平井博二の発言 (外務委員会)

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○平井参考人 お答え申し上げます。
 第一番に、実害を受けたことがあるかどうかという問題でございますが、これは私自身の体験から申し上げますと、ちょうど一九六七年に私一年ほど北京におりました。六七年のいろいろな商談がございまして、北京にも各社の代表がおいでになっております。それで、現実に毎日中国側の貿易顧問と話をするわけでございますけれども、やはり一人では一これは、貿易会社はいろいろ専門の部かございまして、機械にいたしましても何にいたしましても、専門的な知識というものが非常に必要でございます。ですから、一人ですべての商品を扱うということはできないわけでございます。したがいまして、たとえば豆の商談である場合には豆、機械でも、たとえば工作機械の場合には工作機械の専門家というものがどうしても必要でございます。しかしながら、北京におきまして、数カ月間各商社の代表が滞在しておりまして、中国と折衝しております。その中で、この中国市場と申しますものは、たとえば機械を取り上げましても、西欧諸国と非常に激烈な競争下に置かれております。したがいまして、値段の点につきましても、納期につきましても当然のことでございますが、向こうとしましては、技術的な内容、それがたとえば西欧諸国より日本のほうが非常にすぐれておるというような説明を非常に要求するわけでございます。ところが、残念ながら、おります人間は、そのことについてそう専門的な知識を持っておるわけではございません。ところが、西欧諸国の場合には、あとで申し上げますけれども、たとえば西ドイツの場合ですと、世界各国フリーに回れる旅券を持っておりまして、いついかなるときでも中国がオーケーと言ったらすぐに入ることができます。ところが、私どもが商談の過程で、こういう専門家をどうしても北京に呼ばなければならぬ、この専門家と向こう側の最終的なユーザーと話し合いを煮詰めて、この商談を成立させたいと思いましても、六七年の段階におきましては、早くてもとにかく四十日、つまり、先ほど申し上げました渡航趣意書を出すという段階から、旅券をもらいまして、香港のビザを取りまして、それから三日間かかって北京にやってくる、こういう状況でございます。したがいまして、話が起こってから現実にその人が入ってくるまで一カ月という期間はどうしても見なければならぬわけです。こういうことでは国際競争には全然勝てません。したがいまして、六七年のときに、私が北京におきまして各社の方々から痛切なことばとして言われておりますのは、何とかして早く自分たちの必要な専門家がせめてほかの国並みに来てほしい、来れるようにしてほしい、こういうことでございます。現在他の国に対する旅券は、まず趣意書というふうな段階は全くなくて、申請をすれば、およそ一週間ないしちょっとかかる程度でございます。そういたしますと、その時点におきましても、それと同じくらいでやれれば、十日間で北京に飛んでこれる。それが飛んでこれない、こういう状況でございます。この実害については、もちろん計算はいたしておりませんけれども、ほとんどの各社がせっかくいい商談をつかみましても、みすみす西欧に取られる、こういう実害は非常に大きいものだと考えております。
 第二点につきまして、それでその次に起こってきます問題は、しかし、何とかしてその商談をものにしたい、非常に偶然的な要素もございますけれども、たとえば西欧諸国の中にそういう機械の専門家がおる、あるいはカンボジアにおる、あるいはインドにおる。国はいろいろございますけれども、こういうところにたまたまその社の専門家がおりまして、そこからすぐ北京に派遣すれば何とか間に合うのじゃないか、こういう問題がございます。この場合にも、今度の法案によりますと、これは全く違法になりますから、現状からいきますと、つまり、二十日間から一カ月間の同じような渡航追加の申請期間を経なければどうしても北京に来れない、こういうことになるわけでございます。こういたしますと、今度の法案が通りましても、簡素化どころではなくて、むしろもっときびしくなったとすらいえるわけです。つまり、世界じゅう――大きな貿易会社になりますと、世界じゅうに駐在員がおりまして、また専門家もいろいろあっちこっちに配置をしております。しかし、こういうふうな人材をすぐに使うということが今度の法律では全く禁止される、こういうことになるわけでございます。これが第二点でございます。
 第三点につきまして、先ほど申しましたように、各社ほとんどそういう状況を受けております関係上、たとえば、それについての具体的な損害額というふうなものはまだ計算しておりません。したがいまして、これについて損害賠償の裁判というぶうなものは、私どもとしてはまだ起こしておりません。しかし、先ほどお話がございましたように、私どもとしては、いままでほんとうに民間の努力で、六億ドルに及ぶ日中貿易というものを築き上げてまいりました。この主要な功績というものは、まさに民間の商社あるいはメーカー、ユーザー、そういうふうな人たが、こういうほかの国よりももっときびしい制限の中で、差別の中でつくり上げてきたものでございます。したがいまして、そういう意味で、先ほど先生のおっしゃったような損害賠償の問題は、私どもはこれから十分に取り組んでいきたいというふうに考えております。
 なお、もう少しこまかに、趣意書の手続というものについて、おそらく先生は国会議員という形でおとりになっていらっしゃると思うので、私どもが具体的にこの趣意書の問題でどんなふうにいじめられておるか、はっきり私どもの感情からいえば、そう申し上げたいような実情をちょっと申し上げたいと思います。
 つまり、通常旅券の申請をいたします場合には、旅券の申請書というものをほかの国へ行く場合には出すわけでございます。ところが、私どもの場合には、まず、名前はいろいろありますけれども、一般的には共産圏渡航趣意書、こういうものを出さなければなりません。これを出して、これがオーケーでなければ外務省は旅券申請を受け付けないわけでございます。先ほど田上先生のおっしゃるように、全く違法な行為をとっておるわけでございます。この渡航趣意書というものはどういうものに基づくかということを申し上げますと、先ほど田上先生は、省令か何かにあるかもしれないというふうにおっしゃいました。私も調べてみました。ところが、この渡航趣意書を出さなければならないという法的根拠をどこにも見出すことができなかったのでございます。渡航趣意書というものを合計で十五通出しております。普通、書類は本文とそのほか若干のコピーということはございますけれども、一体十五通も出して、この十五通がどこへいくのかということでございます。私どもの聞いた範囲内では、この十五通のうち、大体十通ぐらいは、むしろ法務省あるいは公安当局、治安当局、そういうふうに回っておるというふうに聞いております。私ども貿易関係でございますから、一通はまさに通産省のほうに回るだろうと思いますけれども、これがどういうわけで十通もこういった公安、治安当局のほうに回らなければならないのか、全然私どもにはわからないのでございます。しかも、その渡航趣意書のほかに、相手国の中国から参りましたインビテーション、これもコピーをつくりまして、やはり十五通そこに添付して出さなければなりません。つまり、確かに中国側が呼んだかどうかという証明がなければいかぬ、こういうことでございます。旅券申請以前において、そういうことをまず要求されておるわけでございます。それではほかの国はどうかと申しますと、私どもの聞いておりますところでは、ソ連、東欧諸国の場合には、現在五通になっております。そうして、これに対する外務省側の回答も、この渡航趣意書を出しまして翌日か、おそくも翌々日にはほかの国並みに旅券申請をしてよろしい、こういう回答でございます。ところが、中華人民共和国、こういうことになりますと、少なくとも三週間、一カ月がもうざらだ、こういうふうな状況でございます。先ほど、先生はタイミングということをおっしゃいましたが、つまり、もう相当以前からやらなければなりませんけれども、それにつきましても、相手国の招待状というものが要るわけなんです。そうしますと、相手国といたしましても、日本の事情を考慮して、半年前に招待状を出すようなことは、まず常識的に考えてもあり得ない。ちょうどその時間に間に合うような時期に相手国も出すのは、これは当然のことでございます。ところが、間に合う時期にいただいたインビテーションをつけて、それから渡航趣意書を出す、こういう段階でございます。それでは何回も渡航申請書――つまり、旅券は半年間出発まで有効でございますから、一年に二回申請すればよいではないか、こういう問題がございます。しかし、それでは外務省は受け付けない。相手国のインビテーションがなければ、旅券も支給しない。まず渡航趣意書を受理しないわけです。ですから、そういう形になりますと、これはもうどうしても相手国からインビテーションが来なければならない。しかもその渡航趣意書を出してから、二十日から一カ月間どうしても待たなければならない、こういうふうに置かれております。
 これは一般的な内容でございますが、もっと詳しく申し上げますと、こういうことがございます。これ以外の文書までいろいろ要求されております。たとえば私ども貿易の場合になりますと、これはどこから来るかわかりませんが、特にメーカーの場合で、あるいは商社の方でも、特にそういった機械関係、ココムの関係とか、こういうものと疑われるような技術なり、そういうものの渡航者の場合には、その人に対して、あるいはその会社に対して、どういうことを話しに行くのか、どういう技術交流の内容を話しに行くのか、こういうふうな問い合わせがございます。つまり、商売の話をするときに、その商売の内容がココムにひっかかるかどうか。ココムそのものも当然問題でございますが、それはちょっと別にいたしまして、そういうことを口実にして、旅券の申請をする以前に、そういう調査なり問い合わせなり、調べというものがございます。それから公務員の場合には、これは地方公務員まで含めまして、監督官庁と申しますか、主務官庁と申しますか、そういうところの旅行許可書というものが必要でございますが、これもほかの国とは違いまして、渡航趣意書の段階で一緒にあるいはそのあとで、やはり十五通要求されております。しかもこれは原本をそろえて十五通要求されております。また、労働組合員の場合ですと、組合専従者でありましても、休暇証明書というものを教育庁からもらって、それもまた十五通コピーをつくって出さなければなりません。また、大学の教授である場合には、以上のほかに、たとえば日程表を非常に強く要求されます。どこの大学に行くのか、どういう研究所に行くのか、どういう内容を話しに行くのか、その日程表をこまかにしたものを要求されるわけでございます。これも趣意書の段階において要求されておるわけでございます。また、労働事議などが起こりまして、それで裁判をしております場合には、担当裁判官の証明書が必要とされておりますが、同時にまた、本人から、公判期日に間に合うように帰ってくるとか、それに類した一札をとる、こういうこともございます。
 つまり、一般的に、趣意書というのは、たとえば中国に行きます場合には全部に強要されておるわけでございますけれども、その中を見ますと、さらに細分化されて、こまかいさまざまな書類、そういうものが要求されておるわけでございます。したがいまして、これはもう私どもの感じでは、明白な事前審査でございます。私どもがほかの国に行く場合には、直ちに外務省に旅券の申請をしておるわけでございますけれども、それ以前に趣意書を出して、そしてそれが公安、治安当局で、いわば思想調査と申しますか、何と申しますか、わかりませんけれども、こういうふうな調査を全部やられて、しかもそれが二十日から一カ月間かかって、その上でやっと一人前に扱ってもらえる、こういう状況でございます。そしてそのときに外務省から参りますものに、その趣意書の受付のナンバーがございます。この何番と何番のナンバーの趣意書はおりました、こういう返事でございます。おりなかった場合にどうなるか。旅券申請すらも全然できないわけでございます。
 以上申し上げましたように、たとえば中国へは旅券を出しておるではないか、こういうお話でございますが、その旅券を実際にいただくまでにこれだけの多くの不当な差別を私どもが受けておりまして、しかもこういった考え方で現在のこの法案が成り立っている、こういうふうにしか私は思えないのでございます。

発言情報

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発言者: 平井博二

speaker_id: 32422

日付: 1969-07-03

院: 衆議院

会議名: 外務委員会