佐藤榮作の発言 (予算委員会)

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○佐藤内閣総理大臣 八木君は詳しく実情を調べてただいまのようなお話をされました。私もやはり山口県の出身でございますので、こういう部落問題、これはほんとうの身近な問題として今日も取り組んでおります。そうして、これはもう御承知のことだと思いますが、明治四年に出た基本人権の尊重、こういう形でものごとが進んでおりますから、私どものような明治生まれの者はともかくとして、大正あるいは昭和の生まれの諸君は、こういう問題についてはあまり関心はないだろう、かように私は思いますが、それにいたしましても、この部落を形成しておるそこに一つの問題がある、かように思いますので、この同和対策の基本として、生活環境を変えるというこの問題が一番先に取り上げられておると思います。私どもが、解放、同時にまた、一般お互いに基本人権を持っておるのだから、どこでも職業選択の自由もあるし、また居住の自由もあるから、どんどん出かけて雑居していく、こういうことが望ましいと思いますが、やはりお互いに過去の土地というものには特別な執着がありますので、どうしても雑居はなかなかしない。そういうところに一つの問題があると思いますから、生活環境の整備をすること、ここに私どもも入り、また衆議院選挙の際に出かけましても、ほんとうに楽に話ができるような、そういう環境をつくることがまず第一だと思います。
 同時にまた、ただいま御指摘になりました職業選択の自由はあるといいながら、どうしてもいまのような特定地区に住んでおると、就職の場合においてもいろいろな制限を受けるとか、あるいは阻害されるとか、こういうことがあるように思います。最近は、私久しぶりに選挙区へ帰ってみますると、戦争直後私どもが感じたような状態ではなくて、よほど変わっております。ことに都会に出かけておる諸君も非常に多いのでありますので、もうりっぱな実業家になられた方もあるようだし、あるいは大学の先生にもなる、そういう方もありましょうし、また、みずから社会的地位も高まっておる、かように私思いますので、こういうことはおそらくその他の面におきましても、同じように、落後者は生活に苦しむ、同時にまた、成功する者もあるというように、よほどその間は差別がなくなってきたと思います。しかし、積極的に政府自身が職業選択の自由、これを助け、また就職の場を提供する、あるいは教育の面でも特別にくふうをしまして、そうしてお世話するとか、これは別に同和の問題ではございませんが、昨日、産炭地の振興の問題で多賀谷君からもお尋ねがございましたが、長く貧困、また就職の道をふさがれておる、こういうようなところの家庭の子弟の教育、これはまたたいへんな問題だと思いますので、もう古い者はともかくとして、これから育っていく者、これにはいまのような差別的な感情を残さないように、基本的人権をそこなわないように、伸び伸びとした教育を提供する、こういうことを特に努力していかなければならぬと思います。こういう意味では、先生はもちろんのこと、そういう理解がなければなりませんが、同時にまた、村の長老諸君が、青少年の教育の場においても、あとにあとくされの悪いものを残さないように、そういう努力をしないと、今日の状態ではなかなか御期待に沿うようなわけにもいかないのじゃないかと思います。
 それからもう一つは、特殊な病気等があればなおさらのこと、これについての対策を立てなければならぬと思います。病気といえば、多く眼病、トラコーマ、こういうものがあげられるように思いますが、そういう点について特に留意していって、そうして、部落と一般との間の待遇あるいは差別、これをしなくても済むような自然な状況をつくることが何よりも大事だ。だから、いまの同和対策のねらいは、そういう意味の具体的処置に真剣に取り組んでいくことだ。しかも、これは一省だけの問題では実はないのでありまして、各省にまたがる問題だ。ただいま、たいへん農地解放のときの処遇なども御指摘になりました。確かに農林行政の面におきましても、こういう取り残される農民というものができないように特に注意しなければならないことだと思うし、中小企業におきましても、ただいま職業の選択の自由がございますから、在来のように皮革業だとか、特殊な事業だけに携わるということでなしに、これは独占的な地位が与えられたといって喜ばれるかわかりませんが、それはかえって逆で、むしろ一般と何らの区別なしに職業の選択が自由にできるのだ。そうして、しかも政府が、それがどこの出身であろうが、中小企業の育成強化をはかっておる。また零細企業の確立に政府自身が金融その他をつとめておるのでありますので、まあお世話をするほうから見まして、これはどこの出身だからということで差別待遇をしないようにすべきだ、かように思います。そういう意味で、ただいま言われたとおり、各省にもまたがるし、総合的な対策も必要だし、そこで全国民の問題として取り上げていく、こういうことでないとこの問題はいかないと思います。
 私はまことに残念に思いますのは、冒頭に申しましたように、非常に古い問題をいまなお取り上げなければならない、こういう実情にある。お互いの頭はよほど進みましても、社会的にはなかなか進まないものがある、かようなことを思うのであります。しかし、ただいまお話がありましたが、水平運動、水平社運動ということを言われました、けれども、ただいまはそういうようなことばも私どもは最近は聞かないようになっております。私は大学を卒業して鉄道に入りましたが、その当時は、ただいまの大正年間あるいは昭和の初め、そのころはただいまの運動がなかなか強くて、そうして至るところで荊冠旗も見受けた。しかしながら、最近はそういうこともないようであります。よほど平静に帰したと、かように私思います。同時に、同和対策を進めるのはいいが、意識して同和あるいは部落対策だと、こういうことで考えるところにまだ十分のものがないのじゃないだろうか。もっと徹底すると、同じようにスラム街はなくするんだとか、あるいは病気は片づけるんだとか、あるいは貧困と真剣に取り組むんだ、これはもう全部が同じように扱うんだ、こういうところまでいかないと十分の効果をあげない、かように私は思います。
 たいへん長い御質問に対してまた長い答弁をいたしまして恐縮ですが、私もかように思っておるような次第でございます。

発言情報

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発言者: 佐藤榮作

speaker_id: 21117

日付: 1966-02-17

院: 衆議院

会議名: 予算委員会