橋本龍太郎の発言 (公害対策特別委員会)
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○政府委員(橋本龍太郎君) いま基本的な点につきましては総務長官のほうからお答えがございました。この公害にかかる健康被害救済制度というものを通じてお答えをさせていただきたいと思います。
現行の公害被害者救済制度というものは、先生よく御承知のとおりに、公害にかかるさまざまな被害の中で、特に緊急に救済を必要としている健康被害について、行政上の応急的な救済措置というもののみを行なうことを目的としております。制度の発足以来今日まで救済対象地域として指定してまいりましたのは、大気汚染関係で川崎市の一部、そのほかの二地域、水質汚濁関係では神通川の下流の地域外二地域、合計の六地域であります。その後、先般尼崎の一部地域の大気汚染の状況が川崎市などに準ずるほど著しくなり、かつその影響による疾病の発生というものが相当多発している疑いが出てまいりましたために、県と市の協力を得てその事実の確認を急いで、十二月一日からこれを救済対象地域としてまいったわけであります。その他の地域においても、実は現在相当程度の著しい大気汚染または水質の汚濁が生じており、またその影響による疾病が多発しておる疑いがある地域がないとは申しません。所要の調査を実施しつつ、それが明らかになれば、私どもとしては救済対象地域というものの指定の要否を決定してまいりたいと考えております。この中で、これはお役所式な答弁を申し上げましても先生に対するお答えにならないと思いますので、率直に申し上げてまいりますと、この被害者救済制度をつくります際、よく先生も御承知でありましたように、従来の法体系で類似の例として参照するものが非常に少なかったために、原爆被爆者の法律をそのままほとんど援用したような形でこの被害者救済制度の発足をさせました。これは本院の御審議の際にも実は何回か当時の厚生大臣等からお答えを申し上げてまいったとおりであります。その時期におきましても、はたして被害者救済ということばの内容が健康被害のみに限定されてよいものであるかどうか、これは本院においても御議論のあったところでありますし、衆議院においても相当な議論がございました。そうしてその結果としてとりあえずとにかく健康被害の救済を急ごうということで本法は成立を見たわけであります。生活保障にかかる部分についてはなおその議論を今後に残しておるわけであります。
私どもは、現行の法体系の中から考えてまいります場合、この被害者救済制度そのものの中に、現在あります健康被害の救済にかかる制度の中にそのままに生活保障を取り入れていくことは、法体系上きわめて困難だという感じをいたしております。そうした場合に、ボーダーライン層に対しては世帯更生資金を活用してまいりたいということを、先般本院における連合審査の際に、厚生大臣、たぶんお答えをいたしたと思います。現行世帯更生資金の中でいわゆる生活資金、生活費の場合は月額七千五百円以内ということになっております。今回これを、この公害関係の救済制度を補完する意味もありまして、一応の引き上げの概算要求を厚生省としては大蔵省に提出をいたしました。ただ、これは今後予算編成の際に決定をするものでありますから、金額の点は本日はお許しをいただきたいと思います。また、生活保護そのものもこれは現在改善をはかっておるさなかでありますし、来年度の予算編成において、これらの点にも私どもとしては配慮を加えてまいるつもりであります。その場合に一つの問題として出てまいりますのは、現在の生活保護法のたてまえから出てくる級地の格差、これが現在までの級地の格付けの方法そのものでよろしいか、あるいは公害多発地帯においては、従来の級地決定の要因のほかに、公害というものを一つの級地決定の要因に取り入れるべきであるかどうか、実は、この点についての議論がまだ煮詰まっておりません。私どもは、やはり今日の状況から考えて、生活保障という面を世帯更生資金あるいは生活保護法のたてまえで配慮していくとするならば、当然この級地の決定要因の中に公害という要因が取り入れられていくべきものであると今日考えております。なお、この救済制度そのものにおきましても、内容的にこまかく今日まだ申し上げられる段階には至っておりません。厚生省としては、給付の改善及び当初から問題になっておりました所得制限の緩和等の概算要求の中に盛り込んで、現在大蔵省と折衝に入った次第であります。今後、予算編成の途中においても、本院の各先生方をはじめ、世論の応援を得て、私どもとしてこれに対処し得るだけの実績をつくり上げたいと考えておる次第であります。