大和田啓気の発言 (農林水産委員会)
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○政府委員(大和田啓気君) 前の国会で赤城農林大臣から、農地法の改正について前向きに検討をさせるというお話がございまして、私どもも実は昭和三十七年の秋以来、農地制度研究会というものを省内に置いて、学者あるいは学識経験者等を入れて相当熱心にまた詳細に農地制度を検討いたしております。私どもといいますか、農地局では、その研究会と並行して、農地法を改正すべきとすればどこの点が問題であるかということを相当詳細に検討しておるわけでございます。時間がございますれば若干の論点御披露もいたしたいと思いますけれども、ただ、結論的に大まかに申し上げますと、私ども昭和二十七年に農地改革のあとを受けて農地法を制定いたしまして、現在の農地法の骨格は、戦後二十年長く維持されておったわけで、耕作者の地位を守るといいますか、土地所有によって、耕作者の犠牲において土地所有者が利益を得るようなことは、農地制度については避けなければならないという根本方針、あるいは農地制度が農業生産力を高める方向に運用さるべきだという、そういう根本的な精神においては、私は、農地法は現在でもなお十分その生命を持っておると思います。
しかし、一つだけ申し上げますならば、農地法の中で一番大きな問題は、やはり私は、小作制度についての法律の規定なりその運用であろうと思います。やや具体的に申し上げますと、先ほどもお話に出ましたけれども、二種兼業農家といいますか、農業所得よりも他の所得が多い、いわば農業を片手間としておるような農家が現在四割二分ほどございます。そしてその人たちが耕しておる土地が全体の農地の約二割二分程度でございます。しかし、この人たちは先ほど申し上げましたように、非常に複雑な内容を持っておりますけれども、相当多数の人が、主人公が工場につとめたり、あるいは会社につとめたりして、いままでのように五反歩なら五反歩あるいは六反歩なら六反歩という農地を全部耕す必要がないような経済条件になっておる者が相当あろうと思います。まあ、飯米は必要でございますから、二反なり三反なりはまず当分は耕すにしろ、とにかく、いま耕している五反なり六反なりは、全部はその耕作を継続する必要がないというふうに判断をし、また御当人たち毛そう考える人が私は数多くあろうと思います。しかし、小作料の統制額というものは、これは昭和三十年にきめましてから、水田で中田で反当にして千百円でございます。それから耕作権の確立ということで、これは日本の農地制度として非常に長い伝統で、先輩たちが非常な努力で築き上げてきたものでございますけれども、とにかく一たん貸せば、借り手が承知しない限りは土地が戻らないというふうに現実においてなっておるわけでございますから、五反歩、六反歩耕しておる人が、土地を売るつもりはないけれども貸してもいいという人たちが相当いても、うっかり貸すとあぶないということで貸さない、この人たちはほうっておいて荒らしづくりをして生産力を非常に落とすか、あるいは通常請負耕作といわれるように、やみ小作の形で人に耕させる、この場合の小作料というものは、地域によって違いますけれども、反にして一万円とか一万五千円とかいうのが決して珍しくございません。また、耕作者のほうからいいましても、ことしは耕すけれども、来年は耕すようになるかどうかという耕作権の保障は全然ございません。したがいまして、小作料を非常に低く押え、また耕作権を非常に強くすることが耕作者のためであることは間違いないけれども、同時にまた、新しく土地を借りてもう少し経営を伸ばそうという立場からいえば、それが大きな桎梏になって、小作料の水準というものは千百円ですけれども、現実に払う小作料は一万円とか一万五千円、法律上は耕作権は非常に強くなっておるけれども、事実上は請負耕作の形で、来年は耕すことができるかどうかという保障がない。そういう状態になっておることは、やはり小作制度の問題あるいは小作料の問題として当然正当に評価すべき時期に来ておるというふうに思います。ただ、先生も御承知のように、農地制度というものは、何といっても農業構造の基礎でございますし、小作料を動かすということも、いろいろ税制なり、あるいは米価等々にも影響があるところでございますから、私どももそういう問題意識を持ちながら、やはり取り扱いとしては十分慎重にやらなければならない、小作制度ばかりでなしに、農地法全体を通じて私は相当直すことが日本の農業にとってもう必要な段階に来ておるけれども、その取り扱いについては私どもの検討も深めると同時に、関係方面といいますか、いろいろな立場の人たちの意見も十分伺って処理すべきものだというふうに考えております。まあ、先生おっしゃるように、農地法の改正法案の提出ということはそう簡単にはできないでおるわけでございますけれども、農林省の中では、十分私が申し上げましたような角度から真剣に取り組んで検討をいたしておるわけでございます。
なお、農地管理事業団につきましては、この法律にもございますように、農地管理事業団が活動をしやすいように農地法の特例をある程度まで定めております。農地管理事業団が相手方になるような売買貸借は農地法の許可が要らない、あるいは農地管理事業団に土地を貸して、農地管理事業団がまただれかに土地を貸すというような場合は、耕作権の規定を除外する、また、十年なら十年ということで貸借をいたしますと、十年たって返してくれといえば返すことになるようなふうになっておるわけであります。また、農地管理事業団に土地を貸してまた貸しをしてもらう場合でも、不在地主の規定は除くと、あるいは一町歩の保有面積の例外は除くというような形で、農地管理事業団自身が活動をしやすいようには農地法についての特例の手当てをいたしておるわけでございます。
また、まあ第三の問題として、農地法を改正すればもう農地管理事業団なんかなくても農地の流動化が行なわれるという御議論もあるわけでございますが、私はそれは絶対そうではないというふうに思います。これは一つの例を申し上げましても、ドイツ、フランス等々において、農地法の規制というものは決して日本のようなきびしいものではございませんけれども、農地管理事業団類似の国家的な機関を置いて、そこで経営規模の拡大のために大いに苦心し、努力しておるわけでございますから、農地法さえ直せば、あるいは極端な議論として、農地法さえ撤廃すれば農地の流動化がいいような方向に向かうというふうに私は絶対考えておらないわけでございます。