福田赳夫の発言 (本会議)
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○国務大臣(福田赳夫君) 今回の減税は史上最大の減税だと言うが、それは減税の名の増税じゃないか、そういうようなおことばでございますが、これはいささか言い過ぎではないかと、かように思います。今回の減税は、お話のように、史上最大の三千六百億円、国民所得から見た負担率から申しましても、これは二%も一挙に減る、また、納税人口から見ましても、所得税二千二百万の人口が初めて二千万人に下がる、こういうことになりまして、増税というような見方がどこから出てまいりまするか、全く理解いたしかねるところであります。(拍手)政府は一方において、公債を発行し、一方において減税をする、これは矛盾しているのではないかというお話でございます。しかし、これはしばしば本席でも申し上げておるのですが、私ども、今日考えなければならぬことは、今日のような国民個々あるいは企業の蓄積状態、そういうような状態のもとにおきましては、政府が借金をしても国民に資産をお持ち願わなければならぬ、こういうふうに考えていかなければならぬ段階に来ておる、そういうような見地から、企業や家屋の負債を政府が肩がわりをする、そういうような気概をもって財政に取り組むことこそが今日のとるべき道ではないか、かように考えるのでありまして、一方においては大規模な国民負担の軽減をはかりながら、他方においては公債を発行する、さような考え方をとったわけであります。決して、公債が発行される、その消化を容易ならしめる、というような意味におきましてこの減税をいたすものじゃない。しかし、減税をいたしますれば、それだけ国民に余裕ができるのでありまするから、その余裕が国債の消化に貢献をする、これは当然のことです。公債で財政を運営するか、租税で運営するか、これは違いがあります。その違いはどうかといえば、租税の場合におきましては、国家の強権をもって、国民の資産、所得から徴収するわけであります。しかし、公債政策の場合におきましては、資産、所得は手元に残す、そうして国民の資産を、しばし政府が借用する、こういうことでありまして、私が標榜する、企業には蓄積、また家庭にはゆとりを持たせるというために大いに貢献をすると、かように考えております。
今回の減税案は企業減税偏重ではないかというようなお話でございまするが、決してそうではない。先ほど総理からお話がありましたとおり、所得税減税が六、企業減税が四というような割合になっております。この税制決定の経過につきまして御批判がありました。税制調査会の答申を尊重しないじゃないか、こういうお話でありまするが、これは税制調査会の答申をそのとおりにやっておるのであります。つまり、三十九年度に税制調査会の答申があったことは御承知のとおりであります。この答申でも、所得税を中心にしてやりなさい、また減税は長期にわたってやりなさい、こういうふうに勧告をいたしております。その勧告に引き続きまして、また昨年、税制調査会が開催されまして、その答申があったわけであります。で、税制調査会といえども、いつまでも前の考え方にこだわっているわけではない。その基本的な考え方は考え方といたしましても、その適用は、そのときどきの情勢に応じなければならない、こういう考え方のもとに、大体、所得減税六、企業減税四という線の答申をいたしておるわけであります。政府といたしましては、この答申をそのまま採用いたしました。そう申し上げて差しつかえはないのであります。私ども、初めの段階におきましては、お話のように、企業、所得のバランスをどういうふうにするか、所得税に大半というか、ほとんど全部をさくかというようなことも考えてみたのです。しかし、当面の経済情勢を考えてみますときに、一体、中小企業をほうっておけるか、こういう問題があるわけであります。もう二年余りになる不況のもとにおいて、中小企業は非常に困窮しておる。これに特別措置をとらないでよろしいかというと、やっぱり税制上も、これは特別措置をとるべきである。そういうふうな結論になって、中小企業を中心とする企業減税、こういうことをいたしたわけであります。なお、その際に、中小企業を含めての企業全体として、この不況の乗り切りの過程におきまして将来の基礎を固める、つまり、企業の資本蓄積、自己資本の厚みを増すという施策もとるべきであるという考え方を加味するに至ったわけであります。
低所得者に決して薄くはないのでありまして、御承知のとおり、今度は、所得税におきまして、五十六万円の最低限を六十一万円に、平年度、明年四十二年度になりますと六十三万円になります。これは相当大幅な引き上げであります。また、税率調整におきまして御意見を述べられたようでありまするが、これは三百万円以下の所得階層で、子供が二人も三人もになったという家庭であります。その人々に対する税制改正というものが、累次の税制改正におきまして行なわれていない、これは非常に不満とされておったところであります。その不満とされるところの問題を今回初めて解決をする、私は非常にこれはいいことをすることである、かように考えております。
免税点の引き上げを、社会党は、八十万円、また独身者については三十万円というようなお話でありまするが、私も、それはそういうふうに考えます。しかし、今日の財政の状況から見まするときに、一挙にそれをやるわけにいかぬ。しかし、それくらいの程度のことは、諸外国のことを考えましても、ぜひ早目に実現をしたい、こういうことで今後努力をいたし、なるべくすみやかに、それを実現をいたしたいと、さように考えておるわけであります。
また、さらに、最低限の問題と関連いたしまして、標準生計費の問題についてお尋ねがあったわけでありまするが、大蔵省が発表いたしております標準生計費は——一日の標準食費というものを、中央栄養研究所等と相談いたしましてつくっていただいた、それをエンゲル係数から換算すると、年の所得が出るわけです。私どもが課税最低限を考える場合におきまして、一つの参考資料となると、こういう見地から調べておったわけでありまするが、お話のように、百八十六円というのは、昨年、四十年度のものです。しかし、これに五・五%——政府が見積もっております消費者物価の上昇を考慮いたしましても、今回策定いたしました六十三万円の最低限というものにはなお余裕がある、かように考えておるのであります。
さらに、その問題とも関連いたしまして、減税というけれども、結局、物価が上がるじゃないか、減税の効果を減殺するじゃないか、こういうお話でありまするが、物価の上昇と、それに対して調整を必要とする減税額はどうかという問題は、非常に検討のむずかしい問題です。しかし、高額所得者にはその問題は考える必要はないと思います。低額所得者についてのみ、その問題があると思います。低額所得者につきまして一番問題になりますのは、課税最低限の問題です。四十年度の課税最低限を、消費者物価の上昇にもかかわらず、実質的にそれを維持するというためには、一体幾ばくの減税が必要であるかということを考えてみますると、約三百億円であります。政府が今回お願いしておりまする減税案は、課税最低限の引き上げだけにつきましても九百億円ということであります。優にそれを上回っておるということを御承知願いたいのであります。
なお、公共料金と減税を比較いたしまして、減税の効果を批判されますが、公共料金は、その相当部分がやはり対価——サービスの強化等として支払われる。また、国鉄運賃の引き上げ、これは、運賃引き上げによった収入を、かん詰めにしておくわけじゃないのであります。これを賃金の支払いあるいは物資の調達に充てていくわけなんです。所得の増加の根源をつくる支出に充てられるわけなんであります。私は、減税と公共料金の引き上げとを相殺せんとする——対立して考えようとする考え方には、大いにこれを疑問としております。
それから、さらに、こまかいことでありますが、配当所得税——配当につきましては、課税最低限が二百十四万円である、不当じゃないか、こういうお話でありますが、これは田中さんもよく御承知と思うのでありまするが、これは法人擬制説の上に立っている。これはシャウプ税制以来、こういう考え方がとられてきておるわけでありますが、これがはたして適当であるか、適当でないか。これは非常に学問的な深い問題につながってくるのですが、これは、私は将来の問題として深く検討をしてみたい、さように考えております。
また、妻の座をどうするかという、妻の位置づけ、これにつきまして、今回の税制改正案では、依然として一万円の差がある、こういうお話でございまするが、これも私は、今後非常に検討しなければならぬ問題である。私は長期税制ということを言っておるわけです。その一つの大きな問題点としてとらえていきたい、かように本日はお答えをいたしておきます。
また、利子配当優遇措置を明年度は廃止すべきじゃないかということでございますが、これは、この前もお答えしたのですが、経済情勢、そういうものとも非常に関係のある問題であります。慎重に検討いたしてみたい、かように考えております。
また、昭和四十八年ごろの税制は一体どうなるのだろうかという御質問でありますが、おそらく、昭和四十八年には、国債の償還期が到来する。その国債を、全額、税で払うことになりはしないか、その場合の国民負担は非常に重くなるのじゃないかという御趣旨の御質問かと思います。私は、昭和四十八年になりますると、今回発行する公債の償還期になるわけですが、それはできる限り通常財源をもって払う努力はします。しかし、今回発行する公債は、七年の償還期限になっておるのです。私どもが発行せんとする公債は、これは公共事業等でありまして、つまり、今後、国家国民の財産として、資産として長く残るものが、その見合いとなっておるのであります。したがいまして、今回発行する公債は、私は、二十年とか三十年、長期償還のものにしたいと、こういうふうに考えておったわけであります。ところが、市中の情勢等から、それができないので、七年にしたのです。そういうようなことを考えまして、私は、全額四十八年度にこれを償還するということにこだわる必要はない。できる限り努力はしますけれども、これは相当の部分を長きにわたって償還するという考え方をとって差しつかえない。したがいまして、四十八年度ごろにおける国民負担の量、そういうものにつきましては、そう心配をいたす必要はない、そういうように考えております。
御指摘の大口脱税につきましては、極力さようなことがないように、また、一面におきまして、こういう経済情勢でありますので、税務の執行上、行き過ぎがないようにということにつきましては、今後とも大いに努力をいたしていきたいと存じております。(拍手)
〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕