田上穰治の発言 (外務委員会)

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○田上参考人 順序はちょっと正確でございませんが、最後に御指摘になりました、裁判所の救済、訴訟上の救済があるから拡大解釈もそれほど問題にならないというふうに申し上げたといたしますと――そういう意味でお聞きいただいたといたしますと、直すことをお許しいただきたいと存じます。
 むろん、法律学の議論として、権利の乱用は違法である。でありますから、乱用にわたってならないことは当然でございます。あとになって裁判所が判決で取り消せば、それで関係当局の責任が免れるという意味にはとうてい解釈できないのでございまして、一つは、そういう乱用を未然に防ぐための立法的な措置、これも当然常識的にくふうしなければならない。と同時に、裁判所にすべてを依頼する、依存するというのでなくて、第一は、民主政治は国会の政治でございますから、国会において、国民の名において、そのような乱用のある場合には、行政当局に対して説明を求め、責任を追求するということは当然でございます。
 それからなお、いろいろまだ御質問なりお尋ねを受けておりますが、未承認国ということばは、あるいは使わないほうがよろしいかと思いますが、いまの外務大臣の告示あるいは指定によりまして、数次の往復旅券を出さない場合、あるいは包括的な記載をしない、これは当然結びつくわけでございますが、そういう場合は法案で予想されておりますけれども、御指摘のように、たとえば北鮮であるとか――中共のほうは旅券の問題はだいぶ違うと思いますけれども、現実に北鮮には旅券がほとんど出されていない。国会議員以外には最近出されていないように……。(穗積委員「全然出て出ておりません」と呼ぶ)このことは、法律直接というよりは、私は、そういう法律上当然に旅券を出してはならないというふうな規定とは見ないのでありまして、つまり、未承認国であるから、あるいは北鮮であるからというだけで、何らのそれ以外の理由なく旅券を出していないとすれば、これは現在の旅券法が悪いというより、むしろ旅券法の趣旨に反する、かように私は考えるのでございます。旅券を北鮮なりあるいは未承認国であるから出さないという、そういう簡単な論理でありますというと、これはまあ判例、地裁の判決においても、それは認めておりませんし、私どももそういうふうに旅券法を解釈することはできないと見るのでございます。国益あるいは公安を害するということには当然にはならないと考えております。先ほども申し上げましたように、さらに一歩進んで、そういう承認、未承認というふうな区別がなくなるように、国交をできるだけ回復するという努力が必要だと考えますが、これは法律学の議論でございませんから、一応その程度にしておきたいと思います。
 それから、いろいろ御質問がありました渡航者の個人的な政治あるいは宗教、思想、そういうまあ広い意味における一種の信条とでも申しますか、そういうことによって差別をして、ある特定の種類の信条を持っておる者に対しては旅券を出さないとかいうようなことは、これは私は憲法の規定、趣旨、原則に反する、憲法十四条の規定に反すると考えております。したがって、旅券法にもしそのような規定があれば、それは憲法違反でございますが、私は、旅券法はそのように考えていないのでございます。ただ、実際の運用において、あるいは御指摘のように、具体的な事例として、渡航を希望して旅券の発給を申請した者に対して、信条による差別、つまり、宗教、思想あるいは政治的な立場によって、それだけで差別をするということはできない。しかし、そのことが、繰り返しになりますが、あるいは日本の外交上の利益、まあこれも広く考えると、かなり乱用のおそれはありまするけれども、たとえば旅券の問題から離れまして、いろいろたとえば刑法の規定などを見ましても、個人の法益を保護する規定、あるいはその意味の罪の規定でございますが、それを離れまして、公益というか、あるいは外交上の利益、そういうものにつきましても、極端な場合、著しくこれを害する場合には、必ずしもその個人の法益を害しなくても罰則を適用することがございます。私の申しました公共の福祉に反する場合というのは、必ずしも渡航者一個人ではなくて、一応それを広げまして、在留法人の一般の利益、さらにこれをもう少し広げますと、国会あるいは――国会において条約は御承認になるわけでございますが、そういう最高機関としての国会が明確に決定された、条約を通して決定されたような外交の方針、こういうものに明らかに矛盾するような場合は、公共の福祉に反するものということが一応いえるのではないか。しかし、条約そのものも、常に絶対に正しいものであるとはいえませんけれども、一応われわれとしては、そういう意味において条約関係を著しく阻害するような場合には、これがひいて公共の福祉に反するということにもなるのではないか。こういう意味におきましては、条約の内容をさらに国会においても御検討いただかなければなりませんし、またできるだけ広く条約によるわが国との国交が回復するように持っていかなければならない、こういう前提はございますが、しかし、とにかく締結された条約につきましては、誠実にこれを順守するという憲法の規定から考えまして、条約関係を著しく阻害するような場合には、その渡航者個人の保護――厳密には結びつかないようでございますが、それはやはり公共の福祉に反するものとして、この海外渡航の自由、広くいえば、そういう旅行の自由というものを制限することも可能である。けれども、これもやはり常に必要最小限度という条件はございます。最大限度に人権を尊重するというのが憲法十三条でございますから、逆に公共の福祉に反するものを取り締まる、規制するという場合は、必要最小限度でなければならない。この判断を誤りますと、繰り返しになりますが、これは違法であり、したがって、訴訟上の救済と同時に、これは違法ということになれば、関係当局の責任ということも、民主政治の上から同時に問われる性質のものでございます。

発言情報

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発言者: 田上穰治

speaker_id: 10934

日付: 1969-07-03

院: 衆議院

会議名: 外務委員会