上げて出る機械でございます。それからアリフレックスと申しまして、大体それより大きい機械でございますが、これが四十七台ピーク時に出ます。それからハイスピードはこれは非常に高いものでございますので、小さいハイスピードだけ二台買って、あとは劇会社からそれぞれ一台づつ貸してもらう計画を立てまして、総計いたしますと約百台になる機械がピーク時に出ます。しかし、これはピーク時でありまして、毎日それだけの機材が出るというものではありませんで、これを平均して大体半分というふうに私は考えてみまして、平均して、アイモが二十三台、アリが二十四台、ハイスピードは、これは七台が全部出ますが、日数が少ない。
 アイモが二十三台、半分にしまして、一分間に大体二十七・五メートル回ります。したがって、一つのアイモの機械で六分間一日に平均回してもらうといたしますと、五万六千九百二十五メートル要ります。アリフレックスは、平均して半分の二十四台にいたしまして、一日十二分回してもらうといたしまして十一万八千八百メートル要ります。ハイスピードは、アリ、アイモの五倍の速度で大体回す計画でありますので、十二分間に一台の機械が千六百五十メートル回ってしまいます。したがって、十二分間回すということは、一台の機械で一万一千五百五十メートル回る。これは七日間ぐらい予定しておりますが、それだけでも八万八百五十メートル。総計いたしますと、二十五万六千五百七十五メートル。
 一つの機械が、平均いたしまして、一番多いので十二分、少ないので六分というような、非常にこれは常識で考えられないような分数きり回せない。それでも予算の二倍半はかかってしまう。一つの機械が六分間、一日じゅうに六分間ということは、これをどう制限するか。一台の機械で四時間も五時間も回すメイン・キャメラもあります。また、マラソンのように、沿道で一分間で済むものもありますが、とにかく、フィルムが多くなければいいものはできないというので、いろいろ苦心しておりますが、なかなかこの点が、監督とプロデューサーの私とが、予算面でこれからも相当やり合わなければならない。ほんとうの芸術的良心に従ってやるとすれば、おそらくそういう要求以上のものが出るであろう。しかし、日本の財政その他の面から見て、現段階では、既定分の十万三千メートルで、三千メートルぐらいはすでに使っておりまして、本番には十万メートルぐらいという点で、この点が、理想の映画をつくるということについては、私としては非常に心配であるということを現在考えております。
 大きなよりよい映画——機械台数も、ぶっつけ本番でございまして、機械台数が非常に多いということが、フィルム量を多くする原因であります。劇映画の場合には一台の機械で大体できる。したがって、ピーク時には百台近くの機械を出すというようなやり方がフイルム量をたくさん費す。予算の面から機械台数を減らそうかという考えも持ちましたが、しかし、ぶっつけ本番、いついかなるときにどんなことが起きるかわからない。監督のイメージどおりに、劇映画ならば、監督が、泣いてくれとか笑ってくれ、悲観そうなかっこうをしてくれということは注文がつきますが、今度の場合は世界一流の大スターでありますけれども、残念ながら、われわれ映画人の要求するようなポーズはしてくれません。したがって、機械を相当方々に据えまして、単なるいわゆる記録ではない、非常に創作的な、永遠に残るものというような考えでいきますと、機械台数を制限いたしますと、シャッターチャンスを落とす。あるいは監督のイメージに遠いものがとれてしまうという形で、大体場所その他の制約から、これだけは置けるという数は各競技団体から了承を受け、準備、設定をする場所等も獲得をしている点から出た数字でございますが、しかし、この点も、機材をこのまますると、六分から十二分というほどきり、平均に回せないというような状況である。それでもあれですから、現在の予算からいくと、大体二分から四分、平均いたしますと。全体の機械台数の半分の機械が十五日間動くとして、現在のフィルムから見ますと、二分から四分くらいが一台平均の回し量であるというようなことで、非常にさびしく心配する点だと思います。
 大体私の会長としての立場で、今後見通され、現在不便を感じておると思うものは、以上のものが大きなものであると思います。

発言情報

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発言者: 田口助太郎

speaker_id: 8931

日付: 1964-08-31

院: 参議院

会議名: オリンピック準備促進特別委員会