椎名悦三郎の発言 (外務委員会)

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○国務大臣(椎名悦三郎君) 原子力潜水艦の日本寄港問題につきましては、従来国会において再三にわたり政府の見解を明らかにしてまいりましたが、今回寄港を正式に決定いたしました機会に、本問題に関する政府の考え方をあらためて表明いたしたいと存じます。
 まず第一に、原子力潜水艦の安全性の問題について申し上げます。科学が進歩すればするほど、われわれはそのことが人間生活の安全に及ぼす影響について一そう慎重を期さなければならないことは当然のことであります。そのためには科学的、理論的な見地から安全の確保がはかられなければならないことは申すまでもないことでありますが、さらに重要なことは、その安全性が実用の面においても確保されておるということであります。原子力潜水艦は、政府が何回も繰り返して言明してまいりましたとおり、すでに実用に供されて以来約十年の歳月を経過いたし、その間、米本国はもちろん諸外国の港に随時出入し、原子炉に関する事故はもちろん、放射能の被害を生じたことも一回もないという事実を強調いたしたいのであります。このことは、原子力潜水艦の安全性を考える場合に、何よりも重要視しなければならない点であると考えます。
 しかしながら、わが国におきましては、原子力に対する特殊の国民感情にかんがみまして、国民に無用の不安を与えることを避けるため、過去一年八カ月の期間にわたって、政府は原子力潜水艦の安全性について慎重な検討を続けてきた次第であります。もっとも、原子力潜水艦は軍艦である以上、原子力商船の場合とは異なり、相手国に対し、安全性に関する資料につき軍事機密に属するものの提供を要求することはできないのであります。このことは、「海上における人命の安全のための条約」においても、原子力船に関する規則は軍艦には適用しないこととしている次第であります。しかしながら、政府といたしましては、米国政府と累次の話し合いを続け、最大限可能な資料と情報の入手につとめ、これを基として慎重な検討を重ねたのであります。その結果、今回原子力委員会において、原子力潜水艦の寄港は、米側の保証と日米両国が行なうべき措置がそのとおり確保されるならば、国民の安全に支障を来たすものでないことが確認されたのであります。特に原子力潜水艦が出港の際排出する冷却水に含まれる放射能の許容基準につきましては、米国の原子力潜水艦の基準も、わが国の法令に定められた基準に完全に適合することが確認されておるのであります。このことは、実際に原子力潜水艦が寄港した米国や諸外国の港湾において、人体に害を及ぼすような放射能の被害は全く起こっていないという事実と相まって、原子力潜水艦の安全性を強く裏づけていると信ずるものであります。政府といたしましては、放射能に関する安全性についてはさらに万全を期することとし、原子力潜水艦の入港が予定されている港につきましては、入港の事前と事後において放射能の検査を実施することとし、目下せっかくその準備を進めている次第であります。
 なお、昨年米国の東海岸の大西洋海上において生起しましたスレッシャ一号の沈没事故につきましては、すでに調査の結果、事故が原子炉の故障によるものでないこと、さらに、放射能の異常は検出されなかったことが明らかにされております。いずれにしましても、スレッシャー号の事故は特殊の深海潜航の試験中に起きたものでありますから、通常の運航に従事しつつ寄港するわが国の港湾あるいは近海においては起こり得ない性質の事故であることは申すまでもありません。
 次に、原子力潜水艦と核兵器との関連について申し上げます。米国の原子力潜水艦には、大別して、いわゆるノーチラス型潜水艦と、中距離核誘導弾を装備したポラリス潜水艦の二種類があることは周知のとおりであります。今回の日本寄港を決定したのは前者に属するものであることは、過日発表した日米両国政府間の交換文書に明らかにされているところであります。今回の決定が将来におけるポラリス潜水艦の入港を約束するものでないことは当然のことでありまして、現に日米間にポラリス潜水艦の入港に関し話し合いが行なわれた事実はなく、昨年わが国を訪れたギルパトリック国防次官は、わが国に対し、ポラリス潜水艦の寄港を求める意図はない旨を明らかにしているのであります。なお、米国は将来ノーテラス型潜水艦に核魚雷を発射し得るサブロックを装備する計画を持っていることは事実であると承知しております。しかし、このサブロックは現在なお開発実験中の段階にありまして、原子力潜水艦にはいまだ現実に装備されていないものであります。いずれにせよ、核兵器の日本への持ち込みは事前協議の対象となるわけでありまして、しかも、米国政府は事前協議事項について、日本政府の意図に反して行動しない旨を、岸・アイゼンハワー共同声明によって明確にしております。さらに、このことは今回米国政府が提出した文書においても再確認されているのであります。したがいまして、ポラリス潜水艦についてと同様、今回の決定が当然サブロックを搭載した原子力潜水艦の寄港を承認したというのは、明らかに事実に反するのであります。まして、日本政府の知らない間に、核武装をした原子力潜水艦が日本に寄港するというような事態は絶対に起こり得ないことであります。
 原子力潜水艦は、その安全性さえ確認されれば、日米安保条約のもとにおいて他の米国艦船と同様当然に日本への寄港を認めるべきであることは、政府が一貫してとってきた方針であります。日米安保条約のもとにおける防衛上の日米協力が、十数年の長きにわたって日本の安全と平和に寄与してきたことは厳然たる事実であります。この意味におきまして、原子力潜水艦の日本寄港も、日本の安全に貢献こそすれ、決して害を及ぼすものでないことを確信するものであります。
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発言情報

speech_id: 104613968X00319640903_002

発言者: 椎名悦三郎

speaker_id: 20886

日付: 1964-09-03

院: 参議院

会議名: 外務委員会