玉置一徳の発言 (本会議)

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○玉置一徳君 私は、民主社会党を代表いたしまして、経済、外交、政治姿勢の三点にわたり、佐藤内閣の施策をたださんとするものであります。
 まず、第一に、当面するわが国経済の問題について質問を申し上げます。
  〔議長退席、副議長着席〕
 先般行なわれました佐藤総理の所信表明を伺って、私がまことに奇異に感じましたことは、総理が、「わが国の経済は、不況を脱却し、上昇の機運に向かっている。」と自画自賛し、簡単に割り切っておられる点であります。なるほど最近の生産、出荷等の産業活動回復の一面を見れば、景気回復に向かっているとの短期的な観測も事実でありましょう。しかしながら、今回の不況の特徴は、いわゆる構造的不況であることでありまして、総理が所信表明の中で指摘されたとおり、企業体質の強化、物価の安定、社会資本の充実など、長期的観点に立っての重要課題の解決なくしてほんとうの景気回復はあり得ないのであります。私は、このような見地に立って、総理並びに関係閣僚にお伺いをいたします。
 第一に、政府の景気てこ入れが公共事業費の繰り上げ支出によって効果をあげていることは事実でありますが、財政によるてこ入れ効果を持続するためには、少なくとも年内に補正予算を編成して第二次てこ入れをはからない限り、現在の景気上昇は今秋になってスローダウンするおそれがあるという点であります。民間産業活動は、いずれの産業も企業間の調整がつかないままに本格的な設備投資増加による経済拡大に向かう条件が整っておりません。したがって、現在の生産と出荷の上向き傾向は短命に終わるおそれが強いのであります。この点について、政府の景気回復論の根拠並びに本年中に補正予算を編成されるかどうか、大蔵大臣より公式の見解をお伺いしたいのであります。
 第二に、企業体質の強化について、政府の施策は税制、金融上の助成をするだけのきわめて消極的なもので、一時しのぎの政策にすぎないといわざるを得ません。最近、企業体質の強化については、アメリカ、ヨーロッパにおいては一大革命ともいうべき会社の合併が続出し、巨大企業が現出しつつあります。わが国においても、外に向かっては資本取引の自由化に備え、内にあっては過当競争を排除していく新たなる産業秩序、企業体制を確立することが緊急でございますが、これについて政府は一度も具体的な方針を示されたことはございません。鉄鋼業や繊維産業に見るごとく、企業合併についても生産調整についても政府は何らの指導力も発揮しておりません。総理はいかなる新産業秩序構想を持っておられるのか、また資本取引の自由化についていかなるスケジュールを組んでおられるか、その大綱をここで示していただきたいと存ずるのであります。
 第三は、新しい産業秩序の確立とともに、低生産性部門である農業、中小企業をいかにして近代化するかの問題であります。戦後二十年、わが国経済の二重構造解消が唱えられ、格差の是正が叫ばれてまいりましたが、これがいまだに実現し得ないのはなぜでありましょうか。民社党は、中小企業については五カ年に五千億円の予算、二兆五千億の財政投融資、計三兆円をもってする中小企業近代化五カ年計画を用意し、さらに、農林漁業については、国の責任で十カ年間に基盤整備を完了する農業近代化計画の構想を持っておるのであります。政府は、これら農業、中小企業の近代化にどのように対処しようとしておるか、この際明らかにせられたいのであります。(拍手)
 第四に、現下最大の問題である物価問題についてお伺いいたします。佐藤内閣は口に物価抑制を唱えながら、実際には本年に入ってからも次々と公共料金を値上げし、その国民負担額の増加は実に三千五百億円の巨額にのぼるのであります。物価対策は、さきの国会における物価特別委員会の決議にあるとおり、広範な施策を要することも事実でありますけれども、私はそのきめ手は次の三つであると信じます。一つは、公共料金の値上げ抑制の具体策であり、第二は、地価高騰に対する対策であり、第三は、生鮮食料品の値上がり防止の対策であります。時間の関係で、第三の点である生鮮食料品対策についてわれわれの構想を明らかにしつつ、政府の施策をお伺いするものであります。
 総理府の勤労者家計調査によりますと、昨年中の月平均の生鮮食料品代は、五人世帯で約七千円で、きわめて高い負担を示しております。したがって、生鮮食料品の値上げを防止することは、今日の物価対策の焦点であります。
 私は、いま政府が、生鮮食料品のガンとなっておる流通機構の改革を断行し、まず、消費地の市場ごとに全額国庫負担で大規模な冷凍貯蔵施設を建造し、これを市場に貸与することを提案いたします。民社党は、このため、すでに流通機構の改善策として、生鮮食料品価格安定基金制度、生鮮食料品流通機構整備促進法の構想を提案しております。ここで、政府の具体的な見解をお伺いいたします。
 経済問題の最後に、佐藤総理と福田大蔵大臣にお伺いいたします。
 不況よりの脱却、企業体質の改善、物価安定、社会資本の充実を促進するため、四十二年度は大幅な歳出増加が必要であります。また、物価高抑制と中小企業倒産防止のためには、年内に補正予算の追加が必要となります。しかし、これらの財源をどうするか。率直に申し上げて、政府の切り札はおそらく公債発行となるのでありましょう。このことを一応不可避と認める前提に立って、これからのわが国の経済政策は、全体としてインフレ防止の歯どめをどこに求めるか、そこに一切の前提を置かねばならないと思います。産業面にあっては過当競争の排除、金融面においては資金配分の国家的コントロールの二つの新しい秩序づくりがない限り、公債発行に財源を求めていく方向は、すなわち、インフレの道を地ならしすることになるだけであります。(拍手)景気底入れ、不況回復の声が高まっている現在、政府の経済政策は、いまこそ姿勢を正し、誤りないスタートを切るべきであると思うのでありますが、この点についての総理並びに大蔵大臣の見解を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 この際、本年度の米価決定に関連して、佐藤総理並びに坂田農林大臣の農政に対する態度について、一言質問をしておきたいと思います。
 御承知のとおり、本年度の米価決定は、米価審議会が何ら答申をなし得ないままに散会するという、米価審議会制度始まって以来の混乱の中に、しかも、米価決定とは全く無縁な日米経済閣僚会議の開幕切迫というあわただしい雰囲気の中で政府と自民党が激しくもみ合い、算定方式も積算の基礎も支離滅裂の中に、佐藤総理により政治的に裁断を下されたものの、農業団体の憤激と党内の突き上げにより、立ち往生のまま日米会談終了まで閣議決定もなし得ず、使途あいまいな五十億円の農業改善費の上積みにより、ようやく事態の収拾をはかるという醜態を演じたのであります。(打手)このことは、米価審議会の答申を待って決定するという従来の慣例を破ったものであり、切実な農民の要求を無視して一方的に決定された、文字どおり政治的低米価であって、米価決定史上一大汚点をしるし、将来に大いなる禍根を残したもので、その責任はまことに重大といわねばなりません。(拍手)
 佐藤総理は、今回の米価決定の不手ぎわをどのように反省し、将来はどのようにして生産農家を満足させようとするのか、また、坂田農林大臣は、今度の混乱に対しどのような責任を感じ、将来米価審議会をどのように改組していこうとするか、さきの答弁に重複するかとも思いますが、あらためて御答弁を要求いたします。
 なお、なるほど物価の高騰を抑制し、国民生活の安定をはかることは、現下政治の至上命題であることはわかりますが、それならば、何ゆえ政府が直接許可権を持っている公共料金の値上げを認めたのか、これらの引き上げを続々と許しておいて、米価にだけ政治生命をかけるような佐藤総理の態度は、全く弱い者いじめといわざるを得ないのであって、まことに遺憾にたえない次第であります。
 なお、米価決定の労務費の積算にも関連するのでありますが、御承知のとおり、稲作をはじめとしてすべての農産物は気象条件に左右されるものであります。農民は、雨につけ風につけ、朝な夕な、あたかもわが子を育てると同様な愛情を持って育てておるのでありますが、その労苦を佐藤総理は御承知かどうか。まして、最近農村においてもつとめ人が増加し、共同社会に対する関心が薄れていく中に、村落の道づくりや河川の修繕、消防から水防、はてはお祭りから町内の雑用一切が、残されたこれら少数の方々にしわ寄せせられ、これら農家の方々の努力と犠牲によってようやく背ながらの村落の共同社会が維持せられておる事実を佐藤総理は何と見られるか。もしこの事実を御承知であるとするならば、彼らの労苦に対し、佐藤総理は何をもってこたえんとするのか、それは決して低米価のしわ寄せであってはならないと思うのであります、この悪環境を克服して、国民の食糧自給に精励する農家の努力に対し、思い切った財政支出をなすとともに、私がかねてから主張している農民年金制度を創設して、これに報いるべきだと思うが、佐藤総理の見解はいかがでありますか。(拍手)
 次に、外交問題についてお尋ねいたします。
 佐藤総理は、組閣以来、日本外交の柱は、一つは自由陣営との協力であり、アメリカとの協調である、いま一つは、アジアの一員としてその責任を果たすことであると述べてこられたのであります。しかし、残念ながら、日韓国交回復以来、四月に行なわれました東南アジア閣僚会議、六月に行なわれましたアジア太平洋九カ国外相会議は、政府の非常なる配慮にもかかわらず、アジア反共同盟として中国封じ込め政策に奉仕する方向に色彩を強めていくことはいなめない事実であり、共産圏諸国はもとより、アジアにおける中立国とのみぞをいよいよ深めていきつつあることもこれまた事実であるといわねばなりません。このような姿勢を続けることは、中国問題の解決はもとより、アジアの中立諸国から遊離し、お互いに共同してベトナム和平の端緒をつかむというようなことは全く不可能となり、決してアジアの平和に貢献するわが国の姿では断じてあり得ないのであります。佐藤総理は、真にアジアの一員としてどのようにアジア外交を展開し、アジアの平和に寄与せんとするか、率直に御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
 次に、この際、総理並びに椎名外相にお尋ねいたします。
 その第一は、沖縄において問題となっている裁判移送問題についてであります。サンマ課税と友利裁判を米民裁判所に移送した問題は、沖縄立法院における超党派の決議に待つまでもなく、沖縄の最高規範たる大統領行政命令第十二節の、住民の基本的自由を民主主義諸国家の人民と同様に保障するという大原則をアメリカみずからが破り、沖縄住民の人権を抹殺するものであります。総理は、昨日の本会議におけるこれらの答弁で、この問題は現地での円満解決に期待すると答えられましたが、現地で解決されないからこそ、立法院代表が本土に来て、総理をはじめ政府関係者並びに国会にこの解決を訴えているのであります。国会もまた、近く院の決議をもってこの解決に立ち上がる気配を示しております。総理は、過般ラスク長官にもこのことを要請したと言っているけれども、何がゆえにこれだけ理明白なる問題を正々堂々とジョンソン大統領に厳重なる抗議をなし、あるいはまた、すみやかに日米協議委員会を開催して一刻も早くこの解決をなし、百万同胞の期待にこたえるべきであると思うが、佐藤総理の所信を重ねて明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 第二の問題は、中国問題であります。アジアにおける、いな世界における現下最大の問題は中国の将来であり、この解決なくしては、アジアの平和はもとより、世界の平和はもちろん、わが国の安全もあり得ないのであります。中国を封じ込み、これを孤立させる道は断じて平和への道ではありません。中国を国際社会に復帰させ、これを国連に迎え入れることこそ、世界平和への道であり、核実験の禁止、軍縮問題など、世界の重要外交問題解決のかぎでもあります。しかるに、政府は、過般の日米経済委員会で、相変わらず重要事項指定方式にするということを米側との間に再確認したといううわさは、まことに遺憾にたえないことであります。今秋の国連総会におきまして、日本政府が、再び中国の国連加盟を重要事項指定方式という事実上中国の国連加盟を阻止するような道をとるならば、わが国と中国の関係はさらに悪化し、将来の日本の平和と進路について重大な禍根を残し、取り返しのつかないことになるであろうことを信じて疑いません。佐藤内閣は、昨年のような愚を繰り返さず、中国問題と前向きに取り組み、この国連加盟に努力することこそ、総理の言う、日本が世界平和に貢献し得る唯一の方法であると思うが、今秋の国連総会において佐藤内閣は中国の国連加盟を推進するのかいなか、ここで明確なる方針を明らかにしていただきたい。少なくとも、断じて昨年のごとく重要事項指定方式のお先棒をかつぐことがあってはなりません。政府のこれについての態度を総理から明らかにせられたい。
 さらに、中国の国連加盟と関連いたしまして、今回の日米経済委員会におきまして、アメリカは中国に対するわが国の長期信用供与には反対の旨を明言したと伝えられておりますが、アメリカの意向は意向として、日本政府としては、独自の立場から、今後の中国貿易拡大のため輸銀資金の使用、長期信用供与の実行に踏み切り、LT貿易を拡大していくことが日本の利益と平和に合致する道であると思うが、どうお考えになりますか。具体的構想について、担当の三木通産大臣の見解をただしたいと思います。
 政府は、中国問題の解決こそがあらゆる安全保障の基本であり、ベトナム問題解決のきめ手でもあることに配慮し、全力をあげて本問題の前向きの処理に当たるべきことをお願いしておくものであります。
 次にお伺いいたしたいのは、今日最も緊急を要するベトナムの和平解決であります。
 アメリカのハノイ・ハイフォンの爆撃を契機といたしまして、共産圏諸国との対決の姿勢はますます深刻の度を加えてまいりました。アメリカ、共産圏のそれぞれが勝利への自信と宣伝をしておることは、これがたとえ強がりといたしましても、米中対決という世界戦争への発展の危機を否定することは、何人といえどもできないのであります。わが国民は、このベトナム戦争に巻き込まれるのではないかということをいまや真剣に心配いたしております。しかるに、椎名外相は、先般の五十一国会で、わが国はベトナム問題の傍観者ではもうすでにありません、安保条約の適用範囲にはベトナム、朝鮮、中国も入るということを言い、ベトナムの紛争の主役であるアメリカに加担するがごとき言明をし、ベトナム紛争に国民の知らぬ間にずるずると介入していくようなことを例の名答弁のうらに暗示しておられるのであります。さらに、沖縄に対する報復攻撃は理論的にはあり得る、しかし、現実には武器の持ち合わせがないから、まずないだろうと言うがごときに至っては、まことに危険千万でありまして、これら一連の椎名発言のエスカレーションは、普通のおとぼけとして聞き流しておくわけには断じてまいらないのであります。昨日はまた、佐藤総理が、「沖縄や本土が攻撃される危険があるというが、アメリカの圧倒的な核の報復を覚悟して初めて沖縄や本土への攻撃が可能である。」 と答弁されましたが、これもまたきわめて挑戦的で、一国の安全保障の責任を持つ総理としてはまことに慎重を欠いた発言といわねばなりません。(拍手)
 このような危険な態度を改め、ベトナムの火を消すため、アメリカに対して重大な反省を求めて、戦争を未然に防止することが、わが国の平和を守る唯一の道であります。ベトナムの問題の解決は、ジュネーブ議長国であり、世界の強国でもありますソ連やイギリス等が、アメリカ、北ベトナム、中共を交渉の場につかせることから始まり、世界の国々がその中立を保障することを全うするというのが一般に想定される順序であります。これがためには、インド、アラブ連合、その他日本を含めて、交戦参加国を除いたアジア・アフリカの諸国がこの雰囲気をつくり上げることが絶対に必要であります。したがって、わが国がこのベトナム和平に寄与するためには、ややもすると、アジア反共国家グループの色彩を強めつつあることに反省をいたし、真にアジアの一員としての外交姿勢に立ち返り、これらアジア・アフリカ諸国の信頼をかち得て、これらの諸国とともにベトナム和平への積極的な働きかけを積み重ねることであります。佐藤総理も、その上に立ってみずから外国へ出て説得すべきであり、また、特使を派遣して積極的に努力すべきであります。その際こそ、あるいは野党の党首もその特使となって、国の安全とアジアの平和のために働くような場合もあり得るかと信ずるものであります。このようにして初めてわが国の安全に至大な影響を持つベトナムの平和の解決をはかり得ると信ずるものであります。
 最後に、佐藤内閣の政治姿勢について一言申し上げ、質問の結びといたしたいと思います。
 一九七〇年の安保の改定期を控えまして、国内は安保論争で騒然といたしてまいりました。しかしながら、一国の安全の保障は、必ずしも純粋軍事力だけでは解決はいたしません。安全保障の問題は外交の問題であり、政治の問題であります。したがって、国民の大多数の共感をどこに求めるかということが一番大切であります。自分の党の考え方が一番正しく、また、実際政治の責任を持っているからということで、政府が一方的に自分の考えを力をもって押し切ろうとするようなことが万々一あるとするならば、それこそたいへんなことであります。おそらく帯内閣当時の安保騒動以上の危機を招くに至るでありましょう。
 私は、この意味におきまして、アメリカ追随の外交、安保条約長期固定化の構想、小選挙区制の実施のにおい、国会において力で押し切らんとするような姿勢など、佐藤内閣の政治の姿勢が心配でなりません。民主主義国家の総理としてなすべきこと、とるべき姿勢は、国が何を求めているかを謙虚な気持ちで探求し、国民の期待に沿い、国民の希望を実現する政治を行なうことでなくてはならないのであります。さらに、国民の間に意見の対立があるならば、国民共通の基盤をつくり、国民の大多数が納得し得る政治姿勢を総理みずからがっくる努力をすることであります。野党は言いたいことを言え、おれはかってに好きなことをやるというような姿勢では、国民不在の権力的な政治姿勢となり、結局は、わが国の民主政治を破壊し、わが国の平和を脅かし、国民を犠牲にする道であって、また同じ誤りを繰り返す、いつか来た道となると思います。この愚を避ける方法は、佐藤総理、あなた御自身が国民の身になってものを考え、政治を行ない、国民とともに歩むという政治姿勢に切りかえる以外にはございません。
 最近の佐藤内閣の政治姿勢に対しまして重大な警告を発し、私の代表質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

発言情報

speech_id: 105205254X00419660714_014

発言者: 玉置一徳

speaker_id: 24901

日付: 1966-07-14

院: 衆議院

会議名: 本会議