藤田藤太郎の発言 (社会労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○藤田藤太郎君 ただいま議題となりました炭鉱労働者の一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案の提案理由と、その内容について説明いたします。
 去る昭和三十八年十一月九日、三池炭鉱における炭じん爆発は炭鉱合理化政策の途上に発生した悲惨な労働災害でありました。日本一の優良鉱といわれた三池三川坑の入気口よりわずか千メートルの地点で大爆発を起こし、大量の一酸化炭素ガスを発生し、これが三川坑の全坑内、各切り羽に侵入充満して、坑内の労働者は一瞬にして倒れ、四百五十八名の犠牲者と八百名にのぼる一酸化炭素中毒患者を出すという大災害となったのであります。
 また、昭和四十年二月二十二日には、三井三池に劣らない優良鉱といわれる北海道の北炭夕張鉱において、ガス爆発により六十一名の死亡者と二十名にのぼる一酸化炭素中毒患者を出すという災害が発生し、次いで四月九日には、日鉄伊王島炭鉱においてガス爆発により三十名の死亡者と十四名の重軽傷者を出し、さらに六月一日には、山野炭鉱においてガス爆発により二百三十七名の死亡者と二十名をこえる一酸化炭素中毒患者を出すという災害が連続して発生し、昭和四十一年十一月一日には、住友奔別鉱においてガス爆発により十六名の死亡者と五名の重軽傷を出すという災害が発生し、炭鉱におけるガス爆発等による災害の絶滅は期しがたい状態にあります。
 一酸化炭素中毒は、肺から吸入された一酸化炭素ガスが血液に入って、血液中の酸素が減少し、その結果、人体の各組織、特に中枢神経系がおかされ、人体の各組織に回復不能な後遺症をもたらすものであります。また、心肺系もおかされ、それが再び中枢神経系その他に影響を与えるといわれています。一酸化炭素中毒の症状は、中枢神経等のおかされた程度により異なりますが、重症の場合は、罹災後数年を経過するも、新生児に見られるような原始反射を示すほか、全く意識なく、全神経の麻痺した状態を示します。軽症の場合でも、痴呆状態を呈するものが多く、身体の動きも少なく、幻覚、妄想等に襲われ、精神分裂症に似た症状を見せるものであり、その他、記憶力障害、意欲減退、性格変化を来たすとともに、心肺機能、循環器系の障害をも伴うものであります。以上のごとく複雑な病状と悲惨な後遺症を残す疾病であるにもかかわらず、今日の高度の近代医学をもってしても、その根本的治療方法はなく、対症的治療が行なわれているにすぎないのであります。しかも、現行の労働基準法、労働者災害補償保険法及び鉱山保安法では、その発生の予防において不十分であるのみならず、治療の方法においても、この中毒症の特徴からみて、特に必要であると考えられる長期にわたる継続的治療、回復訓練の実施及び職場復帰の機会を与える措置等に欠けるところが多く、中毒患者に対して、適正かつ十分な治療と災害補償が行なわれているとは認めがたいのであります。特に三池炭鉱の爆発による約七百名以上の被災労働者はすでに罹災後三年以上を経過し、現行法に基づく補償ではその療養及び補償が困難となっております。したがって、炭鉱労働者の一酸化炭素中毒症に関し、適切な予防及び労働者の健康管理の措置を講ずるとともに、一酸化炭素中毒症にかかった炭鉱労働者に対し、長期の療養を保証し、また、残存労働能力を有する者については、その活用をはかるために特別の措置が緊急に必要であります。
 次に、本法律案のおもなる内容を申上げます。
 第一に、石炭鉱業を行なう事業の使用者及び労働者は、一酸化炭素ガスの発生とこれによる中毒を防止するため、作業環境条件の整備、関係労働者全員についての防護、その他適切な措置を講じなければならないこと。また使用者は、労働者に対して一酸化炭素ガスの発生の防止、発生後の応急措置及び健康管理等のため必要な教育を行なわなければならないこと。
 第二に、被災労働者の健康管理に万全を期するため、使用者は、被災労働者に対して所定の健康診断を行ない、都道府県労働基準局長は、被災労働者の健康管理区分を決定するとともに、健康管理手帳を交付すること。
 第三に、被災労働者の健康保持のため、使用者は、健康管理区分により就労可能な者は労働省令で定める危険な作業以外の作業に従事させるようつとめなければならないとともに、被災労働者が作業転換をした場合は、当該作業の転換前に支払っていた賃金に見合う賃金を払わねばならないこと。
 第四に、使用者は被災労働者の健康管理区分が決定された場合は、その区分に応じて被災労働者が安定して長期にわたる療養に専念できるようにするとともに、また、残った労働能力を活用させるために、管理一に該当する被災労働者については二年、また、管理二に該当して一酸化炭素中毒症にかかっていると認められる被災労働者については、一定の年齢に達するまでの期間は、労働基準法の規定にかかわらず、これを解雇してはならないこと。
 第五に、被災労働者が一酸化炭素中毒症にかかる療養補償を受ける場合、またはリハビリテーションを受ける場合は、その期間中一日につき平均賃金の百分の四十の準障害補償を行なうとともに、一酸化炭素中毒症がなおった場合は、その障害の程度に応じて、当該障害の存する期間一年につき平均賃金の三百六十日分から百二十日分までの障害補償を行なわなければならないこと。また、常時介護を要する被災労働者に対しては、月額五千円から一万円までの範囲内における額の介護補償を行なわなければならないこと。
 第六に、この法律による補償は、労働者災害補償保険によって行なわれるべきものであること。
 第七に、本法の規定により、準障害補償、労働基準法の規定による障害補償の額をこえる部分の障害補償及び介護補償の給付に要する費用の二分の一は国庫が、残りの二分の一に相当する部分は当該保険加入者がそれぞれ負担するものとすること。
 以上のほか、一酸化炭素中毒症に関する予防、被災労働者の健康管理、障害等級の区分、その他の事項について調査審議するため、関係労働者及び使用者を代表とする者と精神医学または神経医学に関し学識経験を有する者十五人以内の委員をもって組織する一酸化炭素中毒症対策審議会を設置すること等であります。なお、この法律の施行時に、過去の突発事故により被災した労働者に対して、この法律を適用するため必要な経過措置を定めることにしました。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申上げます。

発言情報

speech_id: 105514410X01919670629_014

発言者: 藤田藤太郎

speaker_id: 34120

日付: 1967-06-29

院: 参議院

会議名: 社会労働委員会