田上穰治の発言 (外務委員会)

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○田上参考人 お答えをいたします。
 ただいまの御指摘の事実は、私よく存じません。で、もしそういう事実であるとすれば、私もはなはだ不合理があるというふうに考えるものでございます。一つは、先ほどちょっと私申しましたように、この罰則はむしろ秩序罰的な、秩序犯というか、行政上の秩序犯ということであって、つまり、届け出を怠った。あるいはいろいろなほかの許可制の場合にも、許可の手続をとらなかった場合、実際に実質的には社会の一般公衆に不利益を与えない、あるいはその他実害のない場合であっても、その手続を怠ったということによって罰せられる、こういう制度はかなりございます。むろん、それは刑罰犯罪と申しましても、性質はかなり違うわけでございまして、刑法に書いてあるような犯罪とは、刑事犯的、自然犯的なものとは非常に違うものがある。制度的にはこれももう御承知のとおりでございます。そういう意味で、私も実情はよく存じませんけれども、この三万円の罰金という金額はともかくといたしまして、これは、一応その他の旅券法二十三条にございますかなりのものが一年の懲役以下の刑罰ということでございますが、それとの比較の上で、私は罰金刑が相当であろうということで、原案に賛成なることを申し上げましたが、その一つの意味は、これは秩序罰的なものである、秩序犯に対する処罰というふうに半ば理解しているものでございます。しかしながら、その理屈とは別に、ただいま御指摘のような実情であるとすれば、これはやはり早急にこの運用において改めるべき点があると思うのでございまして、つまり、罰則をつけて、従来と違って――御指摘の点であったように、従来とかなり違うわけでございます。しかも正面から渡航先追加の義務というものを強制し、そして従来暗黙に義務に反してもというふうなことでもしあったといたしますと、非常にたてまえが変わってくるわけでございますから、もしそうであるとするならば、従来の実際の措置、つまり、中共にはある程度旅券を出すが、北鮮には出さないというふうなことは、やはりすみやかに変える必要がある。運用において、北鮮に対してもさらに従来のようなことでなくて、相当数の旅券を発給すべきであるというふうに私は考えるのでございます。
 その前提としまして、これもいま御指摘がありましたが、なぜ北鮮と中共と区別するかといえば、私もやはり考えておりますのは、これはもう一つ別の承認関係の政権が双方ともございます。中共の場合には、中華民国、台湾のほうの政権がございます。そして北鮮の場合には、別に南のほうの韓国の政権がございます。そこで、それとの関係において相当違うのではないか。つまり、私もしろうとでよくわかりませんが、中華民国のほうの側ではそれほどわが当局に対してきびしいいろいろな注文と申しますか、あるいは妨害のようなことはなくて、だから比較的容易にこの中共のほうには旅券が出せるが、北鮮のほうには反対の事情から容易に出せないということがあるかと思うのでございます。で、私は、これは必ずしも現在の旅券法十三条一項五号の国益、公安条項の解釈上、外務当局が間違っていると断定はいたしません。つまり、国益という中には、先ほどから申しました日本の外交上の利益、しかし、それはただばく然と外務当局が考えた、外交上このほうが都合がよいというようなことではなくて、そこにはやはり条約というものが一つ加わるわけでございますが、条約によって裏づけられた関係、この点でもってそういうものがそういう意味における外交上の関係に著しく妨げのある場合に、これが国益に反するという解釈が成り立つ余地はあると思うのでございます。しかし、これもむろん具体的に程度問題でありまして、条約関係をある意味で利用して、相手国が不当にきびしい要求なり注文をわが外務当局に突きつけてくるとすれば、それをすべて無条件にのむというか、それに従うということではなくて、これも私は法律学者の立場で、外交の実務の立場ではございませんから、比較的簡単に申すわけでございますが、法律学者としては、できるだけそういう一方の相手国の態度に対しては外交上ひとつ反省してもらって、そういう障害をできるだけ排除して、旅券が出せるように努力すべきである。言いかえれば、少なくとも中共の程度に――中共と北鮮によって渡航者の間に旅券の発給が非常にアンバランスになっているという、ふうなことは、私どももはなはだ不自然だと思うのでございます。全く根拠がないとは思いません。これはいまのもう一つの政権が違っておる。中薬民国と韓国という違いがあるからでありましょうが、しかし、その違いからどのような極端なアンバランスが生じても、それは結局外交上やむを得ないのである、すべては国益から見てしかたがないというふうな解釈は好ましくないし、またおそらく、こういうことは裁判所においてもそう簡単に容認されないと思うのでございます。法律学者というのは、裁判官ではございませんが、こういう問題につきましては、幾ぶん近い立場でございまして、直接政治、外交の立場ではなく、幾ぶん外部から第三者的な立場で憲法、法律に照らして批判する立場でございますが、そういう意味においては、おそらく裁判所の考え方もわれわれとそれほど違っていない、かように見るのでございます。
 もう一度つけ加えますと、現状でもし御指摘のように、北鮮に対する旅券の出し方が非常にわずかであって、国会議員以外には出していない、そして中共に対する場合と非常に違っているということでありますと、これは一応事は外交に関する、そしてそれは中華民国と韓国とのわが国に対する態度の違いということのように思われますけれども、これはやはり外務当局としてはできるだけ努力をして、できるだけ近い機会にその非常なアンバランスを解消するようにつとめていただきたい。これは私の希望でございます。

発言情報

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発言者: 田上穰治

speaker_id: 10934

日付: 1969-07-03

院: 衆議院

会議名: 外務委員会