舘林三喜男の発言 (農林水産委員会)
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○舘林委員 入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律案の現地調査第一班として、六月三日から六日までの四日間、秋田、山形の両県に派遣され、入り会い林野等の実情について調査してまいりましたので、調査内容を簡単に御報告申し上げます。
調査班は、東海林稔君、千葉七郎君、林百郎君、それに私を加えた四名の派遣委員と、現地参加委員として秋田、山形両県の全調査日程に参加された笹山茂太郎君の五名で編成されました。
われわれは、まず、県庁において、知事をはじめ関係係官から、県内における入り会い林野等の現状と問題点及び県としての要望事項等について、総括的な説明を受けた後、町村会、森林組合連合会等地元関係団体から意見聴取を行ない、さらに、各県とも一カ所ずつ入り会い現地において調査を行なってまいりました。そこで、本報告の内容といたしましては、時間の都合もありますので、調査日程に従い、以上の調査内容の要点のみをかいつまんで申し上げることといたします。
まず、秋田県について申し上げます。秋田県における入り会い林野等の現状は、その面積十六万五千ヘクタールで、民有林野中に占める入り会い林野等の比率は全国第一位となっておりますが、そのうち、原野がかなり多く、また複数の部落が入り会う、いわゆる村々入り会いの形態が残っているという特徴があります。
県においては、これらの入り会い林野等の利用増進をはかることを農林業施策の重点として取り上げ、未利用地開発計画を策定し、草地開発公社、林業公社等の設立を見て、その実施に着手する段階にきております。しかしながら、入り会い林野等の権利関係が整備されていない現状に当面して、これらの施策の有効な推進が妨げられているという悩みをかかえている状態にありまして、その打開策として、国による入り会い林野等の権利関係の整備についての制度上の解決が望まれているのであります。この点について、秋田県知事は、今回の法律案は、このような県の開発計画を推し進めるにあたって時宜を得たものであるとし、歓迎の意を表明したのであります。しかしながら、同知事は、法律案は、あくまでも権利関係の近代化そのものを内容としているにすぎないのであるから、それは入り会い林野等の開発のための糸口となるものと理解すべきであって、権利の近代化のみに終わってはならない、近代化の施策とあわせて、農畜林の総合的な国の助成施策が講じられなければならない旨を強調し、その点についての配慮を特に要望したのであります。
次いで、秋田県における市長会、町村会、森林組合連合会等の団体を代表して、町村会長より、法律案についての賛意が表明された後、その早期成立が要望されました。さらに、近代化後における農林業経営の健全な発展、特に協業経営の発展をはかるため、新しい農林業を含めた協業組織、現行生産森林組合の制度上の規制の緩和等について、今後の課題として検討を要望する旨の陳述がなされたのであります。
以上、県当局及び関係団体の陳述を受けた後、南秋田郡昭和町豊川地区の現地におもむき、部落の代表者らより事情を聴取いたしました。当入り会い地は、秋田市内の部落との入り会い山であり、旧来の村々入り会い地の残存したものでありまして、両部落の持つ旧来よりの持ち分の割合と現在の利用の実態とが異なっているために、部落民自身の積極的な労資の投入がはかれないという実情にあり、それを反映して、入り会い林野の大部分は利用が放置されている状態にあったのであります。これについて、関係者らは、法律の制定を機に、県当局等の助言指導を得て権利の調整を行ない、新しく造林を進めていきたいという熱意を表明したのであります。
以上が秋田県における現地調査の概要でありますが、次に、山形県について御報告いたします。
山形県における入り会い林野等の面積は八万六千ヘクタール、実測すれば十万ヘクタールをこえ、民有林野面積の約三〇%に達しております。本県におきましては、秋田県の場合とは異なり、村々入り会いは比較的少ないのでありますが、利用が粗放であるという点は、秋田県の場合と同様の状況にあると見られております。また、町村合併を契機として、生産森林組合に移行した入り会い林野等が二十近く存在している点が、秋田県とは若干異なった特徴であります。
県当局におきましては、昭和三十六年度から部落有林野整備促進事業を行なってきており、モデル地域を指定し、権利関係の近代化と利用や経営の合理化に要する経費の助成を行なっているのでありますが、登記、税制等の問題が制度的に解決されていないため、県単補助事業としては限界があると説明しております。これらの問題意識の上に立って、県は、入り会い林野等の権利関係の近代化の措置を強く望んでいたところであるとし、今回の法律案の早期成立を要望し、特に昭和三十九年度から開始された林業構造改善事業の推進のためには、入り会い林野の近代化事業が可及的すみやかに行なわれる必要があるとしているのであります。また、近代化の措置と相まって、関連農林業助成施策を要すること、及び協業推進のための生産森林組合の制度上の改善を検討すべきことを要望され、この点につきましては、秋田県の場合と同様であります。
県当局の説明について、派遣委員から、近代化の際の全員同意という法律案の考え方が実施上問題はないか、また、既存の生産森林組合の活動状況はどうかという点について、質問がなされました。これに対して県当局は、全員同意は、県として適正な指導につとめることによってその実現は可能であること、また、既存の生産森林組合については、町村合併の過程で新町村に財産が引き継がれることをおそれるのあまり、単に所有名義を組合名にすることを目的として設立されたものであるから、なお旧来の慣習による運営が続けられているために、組合活動はきわめて不十分である旨を答え、協業組織がその目的を発揮するためには、権利関係の近代化とともに、経営意欲の盛り上がりが不可欠の条件であることの示唆を受けたのであります。
県当局の説明及び要望に続いて、市町村代表、町村会代表、県森林組合連合会代表、県林業協会代表等よりの法律案に対する意見及び要望がなされ、要約すればおおむね次の点が述べられたのであります。
一、林業経営基盤の充実をはかるためにも、法律案の制定に賛成であること。
二、林野の細分化、集中、分散のおそれがあるので、生産森林組合などの協業経営の方向に指導推進するとともに、これについて税制上の優遇措置を検討すること。
三、権利関係近代化の場合の登記の簡略化、登録税の減免等の特別措置が必要であること。
四、林道開設などを進めて、立地条件の改善整備をはかること。
五、近代化事業の補助率、補助単価等を構造改善事業並みに引き上げること。
六、特別融資制度を検討すること。
七、生産森林組合が施設森林組合に加入して、その協業を進めるようにすること。
以上のほか、これらの説明の中で、本県では、近代化して個別分割利用を望んでいる例も比較的あることが注目されたのであります。
現地の実情調査は、上山市菖蒲地区公民館において、上山市当局及び部落代表者の説明及び意見を聴取して行なったのであります。同地区の入り会い林野面積は、登記簿上は八十九町歩で、見込み面積では六百六十ヘクタールに及び、権利者は部落総戸数八十六戸のうちの六十七戸であります。この地区の入り会い林野は、筆数が三十三に分かれ、各筆ともに所有名義者が異なっていて、延べ百六十六名に及び、その大半はすでに死亡しておりまして、その子孫で地区外に住所を持ち、実質上は権利がない者が多いのであります。大正二年と昭和十三年の二回にわたって一部の分割利用を行ない、現在十二筆が個人利用にゆだねられており、残りは共同利用となっているのであります。分割利用地は、個人による造林が若干行なわれ、また一部はその山の利用権が他部落民に移動しております。共同利用地のほうは、薪炭需要の減少もあって、ほとんど利用されていないのであります。
この地区の特徴としては、部落が私設登記簿を持ち、移動があれば、権利証のごときものを発行したり、裏書きしたりして、その帰属を把握しておることであります。これは、正規の登記簿がすでに実質的な利用権とは乖離しているため、それにかわる土地の管理支配の権能を部落の入り会い権者が確保するための窮余の策として行なっているものであると考えられるのであります。しかし、この私設登記簿があるからといって、それを利用して国の融資を受けるわけにはまいらないのでありますから、そのためにも、権利の形式と実質とを一致させることが必要となっているのでありまして、部落の人々が今回の法案の成立を望んでいることが強く印象に残ったのであります。
なお、部落民の今後における経営についての意見は、立地条件に応じて数戸ないし十数戸による複数の生産森林組合等を設立して、協業により主として造林を行ないたいとのことでありまして、比較的労働力流出の少ないこの地区では、その方向は非常に有効なものであると見られるのであります。また、本年度より林業構造改善事業が行なわれることになっているということから、早急な法律の制定が望まれておるのであります。
入り会い林野等に関する秋田、山形両県における現地調査の大要は以上のとおりでありますが、われわれは、今回の調査目的外の問題ではありますが、せっかくの機会でありましたので、秋田県において、八郎潟新農村建設事業団による新農村建設事業の進捗状況について現地調査を行ない、関係者が熱心に事業の推進に挺身されておる姿を見てまいりましたことを特に申し添えます。
以上で第一班の調査報告を終わりたいと思いますが、われわれは、今回の調査を通じ、入り会い林野等の現状と問題点について十分なる認識を深めることができたわけでありまして、今回の調査に対し絶大なる御協力を払われた秋田、山形両県当局、秋田営林局、東北農政局、その他関係者各位に対し、この機会に衷心より謝意を表明し、簡単ながら報告を終わる次第であります。(拍手)