田上穰治の発言 (外務委員会)
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○田上参考人 御下命によりまして、旅券法の改正法案につきまして、簡単に意見を申し上げたいと存じます。
第一は、旅券とは何か、旅券の法律学的な意味でございます。これは国家による自国民の国籍の証明ということが第一の意味でございますが、同時に、在外邦人、海外にある国民に対しまして国家の一般的最終的な保護の責任がある。この保護をするために、必要な限度において海外渡航に規制を加える、こういうものでございます。この点は、憲法第十三条に、一般的に「生命、自由及び幸福追求に判する國民の權利」これを立法その他国政の上で最大限の尊重を要するという基本的人権ということの保障からくるものでありまして、これはむろん取り締まるというふうな意味が重点ではございませんが、保護するために必要な、やむを得ない限度においてはある程度の制限も伴うという意味でございます。
この具体的なあらわれとしては、国民が出国をするときに、現在の法令でございますと、入管令によって証印を受けることになっておりますが、旅券の上に証印を受ける。そしてこれは、海外に渡航する場合、日本を出る場合に、国家がその国民に対して最終的な保護の責任があるということから生ずる一つの規制でございます。
もう一つは、やや具体的になりますが、渡航先として旅券に記載されている国々に対しまして、ある場合は相手国の事情によって査証を条件とすることもございますが、あるいはそうでない場合には、そのまま当然に相手国に対して入国を求め、また、その滞在中はわが国民を保護してもらうということの要請を含むことでございまして、その点からも若干の必要最小限度の規制を国民に対して加える、こういう性格のものと理解するのでございます。
次に、当面の改正法案につきまして、国交の回復しておりまする、いわゆる承認関係の国に対する渡航が、きわめて幅広く認められるようになったという点を指摘したいのでございます。これは同時に、未承認の国への渡航が制限されるという意味にも通ずるのでございますが、この制度は、改正法案におきまして、外務大臣が指定する範囲内の渡航先につきましては、法案の第三条第五世でございますが、数次往復用の旅券を出すことができる。その数次往復用というのは、五年以内ということになっているようでございます。それからもう一つが、渡航先の包括記載ができる地域の範囲というものが外務大臣の告示によって示されることになっております。法案の五条の二という条文でございます。これらのことから、結果といたしまして、表面にはあらわれておりませんが、承認関係の国に対する渡航が従来よりも一段と容易になるということがわかるのでございます。このような改正がどうして行なわれるかという点は、私にもよくわかりませんが、外国の制度を見ますと、従来の日本の数次往復用の旅券が二年以内というふうになっておったのは、あまりに期間が短過ぎる。アメリカにしてもカナダにしても西ドイツにいたしましても五年になっておるようでございまして、イギリスに至っては十年。また旅券の渡航先の記載につきましても、包括的な記載はイギリスをはじめとして若干の制限はつけられるようでありますが、カナダ、西ドイツ、フランスなどにおいても認められておるところであり、世界の趨勢でございまして、まことに当然だと私は考えるのでございます。
ただ、このことが、逆に未承認の国に対する渡航の制限となるのではないか、少なくともそのような印象が持たれるのでございます。これはしかし、相対的な、つまり承認関係の国に対する渡航がゆるやかになったということから比較して、そのように感ぜられるのでございまして、私の法案を読みました感じでは、未承認国への渡航は従来どおり、特に法案において制限を加えておるというふうには見られないのでございます。問題は、しかしながらそれにしても、何かそのような外務省の指定する範囲というふうなことにおきまして、差別が出てくるのはどういうものかという懸念もございますが……。
〔私語する者あり〕